ベルント・アロイス・ツィンマーマン
ベルント・アロイス・ツィンマーマン（1918年3月20日 - 1970年8月10日）は、ドイツの現代音楽作曲家として知られています。
ケルン近郊のブリースハイムで生まれたツィンマーマンは、ケルン音楽大学とケルン大学で音楽を学びました。第二次世界大戦による中断を挟みながらも、ダルムシュタット夏季現代音楽講習会に参加し、ルネ・レイボヴィッツからセリー（音列）音楽の影響を受けました。1956年にはISCM（国際現代音楽協会）ドイツ支部の代表に就任し、1957年には母校であるケルン音楽大学で作曲科の教授として、フランク・マルタンの後任を務めました。教え子には篠原眞やヨハネス・フリッチェなどがおり、後年のカールハインツ・シュトックハウゼン体制への橋渡し役も担いました。しかし、晩年には自身の音楽が理解されないことに苦悩し、1970年にピストル自殺という悲劇的な最期を遂げました。
ツィンマーマンの初期の作品は、「弦楽オーケストラのための協奏曲」、「ピアノトリオ」、「無伴奏ヴィオラソナタ」、「一楽章の交響曲」など、新古典主義的な様式が特徴的でした。しかし、1950年代に入ると、彼は前衛世代と対峙し、「遠近法 - 想像上のバレエのための音楽」や「コンフィグラツィオーネン」などでセリー的な書法を取り入れました。ただし、彼の音楽における最大の関心は、常に「時間」の多様な表現にありました。
「無伴奏チェロソナタ」は、単一のセリーによって全曲が構成されており、高度な演奏技術を要求される作品です。1965年に作曲されたオペラ「兵士たち」は、前衛音楽の時代における傑作として高く評価されており、極めて難解な内容の中に、等拍パルスが用いられるなど、先駆的な楽器法が際立っています。同時期には、前年の2台のピアノのための「モノローグ」の編曲版である2台のピアノのための協奏曲「ディアローグ」も作曲されましたが、この頃には彼の音楽の巨大性と複雑性が極限まで高まっていました。
しかし、シュトックハウゼンの提唱する「正しい軌道」という思考に反発したツィンマーマンは、1966年の「ユビュ王晩餐の音楽」において、全曲を「引用」によって構成し、シュトックハウゼンの音楽を引用した上で、罵倒する文句を重ねるなど、前衛音楽の姿勢に対して挑発的な態度を示しました。もっとも、前衛的なイディオムを身にまといながらの批判は、当然ながら様式上の矛盾を抱えることとなり、「モノローグ」、「ディアローグ」、「アンティフォネン」、「パ・ド・トロワの様式による協奏曲」などの作品には、苦悩の影が見え隠れし、音楽はより難解なものへと変化していきました。彼の引用技法は、後年の作品の隅々にまで徹底されています。
1967年の「インテルコムニカツィオーネ」や1968年の「フォトプトーシス」では、静止した持続音がD音に頻繁に現れるようになり、「静止主義」的な様相を強く帯びるようになりました。1969年の「若い詩人のためのレクイエム」で創作活動の集大成を迎え、1970年には「伝道行為」と「静止と反転」の2作品を完成させました。ツィンマーマンの創作態度は、どの派閥にも属さない、孤立したものでした。
前衛的なイディオムと過去の音楽文化を折衷したツィンマーマン独自の様式は、1920年代から1930年代生まれの作曲家たちから嘲笑の対象となり、彼を苦しめる原因となりました。しかし、1970年代に入ると前衛音楽の停滞が叫ばれ、作曲における進歩が疑われるようになると、多様式主義を掲げる作曲家たちが現れました。皮肉なことに、ツィンマーマンは死後に再評価されるようになったのです。演奏が非常に困難であるため、信頼に足る音源も少なく、CDによって彼の作風の全容が理解されるようになったのは、1990年代に入ってからのことです。
傑作であると同時に、難解で複雑な音楽の代名詞とも評されるオペラ「兵士たち」は、2008年5月10日に新国立劇場において、ウィリー・デッカーの演出、若杉弘の指揮、東京フィルハーモニー交響楽団によって日本初演されました。
1942–1946: Fünf Lieder für mittlere Singstimme und Klavier
1946: Extemporale für Klavier
1946: Capriccio für Klavier
1947: Lob der Torheit für Soli, Chor und großes Orchester
1949: Enchiridion I für Klavier
1950: Sonate für Violine und Klavier
1950: Konzert für Violine und Orchester
1950: Rheinische Kirmestänze (1962 für 13 Bläser gesetzt)
1950: Märchen-Suite
1951: Enchiridion II für Klavier
1951: Sonate für Violine solo
1951: Sinfonie in einem Satz (Neufassung 1953)
1952: Konzert für Oboe und kleines Orchester
1954: Metamophose. Musik zum gleichnamigen Film von Michael Wolgensinger für kleines Orchester
1954: Nobody knows de trouble I see – Konzert für Trompete und Orchester
1955: Sonate für Bratsche solo
1955: Alagoana, Caprichos Brasileiros – Ballett
1956: Konfigurationen
1956: Perspektiven – Musik für ein imaginäres Ballet
1957: Canto di speranza
1957: Die fromme Helene
1957: Omnia tempus habent
1958: Impromptu
1960: Dialoge – Konzert für zwei Klaviere und großes Orchester
1960: Sonate für Cello solo
1961: Présence, ballet blanc
1961: Antiphonen
1962: Cinque Capricci di Girolamo Frescobaldi „La Frescobalda“ für Orchester
1962: Giostra Genovese. Alte Tänze verschiedener Meister für kleines Orchester
1962: Vokalsinfonie aus Die Soldaten für sechs Gesangssolisten (Koloratursopran, Mezzosopran, Alt, zwei Tenöre, Bass) und Orchester, UA: 20. Mai 1963
1963: Tempus Loquendi
1964: Monologe
1965: Die Soldaten – Oper, UA: 15. Februar 1965
1966: Musique pour les soupers du Roi Ubu – Ballett noir (1968 als Konzertstück überarbeitet)
1966: Konzert für Violoncello und Orchester en forme de pas de trois
1967: Intercomunicazione
1967: Tratto
1968: Photoptosis
1969: Requiem für einen jungen Dichter – Lingual
1970: Stille und Umkehr
1970: Tratto 2
1970: Vier kurze Studien
1970: Ich wandte mich und sah an alles Unrecht, das geschah unter der Sonne – Ekklesiastische Aktion
Ulrich Tadday (Hrsg.): Musik-Konzepte Sonderband Bernd Alois Zimmermann. München 2005.
Bettina Zimmermann: con tutta forza. Bernd Alois Zimmermann. Ein persönliches Portrait. Dokumente, Briefe, Fotos, Zeitzeugen. Hofheim 2018, ISBN 978-3-95593-078-3
Bernd-Alois-Zimmermann-Gesellschaft e. V. (BAZG)
生涯
ケルン近郊のブリースハイムで生まれたツィンマーマンは、ケルン音楽大学とケルン大学で音楽を学びました。第二次世界大戦による中断を挟みながらも、ダルムシュタット夏季現代音楽講習会に参加し、ルネ・レイボヴィッツからセリー（音列）音楽の影響を受けました。1956年にはISCM（国際現代音楽協会）ドイツ支部の代表に就任し、1957年には母校であるケルン音楽大学で作曲科の教授として、フランク・マルタンの後任を務めました。教え子には篠原眞やヨハネス・フリッチェなどがおり、後年のカールハインツ・シュトックハウゼン体制への橋渡し役も担いました。しかし、晩年には自身の音楽が理解されないことに苦悩し、1970年にピストル自殺という悲劇的な最期を遂げました。
作風
ツィンマーマンの初期の作品は、「弦楽オーケストラのための協奏曲」、「ピアノトリオ」、「無伴奏ヴィオラソナタ」、「一楽章の交響曲」など、新古典主義的な様式が特徴的でした。しかし、1950年代に入ると、彼は前衛世代と対峙し、「遠近法 - 想像上のバレエのための音楽」や「コンフィグラツィオーネン」などでセリー的な書法を取り入れました。ただし、彼の音楽における最大の関心は、常に「時間」の多様な表現にありました。
「無伴奏チェロソナタ」は、単一のセリーによって全曲が構成されており、高度な演奏技術を要求される作品です。1965年に作曲されたオペラ「兵士たち」は、前衛音楽の時代における傑作として高く評価されており、極めて難解な内容の中に、等拍パルスが用いられるなど、先駆的な楽器法が際立っています。同時期には、前年の2台のピアノのための「モノローグ」の編曲版である2台のピアノのための協奏曲「ディアローグ」も作曲されましたが、この頃には彼の音楽の巨大性と複雑性が極限まで高まっていました。
しかし、シュトックハウゼンの提唱する「正しい軌道」という思考に反発したツィンマーマンは、1966年の「ユビュ王晩餐の音楽」において、全曲を「引用」によって構成し、シュトックハウゼンの音楽を引用した上で、罵倒する文句を重ねるなど、前衛音楽の姿勢に対して挑発的な態度を示しました。もっとも、前衛的なイディオムを身にまといながらの批判は、当然ながら様式上の矛盾を抱えることとなり、「モノローグ」、「ディアローグ」、「アンティフォネン」、「パ・ド・トロワの様式による協奏曲」などの作品には、苦悩の影が見え隠れし、音楽はより難解なものへと変化していきました。彼の引用技法は、後年の作品の隅々にまで徹底されています。
1967年の「インテルコムニカツィオーネ」や1968年の「フォトプトーシス」では、静止した持続音がD音に頻繁に現れるようになり、「静止主義」的な様相を強く帯びるようになりました。1969年の「若い詩人のためのレクイエム」で創作活動の集大成を迎え、1970年には「伝道行為」と「静止と反転」の2作品を完成させました。ツィンマーマンの創作態度は、どの派閥にも属さない、孤立したものでした。
受容と評価
前衛的なイディオムと過去の音楽文化を折衷したツィンマーマン独自の様式は、1920年代から1930年代生まれの作曲家たちから嘲笑の対象となり、彼を苦しめる原因となりました。しかし、1970年代に入ると前衛音楽の停滞が叫ばれ、作曲における進歩が疑われるようになると、多様式主義を掲げる作曲家たちが現れました。皮肉なことに、ツィンマーマンは死後に再評価されるようになったのです。演奏が非常に困難であるため、信頼に足る音源も少なく、CDによって彼の作風の全容が理解されるようになったのは、1990年代に入ってからのことです。
傑作であると同時に、難解で複雑な音楽の代名詞とも評されるオペラ「兵士たち」は、2008年5月10日に新国立劇場において、ウィリー・デッカーの演出、若杉弘の指揮、東京フィルハーモニー交響楽団によって日本初演されました。
主要作品
1942–1946: Fünf Lieder für mittlere Singstimme und Klavier
1946: Extemporale für Klavier
1946: Capriccio für Klavier
1947: Lob der Torheit für Soli, Chor und großes Orchester
1949: Enchiridion I für Klavier
1950: Sonate für Violine und Klavier
1950: Konzert für Violine und Orchester
1950: Rheinische Kirmestänze (1962 für 13 Bläser gesetzt)
1950: Märchen-Suite
1951: Enchiridion II für Klavier
1951: Sonate für Violine solo
1951: Sinfonie in einem Satz (Neufassung 1953)
1952: Konzert für Oboe und kleines Orchester
1954: Metamophose. Musik zum gleichnamigen Film von Michael Wolgensinger für kleines Orchester
1954: Nobody knows de trouble I see – Konzert für Trompete und Orchester
1955: Sonate für Bratsche solo
1955: Alagoana, Caprichos Brasileiros – Ballett
1956: Konfigurationen
1956: Perspektiven – Musik für ein imaginäres Ballet
1957: Canto di speranza
1957: Die fromme Helene
1957: Omnia tempus habent
1958: Impromptu
1960: Dialoge – Konzert für zwei Klaviere und großes Orchester
1960: Sonate für Cello solo
1961: Présence, ballet blanc
1961: Antiphonen
1962: Cinque Capricci di Girolamo Frescobaldi „La Frescobalda“ für Orchester
1962: Giostra Genovese. Alte Tänze verschiedener Meister für kleines Orchester
1962: Vokalsinfonie aus Die Soldaten für sechs Gesangssolisten (Koloratursopran, Mezzosopran, Alt, zwei Tenöre, Bass) und Orchester, UA: 20. Mai 1963
1963: Tempus Loquendi
1964: Monologe
1965: Die Soldaten – Oper, UA: 15. Februar 1965
1966: Musique pour les soupers du Roi Ubu – Ballett noir (1968 als Konzertstück überarbeitet)
1966: Konzert für Violoncello und Orchester en forme de pas de trois
1967: Intercomunicazione
1967: Tratto
1968: Photoptosis
1969: Requiem für einen jungen Dichter – Lingual
1970: Stille und Umkehr
1970: Tratto 2
1970: Vier kurze Studien
1970: Ich wandte mich und sah an alles Unrecht, das geschah unter der Sonne – Ekklesiastische Aktion
参考文献
Ulrich Tadday (Hrsg.): Musik-Konzepte Sonderband Bernd Alois Zimmermann. München 2005.
Bettina Zimmermann: con tutta forza. Bernd Alois Zimmermann. Ein persönliches Portrait. Dokumente, Briefe, Fotos, Zeitzeugen. Hofheim 2018, ISBN 978-3-95593-078-3
外部リンク
Bernd-Alois-Zimmermann-Gesellschaft e. V. (BAZG)
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