ベルモントの戦い

ベルモントの戦い：南北戦争初期の試金石

ベルモントの戦いは、1861年11月7日にミズーリ州ミシシッピ郡で勃発した、南北戦争初期の戦闘です。北軍の准将であり、後に大統領となるユリシーズ・グラントにとって、西部戦線における最初の重要な戦闘経験となりました。

背景

開戦当初、重要な境界州であったケンタッキー州は、南軍寄りの知事と北軍寄りの議会という複雑な状況にあり、中立を宣言していました。しかし、南軍のレオニダス・ポーク少将が1861年9月3日にケンタッキー州コロンバスを占領したことで、この中立は崩れました。その2日後、北軍のユリシーズ・グラント准将もパデューカを占領しました。

グラントは南東ミズーリ地区軍を指揮していましたが、コロンバス攻撃の許可を得られず、その後の2ヶ月間は南軍に対する限定的な牽制行動に終始しました。11月1日、フレモントは南軍がアーカンソー州で部隊を増強しようとしていることを知り、グラントにコロンバスへの牽制を命じました。グラントはリチャード・オグルスビー大佐に約3,000名の部隊を与えて南東ミズーリ州に派遣し、同時にチャールズ・F・スミス准将にパデューカから南西ケンタッキーに進軍させ、南軍を引きつけるよう指示しました。グラントは、コロンバスの対岸にある小集落ベルモントへの攻撃を決断しました。

グラントの遠征隊は、3,114名の兵士で構成され、ジョン・A・マクラーナンド准将とヘンリー・ドウアティ大佐の2個旅団、2個騎兵中隊、1個砲兵大隊から成っていました。11月6日、砲艦USSタイラーとUSSレキシントンに護衛され、カイロから輸送艦で出発しました。

一方、南軍のポーク少将はコロンバスに約5,000名の部隊を持っていました。ポークはグラントのカイロからの出発を察知し、コロンバスが主目標であり、ベルモントは牽制に過ぎないと判断しました。そこで、ギデオン・J・ピロー准将に2,700名を付けてベルモントに送り、残りの部隊でコロンバスを守備しました。

ベルモントには、小さな南軍の観測キャンプと砲台がありました。グラントは南軍がスターリング・プライス少将またはM・ジェフ・トンプソン准将を支援することを防ぎ、オグルズビー隊の左側面を保護するため、攻撃を決意しました。

戦闘の経過

11月7日午前8時半、グラント軍はベルモントの北3マイル（5km）にあるハンター農園で下船しました。コロンバスの南軍砲台から射程外の場所でした。グラント軍は南に進軍し、倒木でできた障害物を除去しながら進みました。町から1マイル（1.6km）離れたトウモロコシ畑で戦闘隊形を整えました。一方、南軍はベルモント北西の低い尾根に陣を敷きました。

グラント軍の攻撃によって、南軍の散兵線は後退し、その後は両軍とも経験の浅い兵士による前進と後退が繰り返されました。午後2時までにピローの前線が崩壊し始め、南軍はキャンプ・ジョンストン方向に後退しました。この後退はパニックに変わり、北軍の砲撃が南軍兵を襲いました。北軍兵は3方向から攻撃を仕掛け、キャンプに突入しました。敗れた南軍兵は、連隊旗や銃を捨てて川に殺到し、逃げようとしました。グラントは常に前線で指揮を執り、馬が撃たれても副官の馬に乗り換えて指揮を続けました。

グラントの兵士たちは、勝利の喜びで士気を喪失しました。捕虜やキャンプを占領したことで、お祭り騒ぎのような雰囲気が部隊を支配しました。混乱を鎮めるため、グラントはキャンプに火を放つよう命じました。この混乱の中で、負傷した南軍兵の一部が焼死した可能性があり、それが戻ってきた南軍兵に捕虜が意図的に殺されたと思わせる原因となりました。

北軍が捕獲した大砲2門と106名の捕虜を連れて輸送艦に戻り始めたとき、南軍の援軍がグラントの退却路に現れました。この援軍は、第15テネシー歩兵連隊と第11ルイジアナ歩兵連隊に、ピローとベンジャミン・F・チーザム大佐が指揮する混成歩兵隊でした。北軍兵が南軍の援軍に反転すると、コロンバスから「レディ・ポーク」の砲弾が飛来し、他の南軍砲も砲火を浴びせました。北軍の砲艦が南軍砲台と交戦しました。グラントは冷静に、「入り口を開いたように、出口も開かねばならない」と言いました。

北軍が上陸地点に戻ると、1個連隊が行方不明になっていました。グラントは馬で捜しに戻りましたが、彼の方向に進んでくるのは南軍兵の集団だけでした。グラントは馬を返し、川に急ぎました。しかし、川舟の船長たちは既に舫い綱を外すよう指示していました。

戦闘の後

南軍はベルモントの戦いを勝利と主張しましたが、実際には決着が付かず、引き分けに終わりました。グラントは牽制行動を行いましたが、撃退されました。北軍の損失は607名、南軍の損失は641名でした。この戦闘の最も重要な結果は、グラントに大部隊を指揮する戦闘経験を与えたことでした。エイブラハム・リンカーン大統領は、グラントに対して良い印象を抱きました。

イリノイ州シカゴのベルモント・アベニューは、この戦闘にちなんで名付けられました。

この戦いは規模こそ小さかったものの、当時の新聞で大きく報道され、戦況が膠着していた時期に、国民の関心を集めました。

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