プログレスM1-11

2004年、国際宇宙ステーション（ISS）への物資輸送という重要な役割を担って運用されたのが、ロシア連邦宇宙局の無人補給船「プログレスM1-11」です。この機体はプログレス補給船シリーズの一つであり、特にプログレス-M1型（制式名称11F615A55）に属します。製造番号は260番で、NASAでは「Progress 13」あるいは「13P」といった名称で識別されました。

特筆すべき点として、このプログレスM1-11は、プログレス-M1型として製造された最後の機体でした。本機以降のISSへの補給ミッションでは、後継となる改良型プログレス-M型が主に使用されることになります。なお、プログレスM-1M型という近代化されたタイプを用いた「プログレスM1-01M」という計画も存在しましたが、これは最終的に実行されませんでした。

運用経緯

プログレスM1-11は、2004年 1月29日11時58分8秒（グリニッジ標準時、GMT）に、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地にある1/5発射台から、信頼性の高いソユーズ-Uロケットに搭載されて打ち上げられました。軌道投入後、ISSへのランデブー飛行を開始し、打ち上げから約2日後の2004年 1月31日13時13分11秒（GMT）に、ISSのロシア側モジュール「ズヴェズダ」の後方（Aft）ポートへのドッキングを成功させました。

ISSにドッキングしている間、プログレスM1-11は単に物資を補給するだけでなく、軌道上での重要な役割も果たしました。特に、ISSの軌道を維持・調整するための再加速マニューバに使用されるなど、ステーションの運用に貢献しました。

約4ヶ月間にわたりISSにドッキングした状態を維持した後、次の補給船であるプログレスM-49の到着に備えるため、プログレスM1-11はISSから離れることになりました。ドッキング解除は、2004年5月24日9時19分29秒（GMT）に行われました。

ISSから離れた後、プログレスM1-11は直ちに大気圏に再突入することなく、約10日間単独で軌道を周回しました。この期間を利用して、機体の高度制御システムに関する追加の試験が実施されました。これは、将来のミッションに向けた貴重なデータ収集の機会となりました。

すべての任務を完了したプログレスM1-11は、2004年 6月3日9時50分（GMT）に軌道を離脱するための最終マニューバを開始しました。機体は地球の大気圏に再突入し、制御された落下経路をたどりました。大気との激しい摩擦により大部分が燃え尽き、燃え残った破片は同日10時36分25秒頃（GMT）に南太平洋上の予定された海域に落下しました。これにより、プログレスM1-11のミッションは安全に終了しました。

搭載された貨物

プログレスM1-11は、ISSで活動するクルーが必要とする多種多様な物資を搭載していました。これには、生存に不可欠な食料、水、酸素といった基本的な生命維持物資が含まれていました。加えて、ISSで行われる科学研究活動を継続するための様々な実験機器や消耗品も運ばれました。

特に重要な貨物としては、船外活動（EVA）に使用されるロシア製のオーラン宇宙服、アメリカのデスティニーモジュールの換装用フレックスホース、ISSに酸素を供給するエレクトロン酸素発生器の新型機および現在搭載されている機体用の予備部品がありました。また、非常用の化学的酸素発生器、ISSシステムのバックアップ用予備バッテリー、より高性能になった新型火災検知抑制装置、船内のガス組成を監視するガス分析システムなども搭載されていました。その他、写真・映像撮影用のカメラ、データ記録用のカセット、ズヴェズダモジュール外部での実験に使用されるパッケージ、さらには宇宙放射線被ばくを測定する人体ファントム「マトリョーシカ」といった、科学観測やステーション運用に不可欠な物品も積み込まれていました。

これらの物資補給により、ISSの長期滞在ミッションの継続と、様々な分野での科学研究活動の推進が支えられました。

プログレスM1-11