プログレスMS-21

プログレスMS-21（ロシア製造番号451、NASA呼称プログレス82P）は、ロシアの宇宙機関ロスコスモスが開発・運用する無人宇宙補給船プログレスシリーズの一つです。この機体は、国際宇宙ステーション（ISS）へ様々な物資を補給するために打ち上げられました。

プログレスMS型は、先行するプログレスM型を基に、航法システムをはじめとする多くの機能が強化された改良バージョンとして、2015年から運用が開始されました。その主な改良点としては、人工衛星を搭載・展開できる新しい外部コンパートメントの追加（最大4個の打ち上げコンテナーを搭載可能）、ドッキングや密閉機構に使われる電気モーターの予備システムによる冗長性の向上、貨物室パネルの強化による微小隕石防護能力の増強などが挙げられます。また、ロシアのルーチ中継衛星との連携機能により、地上局との直接通信が困難な軌道上でもテレメトリーや制御が可能となり、GNSS（全地球航法衛星システム）を用いた自律航法により地上局の支援なしに自身の正確な位置や軌道を決定できるようになりました。さらに、ISSとの直接無線データ交換機能によるリアルタイムな相対航法や、ドッキング操作時の視認性を高める新しいデジタル無線システム、そしてウクライナ製の無線システムからの置き換えなどが実施されています。

プログレスMS-21の打ち上げは、2022年10月26日にカザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の31番射点から行われました。使用されたロケットはソユーズ2.1aで、効率的な高速軌道でISSへと向かいました。同機は打ち上げから間もなく、ISSのロシア区画にあるポイスク小型研究モジュールの後方側ポートに自動的にドッキングを成功させました。プログレスMS-21は、ISSに滞在する第68次長期滞在クルーの活動を支援するために必要な物資を届けました。

搭載された貨物の総重量は2,520 kgに及びました。この中には、ISSの船内で使用される食料や消耗品などの与圧貨物（1,357 kg）、宇宙ステーションの姿勢制御や軌道維持に使用される燃料（702 kg）、クルーが呼吸するための酸素（41 kg）、生活用水（420 kg）が含まれていました。

プログレスMS-21が輸送した重要な貨物の一つに、MLM多目的実験モジュール用の大型ペイロード取り付け手段（SKKO）のSCCS部分がありました。SKKO（ロシア語で「大型の物体を取り付けるための手段」を意味する略語）は、MLMモジュールの外部に設置され、様々な大型外部ペイロードを取り付けるための構造物です。これは、かつて宇宙ステーション「ミール」のプリローダモジュールで使用されていた機構を基に開発されました。プログレスMS-21で運ばれたSKKOのSCCS部分は、まずISS内部の一時的な保管場所へ移されました。その後、宇宙飛行士による船外活動（VKD-60）によってISS外部へ運び出され、MLMモジュールの後方側面に組み立て・設置されました。SKKOの別の部分であるLCCS部分は、プログレスMS-18宇宙船によって先行してISSに届けられ、別の船外活動（VKD-55）でERA（欧州ロボットアーム）の後方に取り付けられています。

プログレスMS-21の運用終盤、ISSからドッキング解除される数日前の2023年2月11日に、船内の冷却システムで圧力の低下が発生するという事象が発生しました。幸い、ISSへの貨物輸送と不要品の積み込み作業は既に完了しており、ISSの運用に直接的な影響はありませんでした。この事象は、同時期に発生したソユーズMS-22宇宙船の冷却システム不具合との類似性が指摘されています。プログレスMS-21は、当初の予定通り2023年2月18日にISSからドッキングを解除し、大気圏に再突入して燃え尽き、その任務を終えました。

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