ペンタクロロフェノール

ペンタクロロフェノール（PCP）について

ペンタクロロフェノール（英: Pentachlorophenol、略称: PCP）は、化学式C6HCl5Oで表される有機塩素化合物で、特有のベンゼン様の臭いを持つ白い結晶です。この物質は有機溶媒に可溶ですが、水に対してはほとんど溶けず、ナトリウム塩の状態であれば溶解します。

用途

日本では初めに、日本住血吸虫を媒介するミヤイリガイ駆除剤として使用されました。1954年には山梨県農業試験場の由井重文らによる研究により、PCPが2,4-Dでは効果がないノビエの除草に有効であるとの報告がなされました。これに続き、1955年には殺菌剤としてのナトリウム塩が登録され、翌年には同様の理由で除草剤としての登録も行われました。以降、水田用の除草剤として広く利用されるようになりました。

しかし、その使用に伴う魚毒性の問題が取り上げられるようになり、殺菌剤としては1975年にバリウム塩、1989年にナトリウム塩、1990年には銅塩の登録が失効しました。また、除草剤としても1969年のヒドラジン塩、1975年のカルシウム塩、1990年のナトリウム塩が登録を失効しています。農業用途以外にも、PCPは木材の防腐やシロアリ駆除、水虫薬としても利用されました。アメリカでは獣皮の防腐処理にも使われており、1957年にはPCP処理された獣皮から供給された脂肪を与えられた数百万羽のブロイラーが水腫によって死ぬという事件が発生しました。

安全性

日本の法律においては、ペンタクロロフェノールは1%以下の製剤を除き劇物に分類され、労働安全衛生法の第2類特定化学物質にも指定されています。半数致死量（LD50）はラットへの経口投与で110mg/kg、経皮投与で96mg/kgとされており、最小致死量（LDL0）は人間に対して401mg/kgとされています。国際がん研究機関（IARC）は、PCPを人に対して発癌性の可能性があると評価し、グループ2Bに分類しています。

また、ゼブラフィッシュに対しても強い毒性を示し、半数致死濃度（LC50）は15~30μg/L/36Hとされていますが、生物濃縮に対する影響は比較的小さいと考えられています。PCPを製造していた企業においては、皮膚疾患や肝障害などの職業病が発生し、これに関連して7名の死亡者や90名が中毒症状を訴える事例が報告されています。さらに、九州地方にある製剤工場近くの住民が健康被害を訴え、1973年に訴訟が起こされる事態にも至りました。

この化合物は不燃性ですが、200℃以上で分解し、有毒なダイオキシン類を放出することが知られています。従って、取り扱いには十分な注意が必要です。

参考リンク

• - 農林水産・食品産業技術振興協会

もう一度検索