東京行進曲

東京行進曲

『東京行進曲』（とうきょうこうしんきょく）は、著名な作家である菊池寛の小説に基づいた作品であり、映画や主題歌としても知られています。この作品は、1929年に無声映画として公開され、監督は名匠・溝口健二が務めました。また、同名の小説は大衆雑誌『キング』に連載されており、その連載期間は1928年6月号から1929年10月号まででした。

小説の内容

小説は、裕福な資産家とその腹違いの姉妹との悲恋をテーマにしています。物語は切ない愛の物語であり、完結前に映画化されたことがポイントです。映画の影響を受けて、原作のラストは後に映画主題歌に関しても強く影響されました。実際に、同作品の完結直後の1929年12月には、帝劇で戯曲としても上演されています。映画版と原作は内容的には一貫性がありますが、映画では歌が最後に歌われるなど、主題歌が強く関連しています。

「行進曲」という用語は本来マーチに関連しますが、1928年初頭に神戸や京都、大阪で松竹座の幕間劇として上演された「道頓堀行進曲」とその主題歌が流行の兆しを見せ、その結果多くのメディアや文化に浸透しました。これによって「行進曲」という言葉が広く使われるようになり、社会における新たな流行語ともなりました。

映画化の経緯

映画『東京行進曲』は日活によって製作され、1929年5月31日に公開されました。しかし、原作の完結前に映画化されたため、結末は映画独自のものとなりました。撮影中には主役の役者や脚本家に病気が発生するなどトラブルが続き、当初の予定から変更を余儀なくされた結果、サイレント映画として公開されました。この映画は階級間の対立が強調されるなど、原作から逸脱した部分もあるため、興業的にはあまり成功しませんでした。

映画の初めでは、レコードを流しながら東京の街並みが映され、歌詞が表示される演出がされました。映画のオリジナル版は101分ですが、現存する映像は30分余りしかありません。現在の映像はフランスのシネマテーク・フランセーズにも保存されています。

キャストとスタッフ

映画のキャストには、夏川静江、入江たか子、小杉勇、滝花久子など、多くの名優が参加しました。監督は溝口健二、脚本は木村千疋男が担当しています。また、映画の主題歌は作詞を西條八十、作曲を中山晋平が手掛け、歌は佐藤千夜子が担当しました。この楽曲は、日本初の映画主題歌として高く評価されており、公開1か月前にリリースされて25万枚以上の売り上げを記録するヒットとなりました。

主題歌の影響

主題歌『東京行進曲』は、流行の面でも注目され、詞の中には当時の若者の生活や文化が色濃く反映されています。ただし、歌詞の内容は原作とはあまり結びついておらず、西條自身はこの曲を「都市生活のジャズ的な諷刺」と捉えていました。特に、歌詞中の「いっそ小田急で逃げましょか」という部分は、当時の流行語につながります。この歌詞が引き起こした事象により、小田急電鉄からの抗議を受ける場面もあり、最終的には歌詞がそのまま使用されるに至りました。

映画と音楽の相互作用

1929年にはレコードを基にした映画『東京行進曲』も製作されており、これは今のミュージックビデオに近いスタイルで制作されました。今日では、映画と音楽が相互に影響し合う文化の一端を成していることが確認されています。このように、『東京行進曲』は文学、映像、音楽が一体となった、非常に多面的な文化的作品であると言えるでしょう。

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