ペチュニア

ペチュニア（Petunia）

ペチュニア（学名：Petunia）は、南米原産のナス科ペチュニア属に属する草本の総称です。特に、Petunia × hybrida（和名：ツクバネアサガオ、衝羽根朝顔）は、園芸植物として広く親しまれています。

属名のPetuniaは、ブラジル先住民の言語で「タバコ」を意味します。これは、ペチュニア属が同じナス科のタバコ属（Nicotiana）と近縁であることに由来します。種小名のhybridaは「雑種・交配種」の意味で、現在庭園で見かけるペチュニアのほとんどがこのハイブリッド品種です。命名者は、アントワーヌ・ローラン・ド・ジュシューです。

概要

ペチュニアの原産地は南米です。1767年にフランスのコンメルソンがウルグアイで白い花を発見したのが、ヨーロッパに伝わった最初です。その後、1831年にはブラジルから赤紫色の花がヨーロッパにもたらされました。これらの交配によって、現在のペチュニアの元となる「ペチュニア・ヴィオラセラ」が誕生しました。

品種改良はその後も進み、花の大きさは大輪、中輪、小輪と多様になり、花の色も赤、赤紫、紫、青紫、白、白黄、白青、桃色など多彩になりました。農林省農事試験場の寺尾博と禹長春によって八重咲きの品種が作出されるなど、花の容姿はバラエティに富んでいます。当初は草丈が高く花数が少なかったものが、匍匐性で花数の多い品種も登場しました。寺尾らの研究を引き継ぎ、1931年にはサカタのタネ創業者の坂田武雄が完全八重咲きペチュニア「ビクトリアスミックス」を開発し、種の輸出で成功を収めました。

日本には「ツクバネアサガオ」として渡来し、寒さに弱いため園芸上では一年草として扱われることが一般的でした。雨による育成不良や枯死が多いため、人気は今ひとつでしたが、サントリーが日本の気候に適応できるよう品種改良した「サフィニア」が登場してから、人気が高まりました。以降、園芸各社で品種改良競争が進み、多様性が深まっています。現在では、特に日本において品種改良が最も盛んな種と言えるでしょう。

葉は茎の上部で対生、下部で互生し、葉柄はほとんどありません。

ツクバネアサガオ（Petunia × hybrida）

ツクバネアサガオは、ペチュニア属の多年草です。南米原産の P. axillaris と P. violacea の交配種とされ、日本ではペチュニアの名で栽培されています。

茎は直立または斜めに立ち上がり、草丈は30 - 60 cmになります。全体に柔らかい腺毛が生えています。葉は下方では葉柄がありますが、上方の葉では葉柄がなく、質は柔らかく鋸歯はありません。花は長い柄がついており、花冠はロート形で浅く5裂し、筒内面に黒紫色の網目紋があります。

花期は春から秋にかけてです。花色は紅色、淡紅色、紫色、白色など変化に富んでいます。雄蕊は5個で花筒の内側に付き、雌蕊は1個で花柱が長く、柱頭部に向かって太くなります。大輪や八重咲きなどの改良品種も存在します。果実（蒴果）は卵形で残存する萼に包まれます。果実が熟すと2片に割れて、中から多数の微細な褐色の種子が散布されます。

育て方

種まきは4月から5月、開花期は4月から10月です。咲いた花が枯れた場合でも、同じ株の茎に育っている蕾が開花し、株としては4月から10月まで花が咲き続けます。10月から11月には株は枯れます。

種子は非常に細かく、指でつまむと潰れてしまうほどです。そのため、5～6寸の浅鉢に培養土を入れ、上の部分は細かいバーミキュライトか川砂にしておきます。種子は古いはがきをV字形に折り、それにあけて、種子をのせたはがきの下の稜を下から人差し指で軽くたたいて落とすと、まきやすくなります。覆土はせず、鉢の下に受け皿を当てて吸水させます。本葉が出てきたらポットに移し、その後は様子を見て花壇に定植するか、鉢やプランターに植え付けます。

種まきはやや難しいですが、苗にしてしまえば、現在の品種は比較的強健な一代交配種が多いので、比較的育てやすいでしょう。

栽培上の注意点

生育初期にはアブラムシが発生することがあります。樹勢が衰えるため、対策を講じるのが望ましいです。

また、ペチュニアの花は雨に弱い性質があります。花片が切れたり、酸性雨の影響で咲いている花に染みができたり、変色してしまうことがあります。

高温多湿の時期には、葉が混み合っていると下の方の葉が枯れたり、最悪の場合株全体が枯れてしまうことがあります。

梅雨前に一度切り戻しを行うことで、発生を多少減らすことが可能です。

ギャラリー

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脚注

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参考文献

長田武正『原色日本帰化植物図鑑』保育社、1976年6月1日。ISBN 4-586-30053-1。
アリス・M・コーツ「花の西洋史事典」（八坂書房）
中村浩「園芸植物名の由来」（東京書籍）

関連項目

サフィニア
* ブリエッタ

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