エケプローン

エケプローン

エケプローン（古希: Ἐχέφρων, Echephrōn）は、古代ギリシアの神話や伝承に登場する複数の人物が共有する名前です。日本語では長母音を省略し、「エケプロン」と表記される場合もあります。

この名を持つ人物の中でも、主に以下の3名が広く知られています。

1. ピュロスの王ネストールの子

このエケプローンは、トロイア戦争で名高いピュロス（ピュロス）の賢王ネストールと、その妻であるエウリュディケー、あるいはアナクシビアーとの間に生まれた息子の一人です。彼はアンティロコス、トラシュメーデース、ペイシストラトス、ストラティオス、ペルセウス、アレートスといった男兄弟に加え、ペイシディケー、ポリュカステーといった女兄弟を持つ大家族の一員でした。

ホメーロスの壮大な叙事詩『オデュッセイアー』の中では、父ネストールの館を訪れたテーレマコス（イタケーの王オデュッセウスの息子）を出迎える場面で彼の名が言及されています。テーレマコスが失踪した父の情報を得るためにピュロスを訪れた際、ネストールとその息子たちが彼を温かく迎え入れました。

2. トロイア王プリアモスの子

トロイアの偉大な王であり、トロイア戦争の悲劇的な主人公の一人であるプリアモスには、多くの妻妾との間に50人もの息子と12人の娘がいたと伝えられています。このエケプローンは、そのプリアモスがもうけた子供たちのうちの一人として名を連ねています。しかし、彼は王の正妃ヘカベーの子ではなく、他の女性との間に生まれた庶子であったとされています。彼の母親が誰であったかについては、残念ながら詳細な記録は現代に伝わっていません。

3. 英雄ヘーラクレースの子

このエケプローンは、ギリシア神話最大の英雄であるヘーラクレースと、シケリア島のシカニア地方を統治した王エリュクスの娘プソーピスとの間に生まれた息子です。彼にはプロマコスという名の兄弟がいました。エケプローンとプロマコス兄弟は、ギリシア本土のアルカディア地方にある都市ペーギアーで成長しました。後に、このペーギアーという都市は、彼らの母の名に敬意を表して「プソーピス」と改名されたと伝えられています。

パウサニアスによる紀行書『ギリシア記』によれば、かつてプソーピスの地には、このエケプローンとプロマコス兄弟を英雄として祀る2つの廟が建立されていました。しかし、パウサニアスが紀行を行った時代には、すでにこれらの廟は荒廃し、その威容を失っていたと記録されています。

これらのエケプローンは、それぞれ異なる系譜に属し、神話や伝承の中で独自の役割を果たしています。

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