ベガ2号

ベガ2号：金星とハレー彗星探査の軌跡

ベガ2号は、ソ連が実施した野心的な宇宙探査計画「ベガ計画」の中核を担った探査機です。ベネラ計画で培われた技術を基に開発され、金星の大気と地表、そしてハレー彗星の観測という二つの主要なミッションを達成しました。

金星探査：大気圏突入機とバルーンによる探査

1985年6月15日、ベガ2号は金星の大気圏に突入しました。探査機は、大気圏突入機とバルーン探査機という二つの主要なコンポーネントから構成されていました。

大気圏突入機(ランダー): 直径2.4m、重さ1.5tの球状のランダーは、金星地表への着陸と地表調査を目的としていました。フランスとの共同開発による紫外線分光計、気温・気圧センサー、ガスクロマトグラフといった高度な科学機器を搭載し、金星地表の組成や大気の状況を詳細に分析しました。着陸地点はアフロディーテ大陸北部で、地表サンプルの分析から、その地域がこれまで探査された金星の中でも特に古い地質である可能性が示唆されました。ランダーは着陸後56分間に渡り、貴重なデータを地球に送信しました。

バルーン探査機: ランダーとは別に、ベガ2号はバルーン探査機も搭載していました。これは、金星大気中を浮遊しながら観測を行うことを目的としていました。パラシュートによって大気圏に投入されたバルーンは、高度約53kmに達し、金星の雲層の中間層を漂いながら、約7,400kmに及ぶ移動を行いました。バルーンは、高度、気温、気圧、風速などのデータを測定し、金星大気のダイナミクスを解明するための重要なデータを提供しました。バルーンは、約2日間活動した後、通信が途絶えました。

ハレー彗星探査：貴重な画像データの取得

金星探査後、ベガ2号はハレー彗星へと向かいました。1986年3月9日、ベガ2号はハレー彗星に最接近し、彗星の核から約8,030kmの距離まで近づきました。この接近により、彗星の核周辺のコマの様子を捉えた貴重な画像データが取得されました。ベガ1号と比較して、塵の影響が少なかったベガ2号は、より高解像度の画像を撮影することに成功しました。ただし、彗星接近に伴う機器へのダメージにより、探査機の出力は大幅に低下しました。

ベガ2号の功績とその後

ベガ2号は、金星の大気と地表、そしてハレー彗星の観測という、二つの非常に異なる天体に関する貴重なデータを取得しました。これらのデータは、金星やハレー彗星に関する科学的理解を飛躍的に進展させる上で重要な役割を果たしました。金星探査においては、ランダーによる地表サンプル分析やバルーンによる大気観測は、後の金星探査計画の礎となりました。また、ハレー彗星探査においては、彗星核の近距離観測は、人類が初めて行ったものであり、その成果は今もなお研究に利用されています。ベガ2号は、現在も太陽を周回する軌道上にあります。

ベガ計画は、ソ連の宇宙探査技術の高さを世界に示しただけでなく、惑星探査における新たな手法を開拓した、歴史的な偉業と言えるでしょう。

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