プロドゥア・カンチル

プロドゥア・カンチル：マレーシアの国民車

プロドゥア・カンチルは、マレーシアの自動車メーカー、プロドゥアが製造した小型ハッチバック車です。1994年に初代モデルが発売されて以来、その愛らしいデザインと手頃な価格で、マレーシアの国民的な自動車として広く親しまれてきました。

誕生と初期モデル

カンチルは、ダイハツ・ミラ（L200系）をベースとしたバッジエンジニアリング車として登場しました。プロドゥアにとっては初の車種であり、ミラと同様にモノコック構造を採用。エンジンもダイハツ製の直列3気筒660ccおよび850ccエンジンを搭載しています。

外観上の主な違いはエクステリアデザインですが、カンチルはベースとなったミラが4人乗りであるのに対し、5人乗りを実現した点が特徴です。初期モデルには5速MTが組み合わされ、850ccエンジン搭載車には3速ATも選択可能でした。また、850ccモデルにはカラードバンパーが装着されました。

発売当初から人気を博し、特に初心者ドライバーに支持されました。また、多くの自動車教習所で教習車として採用されたため、生産台数は発売から数年で数十万台を超えるヒット作となりました。

モデルチェンジ

カンチルは、15年間の生産期間中に3度のフェイスリフトを行いました。

1997年: 初のフェイスリフトでは、フロントグリルとバンパーのデザインが変更されました。これにより、よりモダンな印象となりました。
2000年: 2度目のフェイスリフトでは、同様にフロントグリルとバンパーのデザインが変更され、より洗練された印象になりました。
* 2002年: 大幅なフェイスリフトが実施されました。前後バンパー、フロントグリル、ヘッドランプ、バックドア、リアコンビランプのデザインが大幅に変更され、内装もセンターメーターレイアウトのダッシュボードへと変更されました。この変更により、カンチルは一層スタイリッシュでモダンな外観を手に入れました。

海外展開

カンチルは、マレーシア国内だけでなく、海外でも販売されました。イギリスではプロドゥア・ニッパとして、インドネシアではダイハツ・チェリアとして販売され、その人気を海外にも広げました。

後継モデルと生産終了

カンチルの上級モデルとして、2001年には5代目ミラをベースとしたクリサ、2007年にはクリサの後継車として6代目ミラをベースとするビバが発売されましたが、カンチルはプロドゥアのエントリーモデルとして、2009年9月にビバに統合されるまで生産が続けられました。最後のカンチルは2009年7月20日にラインオフし、15年間の歴史に幕を閉じました。

生産台数と販売実績

カンチルの生産台数は、15年間で合計722,223台に達しました。そのうち708,000台がマレーシア国内で販売され、まさに国民車としての地位を確立しました。

車名の由来

車名の「Kancil」は、マレー語でネズミジカを意味します。小さく愛らしいカンチルの姿が、小型ハッチバック車のイメージに合致することから名付けられました。

まとめ

プロドゥア・カンチルは、マレーシアの自動車史において重要な一台です。ダイハツ・ミラをベースとしながらも、プロドゥア独自の個性を加え、国民に愛される自動車へと成長しました。手頃な価格と使いやすさ、そして愛らしいデザインは、多くの人々に支持され、マレーシアのモータリゼーションを支えた一台として、その名を歴史に刻んでいます。

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