ベルヴェデーレのトルソ

ベルヴェデーレのトルソは、高さ1.59メートルの男性裸像の断片的な大理石彫刻です。台座には「アテナイのネストルの息子、アポロニオス」という署名が刻まれていますが、この人物は古代文献には登場しません。現在、バチカン美術館のピオ・クレメンティーノ美術館に収蔵されています。

かつては紀元前1世紀のオリジナル作品と考えられていましたが、現在は紀元前1世紀または紀元後1世紀の古い像の複製と見なされています。オリジナルの像は、おそらく紀元前2世紀初頭に制作されたものと推測されています。

像のモデル

筋肉質な男性像は、動物の皮の上に座っていますが、その正確なモデルについては議論が続いています。伝統的には、ネメアーの獅子の皮を被るヘラクレスとされてきましたが、近年の研究では、皮がヒョウのものであると特定され、ポリュペーモスやマルシュアースといった他の説も提唱されています。バチカン美術館のウェブサイトでは、「最も有力な説は、自殺を企てるテラモーンの息子、大アイアースである」とされています。

再発見後の来歴

この彫刻は、1433年からローマのモンテ・カヴァッロにあるプロスペロ・コロンナ枢機卿の邸宅に所蔵されていた記録があります。この彫刻が注目されたのは、その美しさによるものではなく、古物収集家で碑文研究家のチリアコ・ダンコーナがその碑文に言及したことに端を発します。1500年頃には、彫刻家のアンドレア・ブレーニョの手に渡りました。1527年のローマ劫掠の際にもコロンナ宮殿に残されましたが、その際に一部が損傷しました。1530年から1536年の間に、教皇がこの彫刻を購入しました。どのようにバチカンコレクションに加わったかの詳細は不明ですが、16世紀半ばまでにはベルヴェデーレの中庭に設置され、ベルヴェデーレのアポロン像などの有名なローマ彫刻と共に展示されました。

レオナルド・バーカン氏は「ラオコーン像は発掘からベルヴェデーレの列聖まで2ヶ月かかったが、トルソは100年かかった」と述べています。

この像のねじれたポーズと筋肉の表現は、ミケランジェロやラファエロといったルネサンス、マニエリスム、バロック期の芸術家に多大な影響を与え、古典復興のきっかけとなりました。ミケランジェロがこのトルソを称賛していたことは生前から広く知られており、このトルソは「ミケランジェロの学校」とも呼ばれていました。伝えられるところによると、教皇ユリウス2世はミケランジェロに腕、脚、顔をつけてこの彫像の断片を完成させるように依頼しましたが、ミケランジェロは「美しすぎる」という理由で断ったそうです。その代わり、システィーナ礼拝堂の天井画に描かれた人物像のインスピレーション源になったとされています。天井画の縁に描かれた巫女や預言者たち、そして最後の審判の復活のキリストと聖バーソロミューは、その影響を強く受けています。

トルソを描いた最古の素描としては、アミコ・アスペルティーニによる1500年から1503年頃の作品が知られています。他にも、マールテン・ファン・ヘームスケルクによる1532年から1536年頃の作品、ヘンドリック・ホルツィウスによる1590年頃の作品などが存在します。ジョヴァンニ・アントニオ・ダ・ブレシアによる1515年頃の版画によって、ベルヴェデーレのトルソはローマを訪れることができない愛好家や芸術家にとっての基本的な知識となりました。17世紀から18世紀にかけて、このトルソは賞賛された数少ない古代彫刻の一つであり、その評価は現代においても衰えることはありません。

16世紀には、いくつかの小さなブロンズ像が制作され、多くの場合、座ったヘラクレス像として表現されました。

2015年には、大英博物館で開催された「古代ギリシャ美術における身体」展に貸し出され、展示の目玉となりました。

ギャラリー
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脚注
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外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、ベルヴェデーレのトルソに関するカテゴリがあります。
The Belvedere Torso on the Vatican Museums website
* Entry in The Census of Antique Works of Art and Architecture Known in the Renaissance

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