ベクター R4

ベクターR4：南アフリカが生んだアサルトライフル

ベクターR4は、南アフリカのリッテルトン・エンジニアリング・ワークス（LIW）が、イスラエルのIMIガリルをライセンス生産したアサルトライフルです。南アフリカ防衛軍の主力小銃として長年運用され、その信頼性と汎用性から多くの派生型が生まれました。

開発の背景

1970年代後半、南アフリカ防衛軍は、当時制式採用していたFN FALの後継となるアサルトライフルの導入を検討していました。しかし、国連安保理決議418号による対南アフリカ武器禁輸措置が強化されたため、西側諸国からの武器調達が困難になりました。そのような状況下で、南アフリカに協力の手を差し伸べたのがイスラエルでした。

当時、イスラエルと南アフリカは非常に友好的な関係を築いており、兵器の共同開発や技術供与が頻繁に行われていました。その一環として、イスラエル国防軍が採用していたガリルのライセンス生産が南アフリカに承認され、ベクターR4が誕生しました。1980年に採用され、1982年から配備が開始されました。

構造と特徴

ベクターR4の基本構造はガリルARMとほぼ同じですが、南アフリカ軍兵士の体格や運用状況に合わせて細部に改良が加えられています。

銃床: 南アフリカ人兵士の体格に合わせて延長され、素材が金属からポリマーに変更されました。
ハンドガード: 木製からポリマー製に変更され、前方に延長されています。形状も若干変更されています。
弾倉: ガリルの鉄製弾倉に対し、ポリマー製の弾倉が採用されました。R4用のポリマー製弾倉とガリル用の鉄製弾倉には互換性があります。

派生型

ベクターR4には、以下の派生型が存在します。

R5: 銃身を短縮化したカービンモデルで、ガリルSARに相当します。銃身とともにガスピストンも短縮化され、二脚（バイポッド）は廃止されています。ハンドガードもオリジナルのガリルSAR/ARに類似した形状となっています。主に海軍、空軍、統合医療部隊、警察などに配備されています。
R6: 1990年代に開発されたコンパクトモデル（PDW）で、ガリルMAR（マイクロ・ガリル）に相当します。ただし、ガリルMARよりも銃身が長く、レシーバー下部やハンドガード、フロントサイトなどはR5とほぼ同じ形状です。空挺部隊や戦車・装甲車の乗員向けに開発されました。
LM4、LM5、LM6: それぞれR4、R5、R6からフルオート連射機能を削除したセミオート専用モデルです。法執行機関や民間向け輸出用に開発されました。

各国の採用状況

ベクターR4は、採用以来南アフリカ国防軍と南アフリカ警察の主力アサルトライフルとして使用されています。後継のベクターCR21やツルベロラプターも開発されていますが、更新は遅れています。その他、ハイチ、ルワンダ、クロアチア、セルビアなどでも採用されています。

映画への登場

ベクターR4は、南アフリカを舞台としたアクション映画で頻繁に登場します。AK-47風に改造されたプロップガンも多く使用されています。

第9地区: MNUの部隊がR5、R6を使用。ナイジェリア人ギャングがAK風モデルを使用。
ホテル・ルワンダ: ルワンダ軍がR5とAK風モデルを使用。
マシンガン・プリーチャー: 主人公とゲリラがAK風モデルを使用。
セイヴィア: 主人公がR4をマークスマンライフル仕様に改造して使用。
* 沈黙の傭兵: 主人公とその仲間、フランス軍兵士、南アフリカ警察官がR5を使用。AK風モデルも登場。

ベクターR4は、南アフリカの軍事史を語る上で欠かせない存在であり、その多様な派生型と活躍の場は、今もなお広がり続けています。

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