ヘンリー・シン (1832-1904)

ヘンリー・フレデリック・シン卿：政治家と遺産相続を巡る策謀

ヘンリー・フレデリック・シン卿（Lord Henry Frederick Thynne, 1832年8月2日 - 1904年1月28日）は、19世紀イギリスの政治家です。保守党に所属し、バース侯爵家の次男として生まれました。彼の生涯は、政治家としての活動とともに、妻の実家であるサマセット公爵家の相続問題への介入によって彩られています。

生涯

第3代バース侯爵ヘンリー・シンとハリエット・ベアリングの次男として生まれたシン卿は、兄の跡を継いで政界に進出しました。1858年には、第12代サマセット公爵の娘であるアルリカ・シーモアと結婚しています。1859年には南ウィルトシャー選挙区から庶民院議員に初当選し、1885年までその議席を保持しました。また、1875年から1880年にかけては、第2次ディズレーリ内閣下で王室会計長官を務め、1876年には枢密顧問官に任命されています。しかし、その後は政界から身を引き、ウィルトシャー副統監などの閑職に就きました。1904年、71歳で生涯を終えています。

サマセット公爵家相続問題への介入

シン卿の名を有名にしたのは、サマセット公爵家の相続問題への介入です。当時、第12代サマセット公爵エドワード・シーモアには2人の息子がいましたが、既に亡くなっていました。長男エドワードには2人の庶子である幼い兄弟ハロルドとルースがおり、公爵は彼らに爵位を継承させることはできないものの、莫大な資産、特に公爵家の絵画コレクションを相続させることを決めていました。

1885年に公爵が亡くなると、議員を引退していたシン卿は妻アルリカと共に相続問題に介入しました。後見人という立場を利用し、幼い兄弟に与えられた絵画や財産を次々と売り払ったのです。さらに、兄弟の父エドワードの結婚証明書を処分し、兄弟が自身の出生を証明する手段を奪いました。これにより、後に第15代サマセット公爵の死去に伴い再び継承問題が発生した際、兄弟は継承権を立証することができず、悲劇的な結末を迎えることになりました。この一連の行為は、シン卿の権力乱用と倫理的な問題が強く批判されています。

家族

1858年6月1日、アルリカ・フレデリック・ジェーン・シーモアと結婚し、四男二女をもうけました。

トマス・ウルリック・シン（1861年生 - 没年未詳）：海軍軍人
ジョン・アレクサンダー・ロジャー・シン（1864年生 - 没年未詳）
ウルリック・オリヴァー・シン（1871年7月6日 - 1957年9月30日）：陸軍軍人
オリヴァー・サンモール・シン（1901年生 - 没年未詳）
アリス・レイチェル・シン（生年未詳 - 1938年没）
アリス・ルース・ハーマイオニー・シン（生年未詳 - 1948年没）

ヘンリー・フレデリック・シン卿は、政治家として一定の地位を築いた一方で、遺産相続を巡る強引な手法によって、その名に暗い影を落とした人物と言えるでしょう。

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