ドン・カルロス・ビューエル

ドン・カルロス・ビューエル：南北戦争の将軍、その光と影

ドン・カルロス・ビューエル（1818年3月23日 - 1898年11月19日）は、アメリカ陸軍の職業軍人であり、セミノール戦争、米墨戦争、そして南北戦争に従軍しました。南北戦争では、北軍の将軍として西部戦線で重要な役割を果たしましたが、その評価は必ずしも一様ではありません。

生い立ちと初期の軍歴

ビューエルは、オハイオ州で判事の孫として生まれました。弁護士だった叔父にちなんで名付けられました。1841年に陸軍士官学校を卒業後、米墨戦争ではザカリー・テイラーとウィンフィールド・スコットの両将軍の下で勇敢に戦い、数々の名誉昇進を果たしました。戦間期には、アメリカ軍総務局長の下で勤務したり、カリフォルニア州で副官を務めたりしました。

南北戦争での活躍と苦悩

南北戦争勃発時、ビューエルはポトマック軍の創設に関わり、師団長を短期間務めました。1861年11月にはオハイオ軍管区（後にカンバーランド軍と改名）の司令官に就任し、テネシー州東部での作戦を指揮しました。しかし、ビューエルは命令を無視してナッシュビルに進軍し、1862年2月25日に無抵抗で同地を占領しました。この時、ユリシーズ・グラント将軍がヘンリー砦とドネルソン砦を占領したことが、南軍の注意をそらした要因の一つでした。

1862年4月、シャイローの戦いではグラントを支援し、北軍の勝利に貢献しました。ビューエル自身は、自軍の到着が北軍の大敗を避けたと主張しましたが、グラントは自伝の中でビューエルを称賛しました。その後のコリンスの戦いでは、ヘンリー・ハレック将軍の下で従軍しました。

ビューエルはチャタヌーガへの進軍を始めましたが、補給線が南軍の騎兵隊によって遮断され、作戦は停滞しました。さらに、ビューエルは奴隷所有者（妻の一族から奴隷を継承した）であったため、南軍の同調者ではないかと疑われることもありました。テネシー州やアラバマ州での作戦中に、南部の市民に厳格な不干渉政策を強制したことも、疑念を増幅させました。1862年5月には、アセンズの町で北軍兵士による略奪事件が発生し、ビューエルは部下のジョン・B・ターチンを告発しました。リンカーン大統領はテネシー州の政治家からの圧力に屈し、ビューエルを解任しようとしましたが、後任のジョージ・ヘンリー・トーマス将軍がこれを拒否したため、ビューエルは指揮官の座にとどまることになりました。

1862年秋、南軍のブラクストン・ブラッグ将軍がケンタッキー州に侵攻すると、ビューエルはブラッグ軍を追撃し、ルイビルとオハイオ川を守ることを強いられました。ペリービルの戦いでは、ビューエルは戦場から遠く離れた場所にいて、戦闘が起きていることに気づくのが遅れました。その結果、北軍は勝利を収めることができませんでした。この戦いは引き分けに終わりましたが、南軍のケンタッキー州侵攻を阻止し、テネシー州への撤退を余儀なくさせました。しかし、ビューエルはブラッグ軍の追撃に失敗したため、1862年10月24日に解任され、ウィリアム・ローズクランズ将軍が後任となりました。

解任とその後

ビューエルはその後1年半をインディアナポリスの軍事刑務所で過ごし、軍事任務を与えられることを期待しましたが、それは叶いませんでした。物資の不足がブラッグ軍を追撃できなかった理由だと主張しましたが、結局、1864年5月23日に退役しました。グラント将軍は、ビューエルに指揮官職を提案しましたが、ビューエルはシャーマンやエドワード・キャンビーの下で働くのは自身の体面に傷がつくとして、これを拒否しました。

戦後、ビューエルはインディアナ州に住んだ後、ケンタッキー州に移り、実業家として鉄鋼会社を経営しました。晩年は政府の年金職員を務め、1898年にケンタッキー州で亡くなりました。彼の功績を称え、ケンタッキー大学のキャンパスには、彼の名前が冠された建物があります。

ビューエルは、その軍事的な手腕と、南北戦争における複雑な立場から、歴史の中で様々な評価を受けています。シャイローの戦いでの貢献は認められる一方で、ペリービルの戦いでの対応や、その後の解任は、彼のキャリアに影を落としました。しかし、彼の功績は、アメリカ南北戦争史の中で、重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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