ヘレン・レディ

ヘレン・レディ

ヘレン・レディ（Helen Reddy, 1941年10月25日 - 2020年9月29日）は、オーストラリアが生んだ国際的な歌手であり女優です。特に1970年代にアメリカ合衆国で大きな成功を収め、母国の音楽アーティストとして世界に名を馳せた先駆者の一人として知られています。彼女の代表曲「私は女」は全米チャートで首位を獲得し、これによりオーストラリア人として初めてグラミー賞を受賞するという歴史的な偉業を成し遂げました。この楽曲は単なるヒットに留まらず、当時の第二波フェミニズム運動の象徴となり、彼女自身も「フェミニストのポスターガール」あるいは「フェミニストのアイコン」として広く認識されるようになりました。

1960年代末に故郷オーストラリアからアメリカ・ロサンゼルスへと活動拠点を移したヘレン・レディは、1970年代に入るとその才能が開花し、世界的な成功を手にしました。特にアメリカ市場での活躍は目覚ましく、権威あるビルボードHot100チャートでは15曲をトップ40圏内に送り込み、そのうち6曲がトップ10入りを果たしました。そして、「私は女」に加え、「デルタの夜明け（Delta Dawn）」、「アンジー・ベイビー（Angie Baby）」の計3曲が全米ナンバーワンに輝きました。アダルトコンテンポラリーチャートにおいても、彼女は25曲をランクインさせ、15曲がトップ15入り、さらに8曲が6週連続で首位を維持するなど、安定した人気と実力を見せつけました。その功績は音楽賞でも高く評価され、1974年にはアメリカン・ミュージック・アワードで、史上初めてFavorite Pop / Rock Female Artist賞を受賞しました。同年には、3曲の全米トップヒットを持つ初のオーストラリア人アーティストともなっています。

音楽活動と並行して、ヘレン・レディはテレビの世界でも新たな道を開きました。アメリカの主要テレビネットワークで、毎週1時間のプライムタイム・バラエティ・ショーの司会を務めたことは、オーストラリア人として初の快挙であり、その番組は世界40カ国以上で放送され、彼女の知名度をさらに高めました。

国際的なキャリアの絶頂期を経て、ヘレン・レディは2002年に音楽活動から一度身を引きます。故郷オーストラリアに戻り、大学で学位を取得した後、臨床催眠療法士や動機づけのスピーカーとして新たなキャリアを追求しました。しかし、2011年に異父姉トニー・ラモンドの誕生日を祝う席で共に歌ったことを機に、再び音楽への情熱に火がつき、活動を再開しました。

晩年は健康上の問題を抱え、2015年には認知症と診断されたことを公表し、再び公の活動から距離を置くこととなりました。そして、2020年9月29日、ロサンゼルスにて78歳でその生涯を閉じました。訃報は彼女の家族によってフェイスブック上で公表されました。

私生活では、ヘレン・レディは生涯で三度結婚しています。最初の結婚は20歳で、年上のミュージシャン、ケネス・ウィートとの間には娘のTraciが生まれましたが、後に離婚。1968年にはプロデューサーのジェフ・ウォルドと再婚しました。ウォルドとの結婚に際して、彼女はユダヤ教に改宗しています。二人の間には息子のJordan（1972年生）が誕生し、ウォルドはレディのマネージャーとしても活動しましたが、1981年に離婚に至りました。1983年には自身のバンドのドラマーであったミルトン・ルースと三度目の結婚をしましたが、この結婚も1995年に終焉を迎えました。

ヘレン・レディは、その力強い歌声とメッセージ性のある楽曲、そして様々な分野での挑戦を通じて、多くの人々に影響を与えました。特に「私は女」が放ったメッセージは、女性たちのエンパワーメントに貢献し、彼女を時代を象徴するアイコンの一人として歴史に刻んでいます。

フィルモグラフィ

『エアポート'75』 (Airport 1975, 1974年)
『ピートとドラゴン』 (Pete's Dragon, 1977年)
『サージェント・ペッパー』 (Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band, 1978年)
『ファット・ボーイズの突撃ヘルパー』 (Disorderlies, 1987年)
『パーフェクト・ホスト 悪夢の晩餐会』 (The Perfect Host, 2010年)
Senior Entourage (2020年)

ディスコグラフィ

スタジオ・アルバム

『私はイエスがわからない』 (I Don't Know How to Love Him, 1971年)
『ヘレン・レディ』 (Helen Reddy, 1971年)
『アイ・アム・ウーマン』 (I Am Woman, 1972年)
『ロング・ハード・クライム』 (Long Hard Climb, 1973年)
『愛の歌集』 (Love Song for Jeffrey, 1974年)
『フリー・アンド・イージー』 (Free and Easy, 1974年)
『ブルーバード』 (No Way to Treat a Lady, 1975年)
『愛の調べ』 (Music, Music, 1976年)
『愛の囁き』 (Ear Candy, 1977年)
『太陽に歌って』 (We'll Sing in the Sunshine, 1978年)
『私はレディ』 (Reddy, 1979年)
『愛をこの手に』 (Take What You Find, 1980年)
『プレイ・ミー・アウト』 (Play Me Out, 1981年)
『イマジネーション』 (Imagination, 1983年)
『フィール・ソー・ヤング』 (Feel So Young, 1990年)
Center Stage (1998年)
The Best Christmas Ever (2000年)

ライブ・アルバム

『ヘレン・レディ・ライヴ!!』 (Live in London, 1978年)

日本公演

* 1975年：9月16日（フェスティバルホール）、9月19日（神奈川県立県民ホール）、9月22日 - 24日（中野サンプラザ）

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