ホアキン・トゥリーナ

ホアキン・トゥリーナ

ホアキン・トゥリーナ・ペレス（スペイン語: Joaquín Turina Pérez, 1882年12月9日 - 1949年1月14日）は、20世紀前半に活躍したスペインの作曲家であり、優れた音楽教師でもありました。イタリア系の血を引き、故郷セビーリャの豊かな文化的・音楽的土壌をその創作の源泉としました。

生涯

トゥリーナはまず郷里セビーリャとマドリードで音楽の基礎を学びました。その後、彼の音楽的キャリアにおいて決定的な時期となるパリ留学を果たします。1905年から1914年までの約10年間、パリのスコラ・カントルムでヴァンサン・ダンディに作曲を師事し、さらにモーリツ・モシュコフスキのもとでピアノの研鑽を積みました。このパリ滞在中に、友人であったマヌエル・デ・ファリャをはじめとする多くのスペイン人芸術家たちと同様に、クロード・ドビュッシーやモーリス・ラヴェルといったフランス印象主義を代表する作曲家たちと交流を持ち、その影響を受けました。また、作曲家イサーク・アルベニスからは、それまで傾倒していたセザール・フランク楽派のスタイルから脱却し、スペイン人としての独自の音楽を追求すべきだという助言を受け、これがその後の創作活動の方向性を定める上で重要な契機となりました。

1914年に第一次世界大戦が勃発すると、トゥリーナはファリャと共にスペインへ帰国しました。帰国後は、作曲活動に加え、音楽教師や音楽評論家としても精力的に活動を開始します。彼の教育者としての手腕は高く評価され、1931年にはマドリッドの王立音楽院の作曲科教授に就任し、後進の指導にあたりました。第二次世界大戦終結から間もない1949年、マドリードにて66歳でその生涯を閉じました。

作風と業績

トゥリーナの音楽の最大の特徴は、故郷アンダルシア地方の伝統的な民俗音楽からの強い影響です。彼の作品には、アンダルシア特有のリズム、旋律、色彩が豊富に織り込まれています。19世紀末から20世紀初頭にかけてのスペインの作曲家たちが、特定のジャンルに特化する傾向があったのに対し、トゥリーナは舞台音楽、管弦楽曲、室内楽曲、ピアノ曲、ギター曲、歌曲など、ほぼすべての音楽ジャンルで傑出した作品を生み出しました。その創作量の豊富さも特筆に値します。

作曲活動だけでなく、教育者や理論家としても重要な貢献をしました。彼は音楽に関する著書も複数出版しており、特に作曲に関する理論書は後世にも影響を与えています。

トゥリーナは政治的な活動から距離を置く姿勢をとったため、スペイン内戦後のフランコ政権とも一定の妥協を見せたとされ、没後しばらくは評価が控えめになる時期もありました。しかし近年では、演奏会などを通じて国際的に彼の作品が再び取り上げられるようになり、その芸術的な価値に対する積極的な再評価が進められています。

主要作品

トゥリーナは多岐にわたるジャンルで数多くの作品を残しました。代表的なものを以下に挙げます。

舞台音楽

喜歌劇《マルゴー》作品11
歌劇《東方の花園》作品25 (1922年)

管弦楽曲

ロシオの行列 作品9 (1913年)
幻想的舞曲集 作品22 (1919年-1920年)
セビーリャ交響曲 作品23 (1920年)
闘牛士の祈り 作品34 (弦楽合奏曲)
ピアノと弦楽オーケストラのための《交響的狂詩曲》作品66 (1934年)

室内楽曲

弦楽四重奏曲「ギター風に」作品4 (1911年)
弦楽四重奏のための《セレナータ》作品87 (1935年)
ピアノ六重奏曲「アンダルシアの情景」作品7 (1911年)
ピアノ五重奏曲 作品1 (1907年)
ピアノ四重奏曲 イ短調 作品67 (1931年)
ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 作品35 (1926年)
ピアノ三重奏曲 第2番 ロ短調 作品76 (1933年)
ピアノ三重奏のための幻想曲《環》作品91 (1942年)
ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ短調 作品51 (1926年)
ヴァイオリン・ソナタ第2番「スペイン風」ト短調 作品82 (1934年)
ヴァイオリンとピアノのための《サンルーカルの娘の詩》作品28 (1924年)

ピアノ曲

セビーリャ 作品2 (1908年)
3つのアンダルシア舞曲 作品8 (1912年)
絵画風ソナタ《サンルーカル・デ・バラメーダ》作品24 (1920年)
5つのジプシー風舞曲 第1集 作品55 (1930年)
管弦楽のない協奏曲 作品88 (1935年)

ギター曲

セビリャーナ 作品29 (1923年)
ファンダンギーリョ 作品36 (1925年)
ソナタ ニ短調 作品61 (1932年)
タレガ礼讃 作品69 (1932年)

歌曲

ピアノ伴奏歌曲《カンシオーネス形式による詩曲》作品19 (1918年)
連作歌曲集《セビーリャの唄》作品37 (1925年)
声楽とピアノ、弦楽四重奏のための小品集《アンダルシアのムーサたち》作品93 (1942年)

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