ヘンリー・ハワード (初代ノーサンプトン伯)

初代ノーサンプトン伯ヘンリー・ハワードの生涯

初代ノーサンプトン伯ヘンリー・ハワード（1540年2月25日 - 1614年6月15日）は、イングランドの政治家、貴族です。ノーフォーク公ハワード家の分流に生まれ、カトリックの信仰を持っていましたが、ステュアート朝初期のジェームズ1世の宮廷で重要な地位を占めました。

生い立ちと初期の経歴

ヘンリー・ハワードは、1540年にサリー伯爵ヘンリー・ハワード（第3代ノーフォーク公トマス・ハワードの嫡男）とフランセス（第15代オックスフォード伯爵ジョン・ド・ヴィアーの娘）の次男として生まれました。兄には後に第4代ノーフォーク公となるトマス・ハワードがいましたが、彼は1572年に処刑され、爵位を剥奪されています。ヘンリーはケンブリッジ大学で学び、学識を深めました。

エリザベス1世時代

1570年頃からエリザベス1世の宮廷に仕えましたが、カトリックであったため、周囲からは警戒されていました。1583年には、監禁中の元スコットランド女王メアリーとの接触を疑われ、一時的に投獄されています。また、1601年には、パトロンであった第2代エセックス伯ロバート・デヴァルーのクーデター計画を密告したとも言われています。

ジェームズ1世の治世

1603年にジェームズ6世がジェームズ1世としてイングランド王に即位すると、ヘンリー・ハワードは重用されるようになります。同年に枢密顧問官に任命され、ウォルター・ローリーの裁判では審問委員を務めました。ローリーを失脚させたことで出世を遂げますが、この陰謀を劇作家ベン・ジョンソンが戯曲で仄めかしたとして、政府批判の罪で枢密院に召喚されるという出来事も起きています。1604年にはノーサンプトン伯爵に叙せられ、五港長官にも就任しました。

財政改革と晩年

1608年には王璽尚書に就任し、1612年に大蔵卿初代ソールズベリー伯ロバート・セシルが死去すると、大蔵卿のポストは委員会制となり、その第一卿として実質的な後任となりました。ヘンリーはロンドンの商人ライオネル・クランフィールドを抜擢し、財政改革に取り組みました。しかし、カトリックであったことから、国王秘書長官ラルフ・ウィンウッドや宮内長官ペンブルック伯ウィリアム・ハーバートら宮廷内のプロテスタント勢力との対立を深めました。1614年の議会が短期間で解散した背景には、この派閥抗争があったと言われています。かつてヘンリーを称賛していたフランシス・ベーコンも、彼が宮廷と議会の分裂を招いたと非難しました。さらに、1613年には、親族のサマセット伯夫人フランセスがトマス・オーヴァーベリーを殺害した事件に関与したとも言われています。

死去とその後

1614年6月15日にヘンリー・ハワードは死去しました。生涯結婚しなかったため、子供はおらず、彼の死とともに爵位は廃絶されました。彼の政治的な立場は甥の初代サフォーク伯トマス・ハワードに引き継がれましたが、サフォーク伯も最終的にはプロテスタント勢力の支持を受けたバッキンガム公ジョージ・ヴィリアーズとの闘争に敗れ、失脚することになりました。

栄典

ヘンリー・ハワードは、以下の爵位と勲章を授与されました。

1604年3月13日：初代ノーサンプトン伯爵、ドーセット州における初代マーンハル男爵
1605年：ガーター騎士団ナイト（KG）

人物評価

ヘンリー・ハワードは、学識豊かで雄弁な人物として知られていました。法務次官フランシス・ベーコンからは「この王国で最も学識のある顧問官」と称賛されるほどでした。しかし、その一方で、カトリックとしての立場や、権力闘争の中で見せた陰謀家としての側面も持ち合わせていました。彼の生涯は、当時のイングランド政治の複雑さと、宗教対立の激しさを物語っています。

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