ベルナール・トゥブラン＝ミシェル

ベルナール・トゥブラン＝ミシェル：ヌーヴェルヴァーグを支え、イザベル・アジャーニを発掘した映画監督

ベルナール・トゥブラン＝ミシェル（1927年12月6日-2023年9月22日）は、フランスを代表する映画監督の一人です。1927年、フランスのロワール＝アトランティック県アンスニに生まれました。彼は、数々のヌーヴェルヴァーグ作品で助監督を務めた経験を持ち、その後の自身の監督作品や女優イザベル・アジャーニの発掘などを通じて、フランス映画史に重要な足跡を残しました。

ヌーヴェルヴァーグとの関わり：助監督から商業デビューへ

トゥブラン＝ミシェルのキャリアは、1955年の短編映画『Âmes d'argile』の監督デビューから始まりました。その後、彼はアンドレ・ユヌベルやジョルジュ・ルーキエといったベテラン監督のもとで助監督として研鑽を積みます。特にルーキエ監督の『S.O.S. Noronha』では、後にヌーヴェルヴァーグを代表する監督となるジャック・ドゥミと、同じ助監督チームに所属していました。

この経験を通じて、トゥブラン＝ミシェルは『カイエ・デュ・シネマ』を中心としたヌーヴェルヴァーグの重要な人物たちと交流を深めます。ジャック・ドゥミの長篇デビュー作『ローラ』、アニエス・ヴァルダの『5時から7時までのクレオ』、そしてジャン＝リュック・ゴダールの『女と男のいる舗道』など、ヌーヴェルヴァーグを代表する作品の数々で助監督を務め、現場を支えました。

1964年、ゴダールを世に送り出したプロデューサー、ジョルジュ・ド・ボールガールが製作したオムニバス映画『キス! キス! キッス!』で、トゥブラン＝ミシェルは商業監督としてデビューを果たします。この作品には、ベルトラン・タヴェルニエ、ジャン＝フランソワ・オーデュロイ、シャルル・L・ビッチ、クロード・ベリといった、後のフランス映画界を彩る監督たちが参加していました。同年に発表した長編映画『La Difficulté d'être infidèle』はベルリン国際映画祭に出品され、金獅子賞にノミネートされるなど、高い評価を得ました。

その後も、ジャック・バラティエとの共同監督作品『L'Or du duc（公爵の黄金）』や、ゴダールの『男性・女性』の助監督を務めるなど、精力的に活動しました。ゴダール作品では、ヌーヴェルヴァーグ独特の自由なスタイルと、独自の視点を取り入れることに貢献しました。

イザベル・アジャーニの発掘と、続くキャリア

1970年の作品『小さな木炭商』では、当時15歳だった全くの新人女優、イザベル・アジャーニを抜擢しました。この作品がアジャーニの女優としてのキャリアの出発点となり、その後彼女はフランスを代表する女優へと成長します。トゥブラン＝ミシェルは、才能ある若手女優を発掘する慧眼を持っていたと言えるでしょう。

その後も、トゥブラン＝ミシェルは劇場用長編映画やテレビ映画を制作し続けました。スリラー映画『Le malin plaisir』はロングランヒットを記録するなど、幅広いジャンルで作品を発表し続けました。1970年代後半から1990年代初頭にかけては、主にテレビ映画の分野で活躍しました。

ヌーヴェルヴァーグの生き証人

日本では商業公開された作品は少ないですが、トゥブラン＝ミシェルは、ヌーヴェルヴァーグを支えた重要な人物の一人です。多くの巨匠たちの作品に携わり、自身の監督作品でも独自のスタイルを確立しました。イザベル・アジャーニの発掘という功績も高く評価されています。2023年9月22日、95歳で亡くなりましたが、彼の功績はフランス映画史に刻み込まれるでしょう。彼の作品は、現代の映画製作にも大きな影響を与え続けています。彼の業績は、今後のフランス映画研究においても重要なテーマとなるでしょう。

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