プロレス・エキスポ

プロレス・エキスポ（ProWres EXPO）は、日本で生まれた国際的なプロレスリングプロジェクトです。その目的は、日本のプロレス界が持つ高いレベルを示すと共に、「ProWres」という名称をアニメやカラオケのように世界中で通用する言葉にすることにありました。また、後年、様々な場面で引用されることになる「○○（国名）の力道山を創造する」というフレーズが初めて公にされたのも、このプロジェクトの発表の場だったとされています。

プロジェクトの始動と日本大会

プロジェクトの開催とコンセプトが発表されたのは、日本のプロレス界を牽引した力道山を盟主とする日本プロレス協会が旗揚げされてからちょうど55周年にあたる2008年7月30日でした。スーパーバイザーには、当時新日本プロレスに所属していた蝶野正洋氏が就任しています。

第一回大会は、2008年10月24日と25日の二日間にわたり、日本の両国国技館で開催されました。株式会社フリーバーズインターナショナル・ジャパン（FBI-JAPAN）を中心とした「プロレス・エキスポ実行委員会」が主催となり、世界13カ国から総勢45名ものプロレスラーが集結するという、当時のプロレス興行としては他に類を見ない規模で注目を集めました。後援にはZERO1を運営するファースト・オン・ステージが名を連ねています。

しかしながら、観客動員には苦戦を強いられました。二日間で計三大会が行われたにも関わらず、総動員数は約7,500人に留まったとされます。集客の苦戦には複数の要因が指摘されており、その一つに、参加選手の正式発表が遅れ、開催直前の9月まで確定しなかったことが挙げられています。加えて、同時期に国内の主要プロレス団体が大規模な興行を組んでいた影響も大きかったとされ、特に大会2日目にはプロレスリング・ノアが日本武道館で1万2千人を動員する大会を開催していました。

新たな試みとして「プロレス業界への黒船襲来」と揶揄する向きもありましたが、結果的には多くの国内団体からの支持や協力を取り付け、「事実上の大同団結」が実現した大会であったとも評価されています。

掲げられたコンセプト

このプロジェクトが掲げた主要なテーマは「世界平和とプロレス」でした。単なる競技やエンターテイメントに留まらず、大会を通じてあらゆる因縁や対立を乗り越え、参加者全員がリング上で手を取り合ってハッピーエンドを迎えるという理念が貫かれました。このコンセプトは、2008年の日本大会だけでなく、後に開催される2010年のネパール大会でも継承されています。

2008年の日本大会は、大会コンセプトを象徴する緑（オリーブ）、白（鳩）、蒼（海）をテーマカラーとし、それを冠したユニークな試みとして、2日間で3つの異なる大会を開催する形式が採用されました。

ネパールでの成功とアジアへの広がり

日本大会以降、プロジェクトの活動は一時的に沈静化し、その存続が危ぶまれる時期もありました。しかし、2010年になり、ネパールでの大会開催によって再び息を吹き返します。

2010年3月13日には首都カトマンズで、続いて20日にはポカラで大会が開催されました。これらのネパール大会は、同国建国以来初の国際スポーツイベントとして、国家的な事業として位置づけられました。さらに、翌年以降の国家観光プログラムへの組み込みも内定したと報じられ、継続的な開催への期待が高まりました。

当初は2009年12月に開催が予定されていましたが、ネパール国内の政情不安を受けて延期となり、やや規模を縮小しての開催となりました。しかしながら、蓋を開けてみれば、カトマンズで5,000人、ポカラで15,000人という、2大会合計で2万人もの大観衆を集めることに成功し、これは日本での開催を大きく上回る動員数となりました。この成功は、今後のプロレス・エキスポの可能性を強く示すものとなりました。

ネパールでの成功以降、プロレス・エキスポはアジア各地での展開を見せます。

2010年7月31日から2日間、東京の日比谷公園で開催されたネパール・フェスティバルでは、メイン会場に特設リングが組まれました。ネパール大会にも参加し、「ネパールプロレス大使」に任命された富豪富豪夢路や梅澤菊次郎をはじめ、地下プロレスEXITの選手らが参加し、真夏の都心の公園で熱戦を繰り広げました。会場にはヒマラヤンタイガーからのメッセージが流れ、等身大パネルが展示されるなど、ネパール国内での彼の高い知名度を示す演出も行われました。

2011年9月には、東京の代々木公園で継続的に開催。この大会には、ネパール大会にも参加したヒマラヤンタイガーが来日したほか、小笠原和彦、紅闘志也、澤宗紀といった日本の実力派選手、さらには在日ネパール人としてキックボクシングのMA日本スーパーライト級チャンピオンとなったモハン・ドラゴン、そして伝説のレスラー、ザ・グレート・カブキの息子であるTHE KABUKIも参戦しました。

さらに、2012年6月7日と8日には、タイのバンコクでも大会が開催されました。ここでも富豪2夢路（富豪富豪夢路から改名）、THE KABUKI、日龍、ヒマラヤンタイガーといった複数回参加選手に加え、タイからはルンピニースタジアムのランカー経験を持つムエタイ戦士、エック・パンサーが参戦。また、現地で新団体「我闘雲舞」を立ち上げたばかりのさくらえみと、当時JWPに所属していた米山香織もリングに上がりました。

これまでのところ、富豪2夢路、THE KABUKI、日龍、ヒマラヤンタイガー、そしてハートリー・ジャクソンの5名が、複数の国で開催されたプロレス・エキスポに参戦した選手として特筆されます。

なお、2006年に開催された「レッスルエキスポ」や、2010年に開催された「プロレス万博」とは関連がありません。

プロレス・エキスポは、世界平和という理念を掲げ、国境や団体の枠を超えた「大同団結」を志向し、アジアを中心に国際的なプロレス交流の場を創出したユニークなプロジェクトとして、その歴史に名を刻んでいます。

もう一度検索