プログレスMS-26

プログレス MS-26

プログレス MS-26（ロシア語: Прогресс МC-26）は、ロシアの宇宙開発を担うロスコスモスによって製造・運用された無人宇宙補給船です。国際宇宙ステーション（ISS）へ重要な物資を届けるためのミッションに従事し、これはプログレス宇宙機全体の歴史において179回目の飛行にあたります。ロシアでは製造番号456として記録されており、NASAからは「プログレス87P」の呼称が与えられています。

プログレスMSシリーズの概要と改良点

プログレス MSシリーズは、先行するプログレスM型補給船を基に、主に航法および通信システム、そして信頼性の向上を図った改良型として開発されました。この新世代補給船の初飛行は2015年12月21日に行われました。プログレス MS-26もこのシリーズの一機であり、従来のプログレスMに比べて以下のような機能強化が施されています。

主な改良点

小型人工衛星放出機能: 船体の外部に新たなコンパートメントが設けられ、小型人工衛星を搭載し、軌道上で展開することが可能となりました。このコンパートメントは、それぞれ最大4個の発射コンテナーを収容できます。この機能は、プログレスMS-03から導入されています。
ドッキングシステムの冗長性向上: ドッキングや密閉機構を操作する電気モーターに対し、予備システムが追加され、単一の機器故障が発生した場合でもミッション継続が可能となるよう、信頼性が強化されています。
微小隕石からの防護強化: 貨物コンパートメントの壁面に保護パネルを追加することで、宇宙空間を漂う微小なデブリや隕石の衝突に対する耐性が向上しています。
通信範囲の拡大: ロシアのルーチ中継衛星システムと連携することで、地上局の通信範囲外にある間でも、船体のテレメトリーデータを送信したり、地上からのコマンドを受信したりすることが可能になり、ミッション中の運用自由度が高まりました。
自律航法能力: GNSS（全球測位衛星システム）を活用することにより、地上からの追跡情報に依存することなく、自律的に船体の正確な位置（状況ベクトル）や軌道パラメータを決定できるようになりました。
ISSとの直接通信: 国際宇宙ステーションと直接無線通信を行い、リアルタイムで相対的な位置情報を交換する機能が追加され、ドッキングなどの精密な運用時の精度と安全性が向上しています。
デジタル無線システムの刷新: ドッキング操作時に使用されるTV映像の品質を向上させるため、新しいデジタル無線システムが採用されています。
統合コマンドテレメトリーシステム (UCTS) の導入: 従来のウクライナ製Chezara Kvant-V無線システムおよび関連するアンテナフィーダーシステムが、ロシア製の統合コマンドテレメトリーシステム（UCTS）に置き換えられました。
クルスNAシステムへの更新: 自動ドッキングシステムが、旧型のクルスAからより高性能なデジタル式のクルスNAシステムに変更されました。

プログレス MS-26のミッション遂行

プログレス MS-26を搭載したソユーズ2.1aロケットは、2024年2月15日にカザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の31番射点から打ち上げられました。宇宙空間に到達した後、プログレス MS-26はISSへの自動接近とドッキングシーケンスを実行し、打ち上げからわずか2日後の2024年2月17日に、ISSのロシア区画の一部である「ズヴェズダ」サービスモジュールに自動的にドッキングしました。これにより、軌道上で活動している第70次長期滞在クルーへの補給任務が開始されました。

搭載貨物

プログレス MS-26によってISSへ届けられた総貨物量は2,518キログラム（約5,551ポンド）に及びます。この貨物の内訳は以下の通りです。

一般貨物（ISS滞在クルーのための食料品、衣服、実験装置、予備部品など）：1,478 kg（約3,258 ポンド）
推進剤（ISSの軌道維持や姿勢制御に使用される燃料）：580 kg（約1,280 ポンド）
水：420 kg（約930 ポンド）
* 窒素（ISS船内の空気組成を調整するために使用されるガス）：40 kg（約88 ポンド）

プログレス補給船は、ISSの継続的な運用と、そこで行われる科学研究活動を支える上で極めて重要な役割を担っています。プログレス MS-26の成功したミッションは、ISSへの無人補給飛行の重要な一環となりました。国際宇宙ステーションへの無人宇宙飛行の一覧には、本機を含む多くの補給ミッションが記録されています。

もう一度検索