パルテノパイオス

パルテノパイオス（古希: Παρθενοπαῖος, Parthenopaios）は、古代ギリシアの神話に登場する重要な人物であり、特にアルゴスの七将によるテーバイ攻めの物語において、主要な英雄の一人としてその名が挙げられます。

名前の由来と系譜

パルテノパイオスという名前は、「処女の息子」を意味するとされています。これは、彼が有名な女狩人アタランテーから生まれたという伝承に基づいています。一般的には、アタランテーと、彼女との徒競走に勝利して結婚したメラニオーン（あるいはヒッポメネース）との間に生まれたとされています。しかし、父親についてはメレアグロスや戦神アレースであるとする異説も存在します。さらに全く異なる伝承では、アルゴス王タラオスとリューシマケーの子であるとも語られており、この場合、彼はテーバイ攻めの総大将であるアドラストスや、預言者アムピアラオスと結婚したエリピューレーの兄弟にあたります。

彼の息子にはプロマコスがおり、テーバイ攻めの後にその子孫たちが行った「エピゴノイ（後継者たち）」の遠征に参加しています。

誕生と幼少期

パルテノパイオスの誕生には、母アタランテーの行動が深く関わっています。アタランテーはかつて自分が親によってパルテニオス山中に棄てられた経験があるためか、生まれたばかりのパルテノパイオスを同じ山の斜面に棄てたと言われています。時を同じくして、アルカディア王アレオスの娘アウゲーと大英雄ヘーラクレースの間に生まれた子も、同じ山中に棄てられていました。運命的な巡り合わせにより、この二人の赤ん坊はコリュトス王に仕える羊飼いたちによって発見されます。アウゲーの子は後にテーレポスと名付けられ、アタランテーの子はパルテノパイオスと名付けられて、共に手厚く養育されることとなりました。

成人後の旅と活躍

二人が青年期を迎えると、テーレポスは生みの親である母親を探す旅に出ることを決意します。パルテノパイオスはテーレポスの旅に同行し、共に多くの経験を積みました。旅の途中で彼らはミューシアの地に立ち寄りますが、そこではイーダースという人物がテウトラース王から王座を奪おうと企んでいる状況でした。テウトラース王は、もしイーダースを追い払ってくれる者がいれば、その者に王位を譲ると約束しました。パルテノパイオスは友であるテーレポスを助け、イーダースとの戦いに果敢に挑み、見事に彼を打ち破ることに成功しました。このミューシア滞在中、テーレポスは探していた母アウゲーが、実はテウトラース王の妃となっていたことを知るのです。

テーバイ攻めへの参加と最期

ミューシアでの冒険の後、パルテノパイオスはテーバイ攻めの総大将であるアドラストスの召集に応じ、彼の率いる七将の一員として、テーバイに対する遠征に参加しました。テーバイ城を取り囲んだ七将は、それぞれが城壁の異なる門を担当して攻撃を仕掛けます。パルテノパイオスがどの門を攻めたかについては、古代の劇作家たちの作品によって描写が異なります。

アイスキュロスが著した悲劇『テーバイ攻めの七将』の中では、彼は北にある第七の門を攻めたとされています。一方、エウリピデースの悲劇『フェニキアの女たち』では、彼はネイタイ門を攻めたと描かれています。

壮絶な攻防の中、パルテノパイオスはテーバイ側の守将によって討ち取られます。その最期についても複数の伝承があり、一般的にはテーバイの守将アムピディコスに殺されたと語られています。しかし、エウリピデースの作品では、彼を斃したのは海の神ポセイドーンの子であるペリクリュメノスであり、ペリクリュメノスが城壁の上から投げつけた巨大な石によって命を落としたと劇的に描かれています。

若くしてテーバイ攻めの激戦の中に散ったパルテノパイオスは、七将の一人として、また悲劇的な運命をたどった英雄として、ギリシア神話にその名を残しています。

参考文献

アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』（高津春繁ほか訳、ちくま文庫）
エウリピデース『フェニキアの女たち』（岡道男ほか訳、ちくま文庫）
アポロドーロス『ギリシア神話』（高津春繁訳、岩波文庫）
ロバート・グレーヴス『ギリシア神話』（高杉一郎訳、紀伊國屋書店）
カール・ケレーニイ『ギリシアの神話』（高橋英夫訳、中央公論社）
R・L・グリーン『ギリシア神話　テーバイ物語』（眞方陽子訳、ちくま文庫）

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