プロマコス

プロマコス（古希: Πρόμαχος）は、古代ギリシアの神話や伝説に登場する人名の一つであり、いくつかの異なる人物がこの名前で言及されています。中でも特に知られているのは、伝承によって異なる三人の人物です。以下にそれぞれのプロマコスについて詳細を記します。

アイソーンの子
一人目のプロマコスは、テッサリアー地方のイオルコスを治めていた王アイソーンの子です。彼は、有名な英雄イアーソンの弟にあたります。イオルコスの王位は、アイソーンの異母兄弟であるペリアースによって不当に奪われていました。ペリアースは、王位の正当な後継者であるイアーソンの帰還を恐れ、その血筋を断つことを画策します。イアーソンの帰還を待たずして、ペリアースはアイソーンとその家族に危害を加えようとしました。これに対し、父アイソーンと母ポリュメーデー（文献によってはアムピノメーやポリュメーレーとも）は、ペリアースの残酷な手から逃れるため、あるいは将来を絶望視して、幼いプロマコスを残して自ら命を絶ったと伝えられています。しかし、非情なペリアースは、残されたこの幼いプロマコスをも容赦なく殺害してしまいました。彼の短い生涯は、ペリアースの冷酷さと、イアーソンの物語の背景にある悲劇的な家族の運命を象徴しています。

ヘーラクレースの子
次に挙げられるプロマコスは、大英雄ヘーラクレースと、シチリア島シカニア地方（現在のシチリア島南西部）の王エリュクスの娘であるプソーピスとの間に生まれた息子です。彼にはエケプローンという兄弟がいました。プロマコスとエケプローンは、遠く離れたペロポネーソス半島にあるアルカディア地方のペーギアーという土地で育ちました。成長した後、プロマコスはこのペーギアーという地名を、自分たちの母であるプソーピスの名前にちなんで「プソーピス」と改称したとされています。アルカディア地方のプソーピスの町には、かつてプロマコスと兄弟のエケプローンを英雄として祀る英雄廟（ヘーローン）が存在し、地元の人々から敬われていたと考えられています。しかし、紀行家パウサニアースが西暦2世紀頃にこの地を訪れて著した『ギリシア記』によると、その頃にはプロマコスとエケプローンの英雄廟はすっかり寂れてしまい、かつての栄光の痕跡しか留めていなかったと記されています。これは、時間の経過とともに、神話時代の英雄に対する崇拝が薄れていった様子を示す一例と見なすことができます。

エピゴノイの一員
三人目のプロマコスは、パルテノパイオスの子として知られています。パルテノパイオスは、アルゴスの王アドラーストスの兄弟にあたる人物であり、テーバイ攻めの七将の一人として有名ですが、この遠征で命を落としました。このプロマコスは、父を含む七将の雪辱を果たすため、その子らが組織した第二次テーバイ遠征軍、すなわち「エピゴノイ」（「後裔たち」という意味）の一員として歴史に登場します。彼はエピゴノイとしてテーバイへの遠征に参加し、父たちの果たせなかったテーバイ陥落という目的を達成する戦いに貢献しました。この遠征の終結後、プロマコスはその生涯を閉じ、ボイオーティア地方のグリサスという地に丁重に葬られたと伝えられています。エピゴノイの物語は、アルゴスとテーバイの間に長く続いた敵対関係に一つの終止符を打つ重要なエピソードとして、ギリシア神話や歴史の中で語り継がれています。

もう一度検索