ヘンリー・ブルース (初代アバーデア男爵)

初代アバーデア男爵ヘンリー・オースティン・ブルースの生涯と業績

初代アバーデア男爵ヘンリー・オースティン・ブルース（Henry Austin Bruce, 1st Baron Aberdare, 1815年4月16日 - 1895年2月25日）は、イギリスの政治家であり、ヴィクトリア朝時代の自由党政権下で重要な閣僚職を歴任した貴族です。彼の生涯は、弁護士から政治家へ、そして貴族へと変遷を遂げ、社会と経済に多大な貢献をしました。

生い立ちと初期のキャリア

1815年、ウェールズのグランモーガンシャー、アバーデアのダフリンで生まれたブルースは、地主の父ジョン・ブルースとサラ・オースティンの間に誕生しました。スウォンジーのグラマー・スクールで教育を受け、リンカーン法曹院で法律を学び、1837年に法廷弁護士の資格を取得しました。弁護士として活動を始めた頃、アバーデア谷一帯で石炭が発見され、彼の一族が所有する土地から莫大な富を得ることになります。約6年間弁護士として活動した後、1843年にその職を辞しました。

政界への進出

1847年から1852年まで、アバーデアの治安判事を務め、警察行政に携わりました。1852年には、マーサー・ティドビル選挙区から自由党所属の庶民院議員として選出され、政界への道を歩み始めます。1868年の解散総選挙で議席を失いますが、1869年にはレンフルーシャー選挙区から再び選出され、1873年に叙爵されるまでその議席を維持しました。

閣僚としての活躍

ブルースは、1862年11月から1864年4月にかけて第2次パーマストン子爵内閣で内務副大臣を務め、その後、1866年7月までパーマストン子爵内閣とラッセル伯爵内閣で教育委員会副委員長を務めました。1868年12月から1873年8月にかけては、第1次グラッドストン内閣に内務大臣として入閣し、1872年にはライセンス法制定を主導しました。この法律は、ライセンスに関する行政庁の設置、公共住宅に関する不正の罰則強化、飲み物販売時間の短縮などを盛り込んだものでした。

貴族院へ

1873年8月、グラッドストン首相の要請を受け、内務大臣を辞任し、枢密院議長に転任するとともに、アバーデア男爵の爵位を授与され、貴族院入りを果たしました。しかし、翌年の解散総選挙で自由党が敗北し、下野すると、彼の政治家としてのキャリアは事実上終わりを迎え、以降は社会問題や経済問題に関する質問に専念しました。

社会への貢献

政界を引退後も、ブルースは社会への貢献を続けました。1878年から1892年まで王立歴史協会会長を務め、1881年には王立地理協会会長にも就任しました。また、王立ニジェール会社の傘下に創設されたナショナル・アフリカン・カンパニーの社長として、死去までナイジェリア地域の事業に携わりました。この地域は、1899年にイギリス政府に保護領として併合されることになります。

死去と遺産

1895年2月25日、ロンドンで死去。爵位は長男のヘンリー・キャンベル・ブルースが継承しました。ヘンリー・オースティン・ブルースは、政治家として、また社会活動家として、多岐にわたる分野でその才能を発揮し、イギリス社会に大きな足跡を残しました。

栄典

1873年8月23日：初代アバーデア男爵（連合王国貴族爵位）
1885年1月7日：バス勲章ナイト・グランド・クロス（GCB）
1864年4月26日：枢密顧問官（PC）
1876年1月20日：王立協会フェロー（FRS）
* 1880年：名誉民事法学博士号（DCL）（オックスフォード大学名誉学位）

家族

1846年にアナベラ・バードンと結婚し、彼女との間に第2代アバーデア男爵位を継承する長男ヘンリー・キャンベル・ブルースを含む1男3女を儲けました。1852年にアナベラと死別し、1854年に陸軍軍人ウィリアム・フランシス・パトリック・ネイピア中将の娘ノラと再婚し、彼女との間に登山家となる三男チャールズ・グランヴィル・ブルースを含む2男7女を儲けました。

ヘンリー・オースティン・ブルースの生涯は、多岐にわたる分野での活躍を通じて、イギリス社会に深い影響を与えたことを示しています。彼の業績は、今日においても高く評価されています。

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