ベヘール・デ・ラ・フロンテーラ

ベヘール・デ・ラ・フロンテーラは、スペイン南部アンダルシア州カディス県に位置する魅力的なムニシピオ（基礎自治体）です。イベリア半島とアフリカ大陸を隔てるジブラルタル海峡を一望できる小高い丘の上に築かれたこの町は、その戦略的な立地から、古来より様々な文化が交錯する歴史の舞台となってきました。

歴史

ベヘールの歴史は古く、新石器時代から人が定住し、青銅器時代には既に要塞が築かれていました。ローマ以前にはベサロと呼ばれ、現在も残る市壁の一部は紀元前7世紀にまで遡ります。ローマ時代にはバエシッポと名を変え、その名を歴史に刻みました。

711年、ターリク・イブン・ズィヤード率いるイスラム軍が西ゴート王ロドリーゴを破り、バエシッポ周辺を征服。その後、550年以上に及ぶイスラム支配の時代が続きます。この間、町はベシェルと呼ばれ、城の扉、市壁、通りに面した場所の格子窓など、イスラム文化の影響を色濃く残しました。

ベヘールは、キリスト教徒軍によって二度にわたり征服されています。一度目はカスティーリャ王フェルナンド3世時代の1250年。しかし、1264年6月にはアラブ人によって再征服されます。同年8月から始まった二度目の戦いは、1285年にキリスト教徒軍が勝利するまで長期にわたりました。戦いの後、ムデハルは町から追放されました。

1285年、サンチョ4世はベヘールを封土としてサンティアゴ騎士団に与えましたが、騎士団が実際にベヘールを領有することはなく、ベヘールはカスティーリャ王国に併合されました。

1307年、イスラム教徒が去った後のベヘールにキリスト教徒の植民が行われた後、アロンソ・ペレス・デ・グスマン（メディナ＝シドニア公家の先祖）がベヘール領主となりました。彼は1299年からタリファを征服後ジブラルタル海峡一帯の領主となっており、王の代理人及び領主として、海峡の防御を担っていました。この領土は、後にメディナ＝シドニア公家の世襲領地となります。

15世紀から16世紀にかけて、ベヘールはグスマン家を領主に迎えましたが、近代に入ると、メディナ＝シドニア公家に対抗したフアン・レリンケ・ア・ラ・カベサが自治体の支配権を掌握。メディナ＝シドニア公家が一帯に領有していた土地は、アサス・デ・スエルテと改名されました。

1976年には、スペインの歴史保護遺産に指定され、その貴重な歴史的価値が認められました。

経済

ベヘールは、肥沃な土地を活かした農業が盛んです。特にオリーブオイルの生産は、この地域の重要な産業となっています。また、その美しい街並みに惹かれて訪れる観光客も多く、住宅建設や商業の部門も成長を続けています。

行事

ベヘールでは、年間を通して様々な祭りやイベントが開催され、地域住民や観光客を楽しませています。

春祭り（Feria de Primavera）: 毎年4月に5日間開催される賑やかな祭り。見本市やアトラクションが設置され、様々なイベントが行われます。
聖週間（Semana Santa）: 受難週に行われる厳かな祝祭。聖水曜日、聖木曜日、聖金曜日には、それぞれ異なる同胞団がサエタ（フラメンコの一種）を歌いながら山車を担いで街を練り歩きます。
聖ヨハネの前夜祭: 毎年6月23日（聖ヨハネの日の前日）の夜に開催され、その年を代表する有名人の姿を模した人形を燃やします。人形は地域住民の手で作られ、最も良いものには賞が与えられます。また、トロ・デ・フエゴも行われます。
オリーブの聖母マリアの夕べ（Velada de Nuestra Señora de la Oliva）: 毎年8月10日に行われる祭り。守護聖人である聖母マリアの像を廟から出して礼拝行進を行います。像がしまわれる24日までの間は、縁日やイベントが開催され、多くの観光客が街を訪れます。

ベヘール・デ・ラ・フロンテーラは、その豊かな歴史、美しい街並み、そして活気あふれる祭りを通して、訪れる人々を魅了し続けています。

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