ベルナボ・ヴィスコンティ

ベルナボ・ヴィスコンティ（Bernabò Visconti, 1323年 - 1385年）は、14世紀のミラノを統治した僭主であり、その生涯は権力闘争と波乱に満ちています。彼はミラノ僭主ステーファノ・ヴィスコンティの三男として生まれ、兄たちと共にミラノの共同統治者となりました。

生涯

1349年、叔父の死後、兄のマッテーオ2世、ガレアッツォ2世と共にミラノの僭主となりました。ベルナボは、その統治において東部地域を担当し、兄弟と協力して政治を行いました。しかし、長兄マッテーオ2世の不適格さを理由に、1355年には次兄ガレアッツォ2世と共謀して毒殺し、その領土を分割しました。

ベルナボの支配は、神聖ローマ皇帝カール4世との対立によって特徴づけられます。1356年には皇帝の代理として侵攻してきたアクイレイア総大司教を捕虜にするなど、激しい戦いを繰り広げました。1360年には、教皇インノケンティウス6世から異端者として告発され、皇帝もこれに同調したため、ベルナボは教皇と皇帝の両方と敵対することになりました。

教皇との対立は、和睦と破門の繰り返しでした。ベルナボは教皇領を占拠し、和睦後もその約束を反故にしたため、再び破門されました。その後も教皇との間で戦争と和睦を繰り返しましたが、その強硬な姿勢は変わりませんでした。

さらに、マントヴァやフェラーラ、モデナといった周辺諸国との戦争も頻繁に行われました。1378年には、ヴェネツィアと同盟を結びジェノヴァを攻撃し、キオッジャ戦争を引き起こしました。しかし、戦況は思わしくなく、ベルナボは敗北を喫しました。

ベルナボは、トレッツォ橋を建設し、ペストの蔓延を防ぐなどの功績もありましたが、その専制的な統治と重税は領民の不満を高めていました。最終的に、1385年、娘婿でもある甥のジャン・ガレアッツォによって廃位され、トレッツォ・スッラッダの城に幽閉された後、毒殺されました。彼の最期は、ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』で暴君の典型例として描かれています。

死後、彼の騎馬像が制作され、最初はサン・ジョヴァンニ・イン・コルカ地下聖堂に置かれましたが、現在はスフォルツェスコ城にあります。

子女

ベルナボは1350年にレジーナ・デッラ・スカーラと結婚し、15人の子供をもうけました。さらに、複数の愛人との間に多くの子をもうけており、彼の子孫はヨーロッパ各地の貴族と結びついています。以下に、ベルナボの子女の一部を記します。

タデア：バイエルン公シュテファン3世と結婚
ヴェルデ：オーストリア公レオポルト3世と結婚
マルコ：パルマ領主、バイエルン公女エリーザベトと結婚
ルドヴィーコ：パルマ領主、ローディ代官、ヴィオランテ・ヴィスコンティと結婚
ヴァレンティーナ：キプロス王ピエール2世と結婚
ロドルフォ：パヴィーア領主
カルロ：パルマ領主、ベアトリス・ダルマニャックと結婚
アントーニア：ヴュルテンベルク伯エーバーハルト3世と結婚
カテリーナ：ミラノ公ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティと結婚
アニェーゼ：マントヴァ領主フランチェスコ1世・ゴンザーガと結婚
マッダレーナ：バイエルン公フリードリヒと結婚
ジャンマスティーノ：ベルガモ領主、クレオーフェ・デッラ・スカラと結婚
ルチア：第4代ケント伯爵エドマンド・ホランドと結婚
エリザベッタ：バイエルン公エルンストと結婚
* アングレシア：キプロス王ジャニュと結婚

庶子として、アンブロージョ、イゾッタ、エストーレ、サグラモーロ、ドニーナ、ベルナルダ、パラメーデ、ランチェロット、ジネヴラ、ソヴラーナ、リカルダ、ヴァレンティーナ、エンリカなどがいます。

ベルナボ・ヴィスコンティは、その生涯を通じて強大な権力を持ち、多くの戦争を繰り広げましたが、その一方で専制的な支配と重税により民衆の不満を招き、最終的には悲劇的な最期を迎えました。彼の生涯は、中世イタリアの権力闘争と、その中で生きる人々の運命を象徴するものです。

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