プログレスM-38

プログレスM-38（ロシア語: Прогресс М-38）は、1998年にロシア連邦によって運用された無人の宇宙補給船です。この機体は、当時軌道上にあったロシアの宇宙ステーション「ミール」へ、重要な物資を送り届ける任務を担いました。製造シリアル番号は240番にあたります。

このミッションでは、合計で2376.6キログラムに及ぶ多岐にわたる貨物がミールに向けて運ばれました。積荷の大部分を占める約2300キログラムには、ステーションの軌道維持に必要な推進薬や、クルーの生命維持に不可欠な酸素混合体が含まれていました。また、ミール滞在中の宇宙飛行士たちが使う個人保護用品や、日々の生活に欠かせない様々なクルー用品も搭載されていました。さらに、ミールの姿勢制御システムを強化するための新たな遠隔推進システム（ロシア語でВДУ、ローマ字表記でVDUとも呼ばれる）も運搬されました。

プログレスM-38は、1998年3月15日モスクワ時間1時45分55秒（協定世界時3月14日22時45分55秒）に、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の1番発射台（サイト1/5とも呼ばれます）から打ち上げられました。ソユーズロケットによる打ち上げは成功し、機体はミールを目指して軌道に乗りました。

打ち上げから約2日間の飛行期間を経て、プログレスM-38は1998年3月17日モスクワ時間3時31分17秒（協定世界時0時31分17秒）に、ミール宇宙ステーションのクバント1モジュールへのドッキングを果たしました。ミールへの接近からドッキングに至るまでの一連の複雑な操作は、プログレス補給船に搭載された自動システムによって正確に実行されました。

ミールにドッキングしている間、プログレスM-38は貨物の引き渡しを完了するとともに、「ГФ-28 «Релаксация»」という名称の科学実験も実施しました。

このミッションの準備段階では、予期せぬ技術的な問題に直面しました。プログレス補給船が打ち上げロケットのペイロードフェアリング内に格納され、そのフェアリングが展開されている最中に、ミールとのランデブーやドッキングに使用されるクルス自動システムのアンテナの一部が歪んで取り付けられていることが発見されたのです。この歪みは、電気的な機能試験では特に異常を示さなかったものの、修理を行うためには、既にフェアリング内に収容された状態では実行が極めて困難な、再度詳細な電気試験を行う必要がありました。そのため、限られた時間の中でこの修理を実施することは非現実的と判断されました。しかし、ミールへの接近飛行において、長距離からのアプローチは、アンテナの歪みの影響を受けにくい高利得アンテナの有効な通信範囲内で行えることが技術評価によって確認されました。この評価結果を受けて、計画されていた打ち上げを延期することなくミッションを続行することが決定され、結果としてミールへのドッキングも無事に成功しました。

ミール宇宙ステーションでの役目を終えたプログレスM-38は、1998年5月15日モスクワ時間21時43分54秒（協定世界時18時43分54秒）にミールから分離しました。その後、地球の大気圏に再突入し、そこで燃え尽きてミッションを完了しました。

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