ヘラクレス (1958年の映画)

1958年にイタリアで制作された映画『ヘラクレス』（原題：Le fatiche di Ercole / Hercules）は、古代ギリシャの叙事詩、ロドスのアポローニオスによる『アルゴナウティカ』を基にした壮大な冒険アクション作品です。この映画は、当時無名だったスティーヴ・リーヴスを主演に迎え、イタリア製の歴史スペクタクル映画、いわゆる「ソード&サンダル」ジャンルの世界的ブームの火付け役となりました。その人気は本国に留まらず、アメリカでも大ヒットを記録し、続編『ヘラクレスの逆襲』も制作されています。

物語の舞台は、古代ギリシャのテッサリア地方にあるヨルコ王国。国王エリーネは弟ペリアとその大臣エユリトスの陰謀によって殺害され、ペリアが王位を簒奪します。正当な王位継承者である幼い息子ジャソーネも命を狙われますが、近衛隊長のキローネに助けられ、国外へ逃れます。

ペリアは武勇で知られるヘラクレスを新たな近衛隊長として招きます。ある日、ペリアの息子イフィトがライオンに殺されたことを、ペリアはヘラクレスの責任とし、償いとして牡牛との戦いを命じます。ヘラクレスはこの試練を乗り越えますが、瀕死のキローネと再会。キローネからペリアとエユリトスが前王を殺したこと、そしてジャソーネを王位に就けてほしいという願いを聞き、キローネは息絶えます。

キローネの遺志を継いだヘラクレスは、ジャソーネが王位を取り戻すための象徴である「金羊毛」を探す旅に出ます。これはかつてキローネが密かに隠し持っていたものです。幾多の困難を乗り越え、ヘラクレスは金羊毛を見つけ出し、ジャソーネの手に渡します。

しかし、エユリトスの策略により、ヘラクレスは投獄されてしまいます。ヘラクレスに心を寄せるペリアの娘ヨーレの手引きで脱獄したヘラクレスは、立ちはだかる敵を次々と打ち破り、エユリトスを討ち取ります。全てを悟ったペリアは、娘のヨーレに自らの罪を告白した後、毒杯を仰いで絶命します。こうして、ジャソーネは無事ヨルコ王国の王位に就き、英雄ヘラクレスとヨーレは結ばれ、物語はハッピーエンドを迎えます。

主要なキャストには、主演のヘラクレス役に元ボディビルダーのスティーヴ・リーヴス、ヒロインのヨーレ役にシルヴァ・コシナが起用されました。ジャソーネ役はファブリツィオ・ミオーニ、悪役のペリアにはイヴォ・ガラーニ、エユリトスにはアルトゥーロ・ドミニチです。日本でのテレビ放映時には、スティーヴ・リーヴスを小林修が吹替えています。

本作の成功は、特に主演のスティーヴ・リーヴスのキャリアに絶大な影響を与えました。監督ピエトロ・フランチーシに起用され、この映画の世界的大ヒットによって、アメリカでは無名だったリーヴスは一躍スターダムに駆け上がり、1950年代後半から1960年代にかけて、イタリア製史劇アクションを代表する大スターとなりました。

アメリカでは、ジョーゼフ・E・レヴィーンが配給権を獲得し、大規模な宣伝によって公開され、こちらも記録的なヒットとなりました。

さらに、この映画は後世のアクションスターたちにも影響を与えています。シルヴェスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ドウェイン・ジョンソンといった名だたる俳優たちが、幼少期に本作を鑑賞したことが、彼らがアクション映画の世界に進むきっかけの一つとなったと語られています。

『ヘラクレス』は、単なる娯楽作品に留まらず、特定のジャンルの世界的ブームを生み出し、一人の俳優をスターダムに押し上げ、そして次世代の映画人に影響を与えた、映画史において重要な位置を占める作品と言えるでしょう。

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