プロセラルム盆地

プロセラルム盆地

プロセラルム盆地（プロセラルムぼんち）は、月の表側に位置する特徴的な地形で、直径は約3,000kmに達します。この盆地は、月の表面で最大かつ太陽系でも有数の衝突地形の一つと考えられています。その名前はラテン語で「嵐の」という意味があり、その名は盆地内に存在する「嵐の大洋」に因んでいます。

名称の由来

プロセラルム盆地の存在は、1974年に英国のシェフィールド大学のP.H.カドガンによって初めて提唱されました。彼は当初、「ガルガンチュア盆地」という名前を提案しましたが、1981年にNASAのイーウェン・ウィテカーの指摘を受け、より適切な名称として「プロセラルム盆地」が採用されました。この名称は、月面の衝突盆地の命名慣習に基づいています。

盆地の構造

この巨大な盆地は月の表面の約86%を占めており、月の裏側にある南極エイトケン盆地よりも大きいです。この大きさのため、盆地の内部には直径1,145kmの「雨の海」が存在します。これは、プロセラルム盆地が形成された後に、さらに別の衝突によって作られた地形によって形成されたものです。盆地内には、豊かの海と神酒の海の一部を除いた部分に、特異な模様が見受けられます。

月の海は、暗い玄武岩質の岩石が広がっており、月の中央部に位置する高地とコントラストをなしています。特に、月の表側と裏側では地質的な違いが見られ、海の比率や地殻の厚さに顕著な差が存在します。このような違いは、プロセラルム盆地が月の地形に与えた影響を理解する上で重要です。

起源

プロセラルム盆地は、約300kmの直径を持つ巨大な小惑星が衝突したことによって形成されたとされています。この衝突により、月の表面が変容し、岩石が飛び散り、後の地形を形成する要因となりました。月の暗い海は、形成初期の内部から放出された玄武岩マグマによってできたもので、現在我々が目にするような盆地の景観を構築しました。月探査によって明らかになったことの一つは、表側の地殻が薄く、裏側は厚いということです。これが、月が常に地球の方向を向いて公転している原因となっているとも言われています。

2012年には、産業技術総合研究所がJAXAの月周回衛星「かぐや」のデータを用いて、衝突によって生成された物質の分布を調査しました。その結果、プロセラルム盆地近辺や雨の海周囲には、低カルシウム輝石が20%以上含まれているとの発見があり、これが衝突による影響証拠となりました。この発見は、月の表側と裏側の特性に関する理解を深める重要なものでした。

他の衝突地形との比較

プロセラルム盆地が太陽系で最も大きな衝突地形であるかどうかは現在も不確定ですが、南極エイトケン盆地（2,500km）や火星のヘラス平原（2,300km）など、他に大きなクレーターがいくつか存在します。火星の北極盆地もそのサイズから、大規模な衝突によるものだと考えられています。また、木星のガリレオ衛星カリストに存在するヴァルハラ盆地も、衝突による特徴を持つとされています。

まとめ

プロセラルム盆地は、月の地形の中でも特に大きな影響を与えている地形であり、その研究は月や太陽系全体の理解を深めるための貴重な資料となっています。この壮大な衝突地形は、月の表側の特性を理解し、様々な科学的探査の場となり続けることでしょう。

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