プロビジョニング

プロビジョニングとは

プロビジョニング（Provisioning）は、本来「準備」「提供」「設備」といった意味を持つ言葉です。IT分野においては、ユーザーや顧客に対してサービスを提供するための仕組みを指す用語として用いられます。具体的には、情報システムやネットワーク環境を構築し、ユーザーが利用できるようにするための準備作業全般を指します。

プロビジョニングの語源は、長旅に出る際の食料の確保といった「準備」に由来します。現在では、通信インフラからクラウドサービスまで、幅広い分野で利用されています。通信サービスにおいては、配線、機器、信号の伝送といった要素を含み、サービス開始にあたって必要なあらゆる準備を指します。

情報技術の発展に伴い、プロビジョニングの概念も拡大しています。データや技術リソースへのアクセスを提供するシステム構築、企業レベルでの情報リソース管理といった、より広範なシステム構築を意味するようになっています。

マネジメントの観点からは、CIOの監督のもと、人事部門とIT部門が協力してプロビジョニングを行います。具体的には、以下の作業が含まれます。

データリポジトリ、システム、ネットワークアプリケーション、データベースなどへのアクセス権限設定
コンピュータや電話などのハードウェアリソースの使用権限設定
組織のリソースとユーザーのプライバシー保護のためのアクセス権の監視
法令順守とシステム悪用・侵入対策
システムで使用するブートイメージの管理

これらのプロビジョニング作業は、組織のセキュリティと効率性を確保するために不可欠です。

プロビジョニングは、仮想化、オーケストレーション、ユーティリティコンピューティングといった概念と密接に関連しています。OASISのPTSC（Provisioning Services Technical Committee）では、SPML（Service Provisioning Markup Language）というXMLベースのプロビジョニング情報交換フレームワークを定義しています。SPMLは、組織内外でのID割り当てやシステムリソース割り当てを管理するためのものです。

プロビジョニングが完了すると、システムは標準に従って運用されることが保証されます。つまり、プロビジョニングはサービス運用開始までのプロセスであり、その後のシステム運用はシスオペやシステム管理の範疇となります。

プロビジョニングの種類

プロビジョニングには、様々な種類が存在します。以下に主な種類を解説します。

サーバ・プロビジョニング

サーバ・プロビジョニングは、サーバファームからサーバを選択し、OS、デバイスドライバ、ミドルウェア、アプリケーション[[ソフトウェア]]といった必要なソフトウェアをインストールし、システムを適切に設定する作業です。IPアドレスの設定など、サーバ固有の設定も行います。

この作業には、サーバを運用可能にするためのすべてのプロセスが含まれます。ISPやホスティングサービス業者では、サーバ・プロビジョニングが頻繁に行われるため、作業がパラメータ化されていることが多いです。多くの場合、物理的なハードウェアではなく、バーチャルホストが構成されます。

サーバ・プロビジョニングを自動化するためのソフトウェア製品も存在します。

サーバ構成は、組織の要求やサーバの用途によって異なります。冗長構成にするかどうかは、組織がそのサーバの可用性をどのように考えているかによります。重要なアプリケーションほど、クラスタ構成やRAIDなどを用いてダウンタイムを削減します。

サービス・プロビジョニング

サービス・プロビジョニングは、ISPが会員向けに行う作業全般を指します。具体的には、以下の設定が含まれます。

DNS[[サーバ]]の設定
電子メールの設定（メーリングリスト、転送設定を含む）
個人WebサイトのためのHTTP/HTTPSサービス（パスワード保護ディレクトリなど）
FTPの設定
MySQLやPHPのサポート
ウィキの設定（ISPが提供しているケースは少ない）
ストレージ容量の提供

ユーザ・プロビジョニング

ユーザ・プロビジョニングは、システムやディレクトリ、アプリケーションにおいて、ユーザーアカウントの生成、保守、削除を行うプロセスです。完全に自動化されている場合と、そうでない場合があります。ユーザ・プロビジョニングのためのソフトウェアは、変更伝播、セルフサービスワークフロー、統合ユーザー管理といったプロセスに従って動作します。

ユーザーアカウントが誰に対応するかは、サービスの内容によって異なります。従業員、取引先業者、顧客などが対象となります。ユーザ・プロビジョニングの対象となるサービスには、電子メール、ディレクトリ・サービス、データベースアクセス、ネットワークアクセスなどがあります。ユーザ・プロビジョニングは、一種のアイデンティティ管理ソフトウェアと捉えることができます。

モバイルサブスクライバー・プロビジョニング

モバイルサブスクライバー・プロビジョニングは、既存の携帯電話ネットワーク加入者に対して、新しいサービスを構築・提供することを指します。具体的には、GPRS、MMS、インスタントメッセージ、インターネット上のチャットや電子メールサービスとのゲートウェイなどがあります。

モバイルコンテンツ・プロビジョニング

モバイルコンテンツ・プロビジョニングは、モバイルコンテンツを携帯電話などに提供することを指します。

関連技術

プロビジョニングは、以下の技術と密接に関連しています。

仮想化
オーケストレーション
* ユーティリティコンピューティング

まとめ

プロビジョニングは、ITサービスの基盤を構築する上で不可欠なプロセスです。効率的なプロビジョニングは、システムの安定稼働とセキュリティ確保に不可欠であり、組織のビジネスを支える重要な要素となります。多様なプロビジョニングの種類を理解し、適切な手法を選択することで、より高品質なITサービスを提供することができます。

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