静内ダム

静内ダム：北海道電力による日高地方の電力供給を支えるダム

静内ダムは、北海道日高地方の新ひだか町に位置する、高さ66メートルの重力式コンクリートダムです。二級河川である静内川上流部に建設されており、北海道電力が管理・運営しています。このダムは、日高地方における大規模な電力開発計画である『日高電源一貫開発計画』の一環として、1966年に完成しました。

静内ダムの役割

静内ダムの主要な役割は、水力発電による電力の供給です。4万6,000キロワットの発電能力を有し、北海道の電力供給に貢献しています。さらに、上流に位置する高見発電所の下部調整池としての役割も担っており、高見発電所の揚水発電を支える重要なインフラとなっています。ダムによって形成された人造湖は、静内調整池と呼ばれています。

静内川の地理と歴史

静内川は、日高山脈のペテガリ岳付近を水源とし、太平洋へと注ぐ全長69.9キロメートル、流域面積683.4平方キロメートルの河川です。アイヌ語の「シ・フッチ・ナイ」（大祖母の沢）に由来すると考えられています。かつては染退川と呼ばれていましたが、現在ではダム名にもなっている「静内」という名称で広く知られています。静内川には、静内ダム以外にも高見ダムと双川ダムが建設されており、これら3つのダムによって連続した人造湖が形成されています。

日高電源一貫開発計画と静内ダム

静内ダムの建設は、1952年に開始された日高電源一貫開発計画に基づいています。この計画は、北海道電力が北海道の開発促進と経営基盤強化のため、日高山脈の水力資源を活用して大規模な発電を行うことを目的としていました。日高山脈は険しい地形と豊富な降水量を有することから、水力発電に適した場所として選定されました。計画では、静内川、新冠川、沙流川、鵡川の4水系をトンネルで連結し、効率的な水資源利用による発電を目指しました。静内ダムは、この計画の中で、静内川水系における主要な発電所の建設と、導水された水を利用するための貯水池として重要な役割を果たしました。

建設における課題と周辺地域との関係

ダム建設にあたり、地質調査や測量など、多くの困難が伴いました。特に、険しい地形やヒグマの生息など、作業員の安全確保が大きな課題でした。また、水力発電による低水温化が農作物への影響を与える可能性があり、地元の土地改良区との間で長期間にわたる交渉が行われました。低水温対策や、ダム建設による影響に対する補償などを巡る協議は難航しましたが、最終的には合意に達し、ダム建設へと進みました。

静内発電所と周辺環境

静内ダムの左岸直下には、静内発電所が建設されています。この発電所は、静内川本流や支流のほか、沙流川水系や新冠川水系からの導水により発電を行っています。複数の水系を巧みに利用することで、効率的な発電を実現しています。静内発電所の出力は、1966年の1号機運転開始から段階的に増強され、現在では4万6,000キロワットとなっています。静内ダムの上流には、揚水発電を行う高見発電所が建設されており、静内ダムは下部調整池としての役割を担っています。

静内ダム周辺

静内ダム周辺は原生林に囲まれた静かな環境です。かつてはキャンプ場も存在していましたが、現在は閉鎖されています。毎年夏には、「森と湖に親しむ旬間」事業の一環として、地元の小学生や中学生による社会科見学が行われています。ダムへのアクセスは、国道235号から北海道道71号、北海道道111号を経由してアクセス可能です。公共交通機関ではJR日高本線静内駅が最寄りですが、ダムまではタクシーを利用する必要があります。

静内ダムは、日高地方の電力供給に貢献する重要な施設であると同時に、地域の自然環境と調和した存在として、今後もその役割を果たしていくでしょう。

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