プログレスMS-25

プログレス MS-25：国際宇宙ステーションへの生命線

プログレス MS-25（ロシア語表記：Прогресс МC-25、ロシア製造番号：455、NASAではプログレス86Pと呼称）は、ロシア連邦宇宙局（ロスコスモス）によって運用された無人宇宙補給船です。国際宇宙ステーション（ISS）への重要な物資輸送任務を担い、プログレス宇宙機としては178回目の飛行として記録されています。

改良型プログレスMSシリーズの進化

プログレス MSシリーズは、その前世代にあたるプログレスM型を基盤としつつ、特に航法および通信システムを中心に大幅な技術的強化が施された無人輸送機として開発されました。この改良型バージョンの最初のミッションは、2015年12月21日に実行されています。

プログレスMS型には、以下のような数々の強化点が盛り込まれています。

人工衛星放出機能: 新設された外部コンパートメントにより、小型人工衛星を軌道上で展開する能力を獲得しました。各コンパートメントには最大4個の発射コンテナーを搭載可能で、プログレスMS-03ミッションで初めてこの機能が搭載されました。
冗長性の向上: ドッキング機構および結合機構に用いられる電気モーターには予備システムが追加され、システム全体の信頼性（冗長性）が強化されました。
微小隕石対策: 貨物室には追加の防御パネルが設置され、軌道上の微細な宇宙塵やデブリに対する耐性が向上しました。
通信範囲の拡大: ロシアのルーチ中継衛星網との連携機能により、地上の管制局から直接見通せない軌道上でも、機体の状況データ（テレメトリー）の受信や遠隔操作が可能となりました。
自律航法システム: 全地球航法衛星システム（GNSS）を利用した自律的な航法が可能となり、地上局による軌道計算に頼ることなく、機体の位置や軌道パラメーターを自身で正確に決定できるようになりました。
ISSとの直接通信: 宇宙ステーションとの間で直接的な無線データ通信を行う機能も備え、接近・ドッキング時の相対位置をリアルタイムで把握・誘導できるようになりました。
デジタル無線システムの改良: 新しいデジタル無線システムが導入され、特にドッキング作業時の映像伝送能力が向上し、より精緻な操作を支援します。
システム更新: ウクライナ製のChezara Kvant-V無線システムおよびアンテナフィーダーシステムは、統合コマンドテレメトリーシステム（UCTS）によって置き換えられました。また、旧式のクルスAドッキングシステムは、より高性能なデジタル式のクルスNAシステムに更新されています。

打ち上げとISSへのドッキング

プログレス MS-25は、2023年12月1日、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地の31番射点から、ソユーズ2.1aロケットによって宇宙へと送り出されました。

打ち上げから約2日後の同年12月3日、プログレス MS-25は国際宇宙ステーションのロシア側モジュールである「ポイスク」（MRM2）に自動的に結合し、軌道上での補給任務を開始しました。

搭載された貨物

このミッションにおいて、プログレス MS-25には合計で2,528キログラム（約5,573ポンド）もの貴重な物資が搭載されていました。その内訳は多岐にわたり、ISSでの生活や科学実験、ステーションの維持に必要なものが含まれていました。

非与圧貨物：1,500キログラム
燃料：515キログラム
酸素：40キログラム
水：420キログラム

ミッションの完了

約半年間にわたりISSに結合し、補給船としての役割を果たした後、プログレス MS-25は任務を終えました。ISSからのドッキング解除は、2024年5月28日午前5時00分（協定世界時UTC）に行われ、再び「ポイスク」モジュールから切り離されました。

ドッキング解除の翌日、2024年5月29日に本機は軌道を離脱し、大気圏へ再突入して燃え尽きることで、そのミッションを完了しました。

プログレス MS-25は、改良された性能を活かし、ISSの長期滞在クルーへの物資供給という重要な役割を遂行しました。このような無人補給船の継続的な運用は、国際宇宙ステーションの維持と、そこで行われる科学研究活動にとって不可欠な要素です。

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