カンダハール州

アフガニスタン南部に位置するカンダハール州は、約5万4845平方キロメートルの広大な面積を有し、日本の関東地方の約1.5倍の大きさに相当します。州都はカンダハール市です。人口は約115万人で、人口密度は1平方キロメートルあたり21人です。

地理

州の北部はヒンドゥークシュ山脈が連なり、中南部にはレギスタン砂漠が広がっています。山脈と砂漠の間には、アルガンダーブ川、タルナク川、ドリ川、アルギスタン川などが流れ、州都カンダハールの周辺に集まっています。州の大部分は平地であり、その割合は約8割を占めています。これらの地理的特徴が、カンダハール州の気候と生態系に影響を与えています。

歴史

冷戦終結後

1992年、カブールの共産党政権が崩壊した後、ムジャーヒディーンによる暫定政権が樹立されました。しかし、権力闘争が激化し、内戦状態に陥りました。1994年には、ターリバーンがカンダハール州に突如として現れ、勢力を拡大。一時的に撃退されたものの、後にムジャーヒディーンを破り、アフガニスタン南部や東部を支配下に置きました。

アメリカ同時多発テロ事件以降

2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件後、アメリカ合衆国はアフガニスタンに侵攻し、有志連合や北部同盟と共にターリバーンとの戦闘を開始しました。カンダハール州では、ライノー作戦を始めとする激しい戦闘が繰り広げられました。ターリバーンは一時的に撤退しましたが、その後反撃を開始し、連合軍との間で激しい戦闘が続きました。

第一回大統領選挙後

2004年10月、アフガニスタン初の民主的な大統領選挙が実施され、カンダハール州ではハーミド・カルザイが最多得票を得ました。しかし、汚職問題や麻薬取引の疑惑が蔓延し、ターリバーンの勢力拡大を招きました。国際治安支援部隊（ISAF）が治安維持活動を開始しましたが、ターリバーンはパキスタンからの武器供給を受け、ゲリラ戦術を展開しました。カナダ軍などがターリバーン掃討作戦を実施しましたが、治安は悪化の一途をたどり、州内の学校は閉鎖されました。2007年から2008年にかけて、戦闘はさらに激化し、ISAFや民間人に多数の犠牲者が出ました。

第二回大統領選挙後

2009年8月に行われた第二回大統領選挙でも、カンダハール州ではハーミド・カルザイが最多得票を得ましたが、治安情勢は依然として悪化していました。2010年には下院選挙と州議会選挙が行われましたが、戦争は激しさを増し、ISAFや民間人の死傷者が急増しました。2011年にはカンダハールの戦いが発生しました。

第三回大統領選挙後

2014年4月に行われた第三回大統領選挙では、ザルマイ・ラスールが州内で最多得票を得ました。しかし、ターリバーンの活動は収束せず、アメリカ軍による空爆も継続されるなど、依然として不安定な状態が続いています。

第四回大統領選挙後

2021年に入ると、ターリバーンはカンダハール州内での支配地域を拡大し、7月にはカンダハール市への攻撃を開始しました。市民は自宅に籠もる状態となり、刑務所が占拠されるなど、深刻な事態となりました。

行政区分

カンダハール州は、1市と17の郡で構成されています。

郡一覧

カンダハール（Kandahar）
アルガンダーブ（Arghandab）
ダマン（Daman）
パンジュワイ（Panjwayee）
ジレ（Zhire）
シャーワリコット（Shah Wali Kot）
カクレズ（Khakrez）
アルギスタン（Arghistan）
ゴラック（Ghorak）
マイワンド（Maiwand）
スピンボルダック（Spin Boldak）
ネッシュ（Nesh）
ミヤニシン（Miyanishin）
ショーラバク（Shorabak）
マルーフ（Maruf）
レグ（Reg）
ダンド（Dand）
タフタプル（Takhta pul）

政治

カンダハール州の政治状況は、常に不安定であり、ターリバーンと政府軍、国際連合軍との間で激しい戦闘が繰り返されてきました。

経済

農業

カンダハール州の主要産業は農業で、特にトウモロコシ、ザクロ、リンゴ、モモなどの生産が盛んです。農業収入は家計収入の約3割を占めています。グレープフルーツも比較的多く生産されています。これらの農産物は、州内だけでなく、アフガニスタン全体に供給されています。

住民

民族

カンダハール州の住民は、主にパシュトゥーン人で構成されています。特に、ドゥッラーニー部族連合（バーラクザイ族、ポーパルザイ族、アリーゴザイ族、ヌールザイ族、アリーザイ族）の中心地であり、砂漠地帯にはバローチ人も居住しています。また、パシュトゥーン系の遊牧民コチも存在します。

言語

主要言語はパシュトー語で、人口の98%が使用しています。その他、少数のダリー語話者やバローチー語話者もいます。識字率は7%と低い水準にあります。

主な出身者

ミールワイス・ホターク：ホータキー朝の創設者。
アブドゥッラフマーン・ハーン：バーラクザイ朝アフガニスタン王国の王。
ムハンマド・オマル：ターリバーンの最高指導者。
ハーミド・カルザイ：アフガニスタン・イスラム共和国の初代大統領。
アフタル・ムハンマド・マンスール：ターリバーンの最高指導者。
ハイバトゥラー・アクンザダ：現在のアフガニスタンにおける事実上の首長。

交通

カンダハール州は、パキスタンと国境を接しており、国境の町スピンボルダックは、パキスタンのクエッタへと続く重要な交通路となっています。パシュトゥーン人の中心地の一つとして、交通の要衝となっています。

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