プロッツァ

株式会社プロッツァ

株式会社プロッツァは、愛知県一宮市にかつて本社を置いていた日本の電気自動車（EV）メーカーです。主に電動二輪車や電動三輪車の製造・販売を手掛けていました。その設立母体は、自動車用品の分野で知られる株式会社プロスタッフです。

設立と「今、使える未来」

プロッツァの歩みは、2008年に株式会社プロスタッフ内に立ち上げられたEV事業部から始まりました。当時のEV業界では多くのベンチャーが誕生していましたが、プロッツァが追及したのは「今、使える未来」という独自のコンセプトでした。これは、遠い将来の技術としてではなく、人々の日常生活に無理なく溶け込み、それでいてこれまでにない走行の楽しさをもたらすEVの実現を目指すものでした。この着想の原点には、当時のプロスタッフ社長である廣瀬徳蔵氏が、海外でのビジネスの際に上海で見た光景があります。彼は、都市のバイクが驚くべき速さで電動モデルに置き換わっていく様子を目の当たりにし、EVが既に「身近な乗り物」となっている現実を感じ取ったといいます。

電動バイク事業と市場開拓

設立の翌年、2009年にはプロッツァとして最初の製品となる電動バイク「EV-R55」を発表しました。続いて2010年には、緊急用のペダルを備えた個性的なデザインの「ミレット」を市場に投入します。このミレットは、その軽快なスタイルと、当時の電動バイクとしては珍しい12色という豊富なカラーバリエーションが大きな注目を集めました。クリーンで静かな走行性能に加え、ファッション性の高さが支持され、特に流行に敏感な若い女性など、従来のバイクユーザーとは異なる新たな顧客層の獲得に成功しました。また、家電量販店での販売網を築くなど、電動バイクの新たな販売チャネルを開拓した先駆けとしても知られています。

生産へのこだわりと挑戦

黎明期の電動バイクベンチャーの多くが、生産を中国企業へのOEM（相手先ブランド製造）に委託する中、プロッツァは国内での自社工場生産を志向しました。当初は外部委託も行いましたが、品質管理や生産管理における難しさを経験し、より高い品質を実現するために自社生産体制へと転換したのです。これは、製品の質に対する強いこだわりを示すものでした。

国内市場向けの電動バイク事業を展開する一方で、プロッツァはコンシューマー製品以外の分野や国際的な活動にも積極的に乗り出します。2011年には、バイクレースの聖地であるマン島で開催されるTTレースのZeroクラスに、日本勢として初めて挑戦。見事に完走を果たし、5位入賞という notable な成績を残しました。さらに2012年には、大気汚染やガソリン価格高騰が社会問題となっていたフィリピンに向けて、7人乗りの電動三輪タクシー「ペコロ」を開発しました。フィリピンのセブ島に自社工場を設立し、現地生産による早期の量産体制を構築するなど、単なる製品開発に留まらない、社会課題の解決に貢献する取り組みも展開しました。

分社化、そして統合へ

こうしたEV事業の順調な成長を背景に、2013年、プロスタッフのEV事業部門は独立し、株式会社プロッツァとして分社化されました。これにより、プロッツァはEV専業メーカーとして新たなスタートを切ります。しかし、その後、電動バイク製品の生産・販売を2016年末に終了。そして2018年3月には、再び親会社であるプロスタッフに再編統合され、プロッツァという企業の歴史はその幕を閉じました。

ルーツに流れる技術開発のDNA

プロッツァの母体であるプロスタッフは、1919年に設立された竹原鉄工所にそのルーツを持ちます。創業期には、当時の最先端技術であった紡織機械の設計・施工を手掛け、第二次世界大戦中には零式艦上戦闘機の部品製造に携わるなど、高度な技術力が求められる分野で実績を重ねました。戦後は、オートバイメーカー「CABTON」の部品製造を手掛けるなど、時代の求めるモノづくりに応えながら、多彩なノウハウを蓄積してきました。この創業以来受け継がれてきた「技術開発のDNA」は、後の産業用機械事業、そして現在の自動車用品事業へと繋がり、自動車ガラス用油膜取りのベストセラー「キイロビン」といった製品を生み出しました。モータリゼーションの発展と共にカー用品事業がグループの中核へと成長する中で、EV事業部が設立され、プロッツァへと発展していったのです。

主な製品

プロッツァが生み出した代表的な製品としては、ファッション性の高さで注目された電動バイクの「ミレット」と、フィリピンの社会課題解決を目指した電動三輪タクシー「ペコロ」があります。「ミレットLi500」は、軽量な車体に脱着式バッテリーと豊富なカラーバリエーションを備え、ユーザーフレンドリーな設計が特徴でした。「ペコロ」は、フィリピンの主要な公共交通手段であるトライシクルを電動化するプロジェクトに対応した車両です。7人乗りで、フィリピンでの現地生産と日本からのパワートレイン部品調達を組み合わせることで品質とコストのバランスを図りました。特に革新的なのは、バッテリーそのものを交換する「スワッピング方式」を採用した点で、高価な充電設備の普及を待たずに運用できるシステムとして注目されました。

短い活動期間ではありましたが、プロッツァは日本のEV黎明期において、「今、使える未来」というコンセプトのもと、デザイン性や実用性を兼ね備えた製品開発、国際的なレースへの挑戦、そして海外での社会課題解決に向けた取り組みなど、独自のアプローチを展開しました。その活動は、その後のEV普及に向けた多くの示唆を含んでいます。

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