ペテガリ岳

ペテガリ岳：北海道日高山脈の難攻不落な峰

北海道の日高山脈の中部に位置するペテガリ岳は、標高1736メートルを誇る山岳です。日高郡新ひだか町と広尾郡大樹町の境界に跨り、日高山脈襟裳十勝国立公園に属しています。山頂には二等三角点「辺天狩岳」が設置されており、日本二百名山にも数えられています。

山名の由来と特徴

ペテガリ岳という山名は、アイヌ語の「回遊する川」を意味するペテガリ川に由来しています。この川はペテガリ岳の水源となっていることから、この名が付けられました。地元の新ひだか町静内地域では「ペテカリ岳」と呼ばれることも多く、山頂の標識にも「ペテカリ」と表記されている場合もあります。しかし、国土地理院の正式名称は「ペテガリ岳」です。

ペテガリ岳は、その険しい地形と厳しい気候から、かつては「遥かなる山」とも呼ばれていました。特に、厳冬期の山頂は非常に危険であり、登山を困難なものとしていました。山頂付近には、特徴的な3つのカールが存在します。これらのカールは、氷河の浸食作用によって形成されたと考えられており、ペテガリ岳の長い歴史を物語っています。

登山ルートとアクセス

ペテガリ岳への登山ルートは主に2つあります。1つは新ひだか町側から、もう1つは、大樹町側からアプローチするルートです。

新ひだか町側ルート

新ひだか町側からのルートは、コイカクシュシビチャリ川上流にあるペテガリ山荘からスタートします。山荘までは、静内から日高横断道を進み、林道に入るのが一般的でしたが、2005年以降、静内ダムより先40キロメートル弱の区間が一般車両通行止めとなっています。そのため、現在は浦河町荻伏から元浦川林道を遡り、神威山荘手前の分岐から入山し、沢靴も必要となる険しい道を経てペテガリ山荘を目指すことになります。そこから、前衛峰が連なる長大な西尾根を登ります。

大樹町側ルート

大樹町側からのルートは、ポンヤオロマップ川沿いのペテガリ橋登山口から、ポンヤオロマップ岳を経由して東尾根を登るルートです。

どちらのルートも、体力と経験を要する上級者向けの登山道です。十分な準備と計画、そして天候の確認が不可欠です。

登山史と事故

ペテガリ岳の初登頂は、1932年夏の慶應義塾大学山岳部によるものです。冬季の初登頂は、1943年の北海道大学山岳部によるものですが、それ以前にも何度か冬季登頂が試みられ、1939年には雪崩事故が発生し、多くの犠牲者を出しました。この事故は、日本の登山史において大きな痛手となり、冬の山岳登山における危険性を改めて認識させることになりました。北海道大学山岳部の部歌『山の四季』には、ペテガリ岳のことが歌われているというエピソードも残されています。

1940年1月5日、北海道大学山岳部の学生8名が、ペテガリ岳8合目付近で雪崩に遭い亡くなるという悲劇が起きました。悪天候の中、標高1260メートル付近で発生した最初の雪崩では7名が巻き込まれましたが、一時的に下山。しかし、その後午後3時22分に大規模な雪崩が発生し、残っていた9名全員が巻き込まれ、1名を除き全員が犠牲となりました。この事故は、日本の山岳界に大きな衝撃を与え、冬の登山における安全対策の重要性を改めて認識させる契機となりました。

まとめ

ペテガリ岳は、その壮大な自然と、厳しい環境、そして歴史的な登山事故など、多くの魅力と課題を併せ持つ山です。登山を計画する際には、十分な準備と情報収集を行い、安全に配慮することが重要です。その雄大な姿は、多くの登山家を魅了し続けています。

もう一度検索