ヘナタリ

ヘナタリ（Pirenella nipponica）

ヘナタリは学名をPirenella nipponica Ozawa & Reid in Reid & Ozawa, 2016と持つ、キバウミニナ科に属する巻貝です。
日本を中心とした東アジアの暖かい海域に位置する砂泥干潟で見られます。日本では特に房総半島から沖縄島まで広範囲に分布し、時には「ヘナタリガイ」とも呼ばれます。

分布

ヘナタリは日本の房総半島、石川県、沖縄島を含む地域に生息しており、その他にも韓国、台湾、中国の中部沿岸に見られます。タイプ産地は三重県松阪市の櫛田川河口です。かつてはヘナタリは広い範囲を占める単一種と考えられていましたが、分子系統解析により、その外見に似た複数の種が存在することが判明しました。特に日本には本州以南に分布するヘナタリの他に、ヤエヤマヘナタリやスエヒロヘナタリといったユニークな種も見つかっています。

形態

成人のヘナタリの殻高は約32.6mmで、塔状の堅い形状をしています。殻は円錐形に近く、各巻層はふくらまず、3本の螺肋やそれを隔てる黒っぽい螺溝が特徴です。最上層の螺肋は特に強く、周囲の螺溝も深く彫られているのが印象的です。殻の色は黄白色から橙色で、時に黒褐色の個体も見られます。日本のウミニナ類の中では、外見がほぼ円錐形であることと横しま模様が特徴的な点が識別のポイントです。ただし、若い個体ではその違いが不明確になる場合があります。

生態

ヘナタリは主に汽水域の干潟に生息しており、デトリタスを食べることで知られています。干潮時には干潟を這いまわり、食事をしながら、満潮時には砂泥の中に隠れます。産卵期は夏で、卵塊は泥の中に産み付けられ、幼生は孵化後しばらくプランクトンとして生活します。

分類

ヘナタリは、21世紀初頭まではフトヘナタリ属に分類されていましたが、後の研究で独立した属として認識されています。さらに、日本にはこの属の中に5種が分布し、様々な種類が確認されています。これらの種は、その形態や分布域によって分類され、いずれも独自の生態を持っています。

人間との関係

日本ではヘナタリの名は不明ですが、かつてその角質の蓋が香に利用され、「甲香」という漢字があてられていました。また、ヘナタリは地域によって漁獲され、食用になります。なお、本種は異形吸虫の中間宿主としても知られており、体内で成長して別の宿主である魚に寄生することがあります。

レッドリスト掲載状況

日本国内での生息状況は、環境省のレッドリストによって準絶滅危惧に指定されています。生息地の減少は、埋立や干拓、浚渫によって引き起こされています。

このように、ヘナタリはその独特な形態と生態に加え、地域の生態系の一部としても重要な役割を果たしている貝です。

もう一度検索