ベネディクトゥス12世 (ローマ教皇)

ベネディクトゥス12世（1285年 - 1342年4月25日）は、アヴィニョン捕囚時代に在位したローマ教皇です。フランス出身で、本名はジャック・フルニエといいました。彼は、1334年から1342年まで教皇を務め、その厳格な性格で知られています。

生涯と業績

ベネディクトゥス12世は、教皇として教会内の不正や腐敗を厳しく取り締まりました。特に、賄賂などの悪習を禁じ、司教たちにはそれぞれの司教区に居住することを義務付けました。また、彼はアヴィニョン教皇庁宮殿の建設を開始し、教皇庁の権威を強化しようとしました。

しかし、ベネディクトゥス12世の治世は、政治的な対立によって困難を極めました。特に、前教皇ヨハネス22世から引き継いだ神聖ローマ皇帝ルートヴィヒ4世との対立は深刻でした。1338年、フランクフルト帝国議会において、ローマ王として選出された者は皇帝であり、教皇による戴冠は不要であると宣言されました。この決定は、教皇権の弱体化を意味し、後の1356年の金印勅書で文書化され、教皇の権威はさらに低下していくことになります。

また、前教皇ヨハネス22世によって異端として破門されたフランシスコ会士であり神学者であるオッカム（オッカムのウィリアム）に対しても、ベネディクトゥス12世は破門を維持しました。オッカムは『教皇ベネディクトゥス12世への反論』を著し、教皇の権威を批判しました。この出来事は、当時の教会内部の対立と権力闘争を象徴しています。

ベネディクトゥス12世は、1342年4月25日にアヴィニョンで死去しました。彼の治世は、教会の腐敗に対抗する厳格な姿勢と、神聖ローマ帝国との対立という二つの側面が特徴的でした。

関連事項

アヴィニョン捕囚：1309年から1376年まで、ローマ教皇庁がフランスのアヴィニョンに移されていた時代を指します。この期間、教皇はフランス王の影響下に置かれ、教皇権の弱体化を招きました。
アヴィニョン教皇庁：アヴィニョン捕囚時代に教皇庁が置かれた場所であり、その宮殿はベネディクトゥス12世によって建設が始まりました。現在、世界遺産に登録されています。
モンタイユー：フランス南西部の村で、その生活史が中世史研究の重要な資料となっています。ベネディクトゥス12世在位期に、異端審問の対象となった出来事が記録されており、当時の社会状況を知る上で貴重な情報源となっています。

参考文献

佐藤彰一、池上俊一『世界の歴史10 西ヨーロッパ世界の形成』中央公論社、1997年5月。
* 清水哲郎 著「オッカム」、小学館 編『日本大百科全書』小学館〈スーパーニッポニカProfessional　Win版〉、2004年2月。

ベネディクトゥス12世の生涯は、中世ヨーロッパの教会と政治の複雑な関係を示す一例であり、彼の時代は教皇権の変遷を理解する上で重要な時期でした。

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