ヘスペロサウルス

ヘスペロサウルス：ジュラ紀後期の剣竜

ヘスペロサウルスは、ジュラ紀後期キンメリッジ階（約1億5600万年前）に生息していた草食性の剣竜です。その化石は1985年以降、アメリカ合衆国のワイオミング州やモンタナ州で発見されています。

発見と命名

1985年、化石ハンターのパトリック・マクシェリーがワイオミング州で剣竜の化石を発見したのが始まりです。当初はステゴサウルスの一種と考えられていましたが、クリフォード・マイルズによる補修の過程で新種である可能性が浮上しました。

2001年、ケネス・カーペンターらによって Hesperosaurus mjosi として正式に記載されました。属名は「西のトカゲ」を意味し、アメリカ西部での発見に由来します。種小名は、発掘に貢献したロナルド・ミオスに献名されています。

ホロタイプ標本HMNH 001は、モリソン累層下部から発見されたほぼ完全な頭骨と多数の骨格で構成されており、2001年にはアメリカ最古の剣竜として報告されました。

他の標本

1995年以降、スイスの古生物学者ハンス・ヤコブ・シベルは、ハウ・スティーヴンス採石場で剣竜の標本を発掘しています。これらの標本は当初ステゴサウルスとされていましたが、後にヘスペロサウルスに再分類されました。特に「ビクトリア」と名付けられた標本は、皮膚と角質の鞘の印象が保存されており、貴重な資料となっています。

2015年には、モンタナ州の採石場で少なくとも5個体分のヘスペロサウルスの化石が集中して発見されるなど、新たな発見が続いています。

形態と特徴

ヘスペロサウルスは、全長6.5m、体重3.5tに達する大型の剣竜です。背中には2列の骨板が並び、尾には4本の棘がありました。骨板はステゴサウルスよりも低く前後に長いのが特徴です。頭骨はステゴサウルスに比べて短く高いと考えられています。

2008年の研究では、ヘスペロサウルスの固有派生形質として、胴椎が11個であること、第4仙椎が仙骨に融合していないこと、背中のプレートが上下の高さよりも前後の長さが大きいことが示されました。

分類

カーペンターは当初、ヘスペロサウルスを原始的なステゴサウルス類と考えていましたが、後の研究でステゴサウルスやウエルホサウルスと近縁な、より進化したステゴサウルス類であることが示唆されました。一部の研究者はヘスペロサウルスをステゴサウルス属に含めるべきだと主張していますが、カーペンターはヘスペロサウルスがステゴサウルスとは異なる独自の属であるという見解を維持しています。

皮骨と皮膚の印象

「ビクトリア」の標本に残された皮膚の印象から、ヘスペロサウルスの体表の一部が小さな六角形の鱗で覆われていたことがわかっています。また、背中のプレートには角質の鞘が存在していた可能性が示唆されており、この鞘がプレートを強化し、防御機能を高めていたと考えられています。

古生態学

2015年の研究では、ヘスペロサウルスの骨板に性的二形が存在する可能性が指摘されました。高いプレートを持つ個体と低いプレートを持つ個体がおり、低いプレートの方がディスプレイにおいて有利であったことから、オスが低いプレートを持っていたのではないかという説が提唱されています。

ヘスペロサウルスは、ジュラ紀後期の北米に生息していた大型の草食恐竜であり、その化石は剣竜類の進化や生態を研究する上で貴重な情報を提供しています。

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