ベルナール・エイゼンシッツ

ベルナール・エイゼンシッツ：多才な映画人の軌跡

ベルナール・エイゼンシッツ（Bernard Eisenschitz, 1944年7月3日 - ）は、フランスを代表する映画批評家、映画史家であり、同時に映画雑誌の編集者、映画監督、そして俳優としても活躍する、まさに映画界の多才な人物です。彼は、映画雑誌『Cinéma』の編集長を務めたことや、ジャン＝リュック・ゴダール監督の作品に出演したことで広く知られています。

若き日の活動と俳優としてのキャリア

1944年、フランスのサルト県に生まれたエイゼンシッツは、20代前半にはすでに、ハンフリー・ボガートやダグラス・フェアバンクスといったアメリカ映画のスターに関する書籍を出版し、その映画への深い造詣を示していました。1971年には、ジャック・リヴェット監督の12時間半にも及ぶ大作『アウトワン』に、ポルノ作家役で出演し、俳優としてのキャリアをスタートさせます。その後も、ジャン・ユスターシュ監督の『ママと娼婦』（1973年）に出演するなど、数々の作品で印象的な演技を披露しました。

1974年には、短編映画『Printemps 58』で監督デビューも果たしています。この作品には、『ママと娼婦』で共演したイザベル・ヴェンガルテンや劇作家のアントワーヌ・ヴィテーズ、歌手のズーズーが出演しており、彼の多彩な人脈がうかがえます。

映画批評家、映画史家としての活動

1980年代以降は、映画批評家、映画史家としての活動も活発化させます。ジャン・ナルボニとの共著でエルンスト・ルビッチに関する書籍を出版したほか、ノエル・バーチが監督したダグラス・フェアバンクスに関するテレビドキュメンタリーの脚本協力も務めました。また、ヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン天使の詩』（1987年）やアモス・ギタイ監督の『ベルリン・エルサレム』（1989年）など、数々の映画に俳優としても出演しました。これらの出演は、単なるカメオ出演の域を超え、彼の存在感が際立っています。

特に、ジャン＝リュック・ゴダール監督からの信頼は厚く、『子どもたちはロシア風に遊ぶ』（1993年）や『JLG/自画像|JLG_自画像』（1995年）に出演しただけでなく、ゴダール監督の10年がかりの労作『ゴダールの映画史』の日本でのDVD化の際には、蓮實重彦、浅田彰らと共に「映画史翻訳集団2000」の一員として参加しました。このことからも、彼の映画史に対する深い知識と情熱がうかがえます。

映画雑誌『Cinéma』編集長としての功績

エイゼンシッツは、映画批評誌『Cinémathèque』の編集委員を18号まで務めた後、2001年10月1日に後継誌『シネマ』（Cinéma）を創刊し、編集長に就任しました。この雑誌は、映画史上のレアな傑作を収録したDVDを付録として付けるという画期的な試みを行い、特に2003年5月9日発売の「05」号では、溝口健二監督の1929年作品『東京行進曲』を収録したことで、世界中の映画ファンから大きな注目を集めました。この雑誌の創刊と編集長としての活動は、彼の映画に対する情熱と、映画文化への貢献を示すものと言えるでしょう。

著書と翻訳

エイゼンシッツは、映画に関する多くの著書も執筆しています。ニコラス・レイに関する著作や、ジョルジュ・サドゥールとの共著、エルンスト・ルビッチに関する著作など、その研究対象は多岐にわたります。また、ロッテ・アイスナーの『Fritz Lang』やクリストファー・プリーストの『Futur intérieur』など、他者の作品の翻訳も手がけており、その幅広い知識と関心がうかがえます。

まとめ

ベルナール・エイゼンシッツは、映画批評家、映画史家、雑誌編集者、映画監督、そして俳優として、フランス映画界に多大な貢献をしてきました。彼の映画に対する深い愛情と知識、そしてその多才な活動は、多くの映画ファンや映画人に影響を与え続けています。彼の今後の活躍にも目が離せません。

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