ジャック・ドゥミ

ジャック・ドゥミ：恋と哀しみの詩人、ヌーヴェルヴァーグのミュージカル革命家

ジャック・ドゥミ(1931年6月5日 - 1990年10月27日)は、20世紀を代表するフランスの映画監督、脚本家です。ヌーヴェルヴァーグの左岸派に属し、その独特のスタイルと才能で世界中の映画ファンを魅了しました。彼の妻は、同じくヌーヴェルヴァーグを代表する映画監督であるアニエス・ヴァルダであり、息子は俳優のマチュー・ドゥミです。

映画監督としてのキャリア

ドゥミはアニメーターや映画監督の助手としてキャリアをスタートさせました。1961年、映画『ローラ』で監督デビューを果たします。この作品は「ヌーヴェルヴァーグの真珠」と称賛され、彼の才能を世に知らしめました。純粋で、お伽話のような恋の歓びと哀しみを表現した『ローラ』は、時代錯誤ともいえる単純なテーマを貫くために、ミュージカルという当時としては革新的な手法を用いたことで注目を集めました。

その後、1964年に発表したカトリーヌ・ドヌーヴ主演のミュージカル映画『シェルブールの雨傘』は、彼の名を世界に轟かせました。本作は第17回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。ミシェル・ルグランとのコラボレーションによって生み出された音楽は、それまでのミュージカル映画に新たな地平を切り開き、世界中の音楽ファンを虜にしました。

『ローラ』の音楽は当初、クインシー・ジョーンズが担当予定でしたが、スケジュールの都合で辞退。その後、フランソワ・レイシャンバックの勧めでミシェル・ルグランに白羽の矢が立ちます。ルグランは当初乗り気ではありませんでしたが、アニエス・ヴァルダの説得によって参加を決意しました。ルグランとのコンビは、『シェルブールの雨傘』の成功を皮切りに、『ロシュフォールの恋人たち』『ロバと王女』『モン・パリ』『ベルサイユのばら』といった傑作を次々と生み出しました。しかし、『都会の一部屋』では、ルグランが主題曲を気に入らなかったことから、二人は一時的に疎遠になります。

私生活と晩年

ドゥミはバイセクシュアルであり、1980年代には妻のヴァルダと離れて生活していた時期もありましたが、1988年頃から再び同居を始めました。しかし、1990年、エイズにより49歳でこの世を去りました。モンパルナス墓地に埋葬されています。

作品とその後

ドゥミの作品は、彼の死後も世界中で愛され続けています。2004年には、『ロバと王女』が妻と息子の手によってリバイバル上映されました。2009年には、『シェルブールの雨傘』と『ロシュフォールの恋人たち』のデジタルリマスター版が日本で世界初上映され、新たな世代の映画ファンを魅了しました。

主な監督作品

ローラ (1961)
新・七つの大罪 より 「淫乱の罪」 (1962)
天使の入り江 (1963)
シェルブールの雨傘 (1964) - 第17回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞
ロシュフォールの恋人たち (1967)
モデル・ショップ (1968)
ロバと王女 (1970)
ハメルンの笛吹き (1971)
モン・パリ (1973)
ベルサイユのばら (1978) - 池田理代子の漫画作品が原作
都会の一部屋 (1982)
パーキング (1985)
* 想い出のマルセイユ (1988)

ジャック・ドゥミは、独自の視点と比類なき才能で、映画史に燦然と輝く足跡を残しました。彼の作品は、時代を超えて多くの人々の心を捉え続け、これからも世界中で愛され続けることでしょう。

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