ヘルメット (オートバイ)

オートバイ用ヘルメットの基礎知識

オートバイ用ヘルメットは、乗車中の転倒や事故からライダーの頭部を保護する重要な安全装備です。オートバイ事故における死因の多くが頭部外傷であるため、ヘルメットの着用は非常に重要です。その歴史、形状、規格、装着義務、安全テスト、製造メーカーなどについて詳しく解説します。

ヘルメットの起源

オートバイの普及初期にはヘルメット着用の習慣はありませんでしたが、トーマス・エドワード・ロレンスの事故死をきっかけに、外科医ヒュー・ケアンズがヘルメットの有効性を研究しました。この研究が、ヘルメット着用を義務化する動きへとつながり、世界各国で規格化が進められました。

ヘルメットの形状による分類

ヘルメットはその形状によって、保護範囲や特性が異なります。

1. ハーフ形
- 半球形で、気軽に被れる反面、保護範囲が狭く、特に側頭部への衝撃に弱い。
- 日本では125cc以下のオートバイ用規格で製造されています。
- 耳が露出するため、高速走行時の風切り音が大きい。

2. スリークォーターズ形
- ハーフ形より側頭部の保護範囲が広く、ハーフ形とオープンフェース形の中間。
- 業務用オートバイでの使用が多く、シールドを装着できるものもある。
- 日本では125cc以下のオートバイ用規格で製造されることが多い。

3. オープンフェース形
- ジェット形とも呼ばれ、側頭部と後頭部を広く覆うが、顔面は露出。
- ハーフ形、スリークォーターズ形に比べ安全性が高く、視野が広く開放感がある。
- シールドが装着できるものも多く、日本では全排気量のオートバイ用規格で製造されている。

4. フルフェース形
- インテグラル形とも呼ばれ、オープンフェース形にチンガード（顎の覆い）を追加。
- 顔面を含めた頭部全体を保護し、高速走行時の快適性も高い。
- ただし、頸部への負荷がかかりやすく、救命措置を妨げる可能性もある。
- 全排気量のオートバイ用規格で製造されており、エアバッグ内蔵モデルやHUD内蔵モデルも開発されている。

その他の特徴

ベンチレーションシステム: フルフェース形やオープンフェース形には、通気口が設けられているものが多く、走行中の快適性を向上。
オフロード向け改良: オフロード走行用に、チンガードが前方に伸びていたり、バイザーが付いているものが多い。フリップアップ形（システム形）と呼ばれる、フェイスガード部分が開閉可能なモデルや、チンガードが着脱可能なモデルも存在する。

ヘルメットの使用限度

ヘルメットは経年劣化するため、製造後一定期間で交換が必要です。また、一度でも強い衝撃を受けたヘルメットは、外見に損傷がなくても交換が必要です。日本では、SGマークの表示有効期間が使用開始後3年と定められています。

ヘルメットの装着義務

日本では、道路交通法により、オートバイ（原付含む）に乗る際はヘルメット着用が義務付けられています。違反すると点数が加算されます。

歴史: 1965年に努力義務化、1975年から罰則付きの義務化、1986年には全てのオートバイでの着用が義務化。
トライク: 内閣総理大臣が指定する三輪以上のものや特定二輪車に該当するトライクもヘルメット着用義務がある。

アメリカでは州によって義務の有無が異なり、ベトナムではヘルメット着用義務化によって事故が減少しました。

ヘルメットの規格

ヘルメットの安全性は、各種規格によって保証されています。

日本: JIS、SG、PSCなどの規格があり、SGとPSCはセットで付与され、この規格がないと日本国内で流通させることができません。サーキットでの競技用にはMFJ規格があります。
JIS規格: 125cc以下用（1種）と全排気量用（2種）に分かれます。2010年以降SG規格はJIS規格(T8133)を採用。
PSCマーク: 消費生活用製品安全法に基づき、技術基準に適合した製品に表示されます。
SGマーク: 製品安全協会の審査に合格した製品に表示され、対人賠償保険が付帯します。
法的基準: 道路交通法で定める基準を満たしていれば、規格に関わらず使用可能です。ただし、125cc以下限定のヘルメットは高速道路での走行を想定していないため危険性が高い。


海外: EUのECE R22-05、アメリカのDOT FMVSS 218など、各国で独自の規格があります。民間規格として、SNELL規格があります。スネル規格は、アメリカのスネル記念財団によるヘルメットの安全規格で厳格な試験基準を設けています。

モータースポーツ用ヘルメット

バイクレースでは、FIM（国際モーターサイクリズム連盟）が公認したヘルメットの装着が義務付けられています。

安全性テスト

ヘルメットの安全性を検証するため、さまざまなテストが行われます。

衝撃吸収テスト: ダミーヘッドにヘルメットを被せ、高さから落下させてダメージを検証。
耐貫通性テスト: ストライカーをヘルメットに落下させ、突起物への強度を検証。
顎紐の強度テスト: 顎紐の強度を測定。
ロールオフテスト: ヘルメットが脱げないか検証。
視野角、保護範囲テスト: 視野の確保と保護範囲を検証。
チンバーテスト: 顎部分の強度を検証。

ヘルメット製造販売業者

日本国内外の主要なヘルメットメーカーを紹介します。

日本: Arai、SHOEI、OGK Kabutoなど
日本国外: AGV、BELL、HJC、NOLAN、SHARKなど

かつて製造していたメーカー

過去にヘルメットを製造していたメーカーについても紹介します。

エバーオーク、カンゴール、クノー工業など

その他の情報

ヘルメットに関するさらに詳しい情報や、関連するトピックについては、以下のリンクや関連項目をご覧ください。

関連項目：ヘルメット、ヘルメット (自転車)、オートバイ用品、バイザー、フード
* 外部リンク：日本産業標準調査会：データベース-JISリスト T8133

安全なライディングのために、適切なヘルメットを選び、正しく着用しましょう。

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