ヘルマンド州

ヘルマンド州：アフガニスタンの複雑な歴史と現状を反映する州

ヘルマンド州はアフガニスタン南部に位置する州であり、その広大な土地と複雑な歴史は、アフガニスタンを理解する上で重要な要素となっています。日本の東北地方の9割ほどの面積を誇り、人口は約87万9500人。人口密度は低く、広大な土地の多くは乾燥した地形です。

地理的特徴

ヘルマンド州の地形は、州の中央を南北に流れるヘルマンド川によって大きく特徴づけられています。アフガニスタン最長の河川であるヘルマンド川は、ヒンドゥークシュ山脈から流れ出し、カジャキダムで水を貯えた後、サンギーン郡へと流れていきます。マサカーラ川もサンギーン郡でヘルマンド川と合流し、さらに南下して州都ラシュカルガーを流れ、カンダハール州からのアルガンダーブ川と合流します。その後、ヘルマンド川はダシュティ・マルゴ砂漠とレギスタン砂漠の間を流れ、ガルムシール市を経て、西に蛇行しながらディシュー市へと注ぎ込みます。この川は、ヘルマンド州の農業と生活に欠かせない存在です。

歴史

ヘルマンド州の歴史は、冷戦時代から現代に至るまで、数々の出来事を経験してきました。1950年代頃には南部州の一部でしたが、その後分割され、ギリスフ州を経て現在のヘルマンド州となりました。州都は当初ボストでしたが、1970年代頃にラシュカルガーに移転されました。

冷戦期には、ヘルマンド渓谷開発計画が実行されました。アメリカやソ連の支援のもと、カジャキダムなどの建設が進められ、大規模な農地開発が計画されましたが、土壌の塩分濃度や遊牧民の定住への抵抗などにより、期待された成果は得られませんでした。

ソ連のアフガニスタン侵攻、そしてタリバン台頭、アメリカ同時多発テロ事件とアフガニスタン侵攻を経て、ヘルマンド州は激動の時代を迎えました。タリバンとの戦闘は激化し、国際治安支援部隊（ISAF）が展開するも、苦戦が続きました。イギリス軍、デンマーク軍、エストニア軍などがヘルマンド州を担当し、様々な作戦が実施されましたが、大きな犠牲を伴う結果となりました。

2000年代以降も、大統領選挙や議会選挙が実施されましたが、タリバンによる妨害や攻撃が絶えませんでした。アヘン生産の中心地として知られるヘルマンド州では、麻薬取引も大きな問題となっています。

2021年には、タリバンによる州都ラシュカルガーへの攻撃が激化し、激しい市街戦が繰り広げられました。多くの民間人が犠牲となり、アフガニスタン政府軍とタリバンとの間で激しい戦闘が続きました。

行政区分

ヘルマンド州は1つの市と13の郡から成り立っています。それぞれの郡には、異なる部族が居住し、複雑な社会構造が形成されています。

経済

ヘルマンド州の経済は、農業に大きく依存しています。家計収入の約7割を農業が占め、綿花、大麦、小麦などが主要な生産物です。長年にわたって世界最大の麻薬生産地域の一つであり、アヘン生産は経済に大きな影響を与えてきました。

住民

ヘルマンド州の住民は、主にパシュトゥーン人が構成しており、ドゥッラーニー部族連合に属する人々が多数を占めます。その他、少数民族としてコチやバローチ人もいます。主要言語はパシュトー語で、識字率は低くなっています。

軍事

ヘルマンド州には、Camp Shorabak、Camp Dwyer、Camp Leatherneckなど、かつて国際治安支援部隊やアメリカ軍などが使用していた軍事基地が複数存在しています。現在も、アフガニスタン国軍の基地として利用されています。

まとめ

ヘルマンド州は、地理的特徴、歴史的背景、複雑な民族構成、そして現在進行形の社会情勢が複雑に絡み合った地域です。農業と麻薬生産、そして長年にわたる紛争は、この州の現状を理解する上で重要な要素となっています。将来にわたって、ヘルマンド州の安定と発展のためには、持続可能な経済発展と、平和構築への努力が不可欠です。

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