プログレスMS-02

プログレスMS-02：ISSへの重要な輸送機

プログレスMS-02（ロシア語: Прогресс МС-02）は、ロシア連邦宇宙局ロスコスモスによって開発・運用された無人宇宙補給船の一種です。2016年に国際宇宙ステーション（ISS）へ向けて打ち上げられ、滞在クルーのための食料、水、酸素、機材など、生命維持や運用に不可欠な物資を届けました。この機体は、NASAやJAXAを含む国際宇宙ステーション計画に参加する他の機関からは、プログレス63または63Pという符号でも識別されています。

打ち上げからISSドッキング、そして任務完了まで

プログレスMS-02の打ち上げは、2016年3月31日16時23分（協定世界時UTC）に行われました。打ち上げ場所は、中央アジアのカザフスタン共和国にある世界的に有名なバイコヌール宇宙基地です。信頼性の高いソユーズ2.1aロケットに搭載されたプログレスMS-02は、予定された軌道へ正確に投入されました。

宇宙空間での自動航行を経て、プログレスMS-02は打ち上げからわずか2日後の2016年4月2日17時58分（UTC）に、ISSのロシアモジュール「ズヴェズダ」の機尾側に設けられたドッキングポートへ無事結合しました。ISSに滞在中だった第47次長期滞在クルーのために運び込まれた大量の物資や機材をISS船内に搬入する重要な任務を遂行しました。

すべての補給任務を終えたプログレスMS-02は、ISSから分離する時を迎えました。2016年10月14日9時37分（UTC）にズヴェズダモジュールから分離した後、予定された軌道離脱マヌーバを実行し、大気圏へ再突入する経路に乗りました。そして、分離から約4時間後、機体はその役目を終え、太平洋上空で大気圏に突入し、その大部分が燃え尽きました。

輸送された貨物の詳細

プログレスMS-02は、ISSに滞在する6名の第47次長期滞在クルーのために、合計で2,425キログラムに及ぶ多岐にわたる補給物資を運び届けました。その内容は、宇宙での生活と科学研究を支えるために極めて重要なものばかりです。具体的な内訳は以下の通りです。

推進剤：540キログラム
酸素および空気：47キログラム
水：420キログラム
スペアパーツ、日用品、科学実験装置など：1,418キログラム

これらの物資は、ISSの軌道維持、生命維持システムの稼働、クルーの健康管理、そして様々な分野における最先端の宇宙科学実験の継続に不可欠な貢献を果たしました。

プログレス-MS型補給船の技術的特徴

プログレスMS-02は、改良型の「プログレス-MS」シリーズに属しており、それまでのプログレス補給船から通信機能や電子機器を中心に多くの点が強化されています。このシリーズにおける最も注目すべき技術革新の一つは、ロシアが運用する対地同期軌道のデータ中継衛星「ルチ」を介して地上の管制局と通信できるようになったことです。これは、プログレス補給船だけでなく、ソユーズ宇宙船にとっても初めて実現した機能であり、ISSとの間の通信範囲を大幅に拡大し、運用効率と柔軟性を向上させました。

また、ルチ衛星経由の通信以外にも、以下のような重要な改良が施されています。

ISSへのドッキングを誘導するシステムが、従来のアナログ式「クルスA」から、より高性能でデジタル化された「クルスNA」へと更新されました。これに合わせて、アンテナの設計も見直されています。
ロシアの衛星測位システムであるGLONASSを用いた誘導システムにより、より精度の高い自律航行能力を獲得しました。
補給船とISSの間で映像をやり取りするシステムが、アナログ方式からデジタル方式へと更新され、より高品質で安定した無線映像伝送が可能になりました。
機体の制御をバックアップするためのデジタル制御ユニットが性能向上されました。
宇宙空間に存在する微小なデブリや流星物質の衝突から機体を守るための対流星塵シールドが強化され、安全性が高められました。
船内の照明システムに、電力消費の少ない高効率なLED照明が採用されました。
機体の姿勢を正確に把握するために使用される角速度センサーが最新型に更新されました。
ISSとのドッキングポートには、不測の事態に備えたバックアップ用の電動駆動機構が追加され、ドッキングの信頼性が向上しました。

これらの技術的な進歩により、プログレス-MSシリーズ、そしてプログレスMS-02は、ISSへの補給ミッションをより安全かつ効率的に遂行することが可能となりました。

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