ヘンリー・シンジョン (初代ボリングブルック子爵)

初代ボリングブルック子爵 ヘンリー・シンジョン

初代ボリングブルック子爵ヘンリー・シンジョン（1678年9月16日 - 1751年12月12日）は、イギリスの貴族、政治家、そして作家として名を残しました。アン女王時代のトーリー党政権において、北部担当国務大臣や南部担当国務大臣といった要職を歴任しましたが、その生涯は政争に翻弄されるものでもありました。

生涯

政界入りまで

1678年、ヘンリー・シンジョンはシンジョン準男爵家の嫡男として生まれました。曽祖父には清教徒革命の政治家オリバー・シンジョンがいます。幼少期の経歴は必ずしも明確ではありませんが、イートン・カレッジやオックスフォード大学クライスト・チャーチで学んだという説があります。1698年から1699年にかけてはヨーロッパ各地を巡るグランドツアーを行い、フランス語を習得しました。1700年にはフランシス・ウィンチコムと結婚しています。

トーリー党政権での活躍

1701年、シンジョンは庶民院議員に選出され、トーリー党に所属しました。ロバート・ハーレー（後のオックスフォード伯）に接近し、ホイッグ党幹部の弾劾やジャコバイトへの反対姿勢を示しました。アン女王の即位後、彼は便宜的国教徒禁止法案を支持し、政争に加わります。1704年には戦時大臣に就任し、ハーレーと親密な関係を築きました。1710年にハーレーが政権を奪取すると、北部担当国務大臣として外交・内政を担当することになりました。

シンジョンはトーリー党の主張を取り入れ、ホイッグ党の排斥を企図しました。1711年には議員資格に関する法案や教会建設法案を成立させ、アン女王の信任を得て台頭しました。1712年にはスペイン継承戦争終結のため、フランスとの単独講和交渉を担当し、イギリス軍を大陸から撤退させました。同年、ボリングブルック子爵に叙爵され、貴族院へ移籍。1713年のユトレヒト条約成立に貢献し、トーリー党は絶頂期を迎えます。

しかし、オックスフォード伯との対立が激化し、アン女王の後継者を巡る意見の相違から党内分裂を招きました。シンジョンはジャコバイトの擁立を志向しましたが、実現には至りませんでした。

失脚とジャコバイト合流

1714年にアン女王が崩御し、ジョージ1世が即位すると、シンジョンは国務大臣を罷免されます。ホイッグ党が勢力を増し、彼への追及が強まると、フランスへ亡命。ジャコバイトの王「ジェームズ3世」の下に身を寄せ、「国務大臣」となりました。この行動は、ホイッグ党によるトーリー党への糾弾を強める結果となりました。その後、ジャコバイトの反乱は失敗に終わり、シンジョンはジェームズを見限り、本国からの恩赦を期待するようになります。

ウォルポール政権への野党活動

1723年に恩赦を受けて帰国。1725年には私権剥奪が取り消されましたが、議会への復帰は叶いませんでした。野党に属し、ウォルポール政権を攻撃する活動を行いました。1726年からは新聞『クラフツマン』を発行し、政権批判を展開。1734年の総選挙でホイッグ党に敗北し、政界を引退しました。

「愛国王の理念」

政界引退後、ボリングブルック子爵は『愛国心についての手紙』や『愛国王の理念』を著し、政党政治を批判。「人民の共同の父」として「美徳の政治」を行う「愛国王」による親政の必要性を訴えました。彼の思想は、後世の政治に大きな影響を与えました。

晩年と死去

晩年は故郷のバターシーで過ごし、1751年に73歳で死去しました。爵位は甥に引き継がれました。

人物

ボリングブルック子爵は、政党政治を否定し、「愛国王」による親政を唱えた思想家として知られています。彼の著作は、ジョージ3世の教育や大ピットの政治思想に影響を与えました。また、スクリブレルス・クラブの会員として、ジョナサン・スウィフトらと文学活動にも励みました。

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