ホザキマスクサ

ホザキマスクサ (Carex angustealata)

ホザキマスクサは、カヤツリグサ科に属する多年生の草本植物で、学名は Carex angustealata です。この植物は日本特有のもので、本州の愛知県以西に分布していますが、四国や九州の南部では確認されていません。主に平地の河川敷、特に樹木のある木立の中で見られますが、開けた草地でも見かけることがあります。

特徴

この植物は匍匐枝を出さず、密集した株を形成します。草丈は30～60cmで、花茎よりも長い葉を持ち、葉の幅は2～3mmです。全体的に柔らかな質感を持ち、基部の鞘は淡褐色から淡い栗色に変わります。

花序と小穂

花期は主に5月から6月で、花序には7～10個の小穂が穂状に連なります。小穂の基部から出る苞には鞘がなく、最上部の小穂では葉身部は発達しません。各小穂は雌雄性を持ち、基部に雄小花、先端に雌小花が配置されており、形状は球形から卵形で、長さは0.6～1cmです。

雄花鱗片の先端は尖っており、雌花鱗片は卵形で緑白色をしています。果胞は長卵形で、長さは3～3.5mm。果胞には毛がなく、稜間には少数の脈があり、両側の面には基部から先端にかけて狭い翼が続き、その縁には細かな鋸歯があります。先端のくちばしは短く、口部に2つの歯状突起があります。痩果は果胞に密着しており、長さは0.9～2.1mm、柱頭は2裂しています。

生育環境

ホザキマスクサは、主に河原に生育する特異な植物です。特に、ヤナギ属を中心とした樹木の茂みに見られることが多く、開けた場所にも現れることがあります。ただし、これらの生育環境は特定されており、一般的な草地での発見はあまり多くありません。

分類と類似種

この種は、同型で無柄の小穂を持ち、雌雄性の果胞に翼があり、柱頭が2裂する特徴から、ヤブスゲ節に分類されています。日本にはこの節に属する5種ほどが知られており、ホザキマスクサはその中でもタカネマスクサ (Carex planata) に非常に似ています。タカネマスクサとは異なり、ホザキマスクサは隙間のある、小穂を密に着ける特徴があります。

タカネマスクサとの関係

タカネマスクサは1878年に記載され、当初は2つの変種が認められました。1つはホザキマスクサに似た変種で、もう1つは雄小花からなる頂小穂があります。近年の研究では、ホザキマスクサが独立した種として認識されつつあり、タカネマスクサとは明確な形態的、環境的な違いがあることが指摘されています。

保護状況

ホザキマスクサは環境省のレッドデータブックで絶滅危惧II類に指定されています。愛知県と三重県では絶滅危惧I類、京都府ではII類、岡山県は準絶滅危惧に分類されています。また、兵庫県では既に絶滅したとされています。生育環境の喪失や河川改修による影響で、個体数は減少傾向にあることが報告されています。

参考文献

• - 勝山輝男, 『日本のスゲ 増補改訂版』, 2015, 文一総合出版
• - 星野卓二他, 『日本カヤツリグサ科植物図譜』, 2011, 平凡社
• - 大井次三郎, 『新日本植物誌顕花編』, 1983, 至文堂
• - 藤井伸二, 黒崎史平, 「ホザキマスクサ Calex planata var. angustealata の形態学的および分類学的研究」, 2023, 植物地理、分類研究 第71巻第2号.

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