ホシガラス

ホシガラス（星鴉）

ホシガラス（学名：Nucifraga caryocatactes）は、スズメ目カラス科の鳥類で、ホシガラス属に含まれる一種です。その名は、全身を覆う独特の模様に由来しています。

分布

この鳥は、主にユーラシア大陸の旧北区に広範囲にわたって生息しており、北米西部に分布する近縁種のハイイロホシガラスとは異なる地域に住み分けています。スカンジナビアから始まり、シベリアを経て日本を含む東アジアに至るまでの、冷涼な気候の広大な針葉樹林帯が主な生息地です。

また、北方の大集団から地理的に隔離された個体群が、より南方の山岳地帯の針葉樹林にも点在しています。これには、中央および南東ヨーロッパのアルプスやカルパティア山脈、バルカン半島の山々、ヒマラヤ西部、そして中国西部が含まれます。これらの孤立した集団の中には、くちばしの大きさに違いが見られるものもいます。

日本国内では、四国より北の高山帯から亜高山帯にかけての森林で姿を見ることができます。冬季には、より標高の低い場所へ移動することがあります。

形態

体長は32センチメートルから37センチメートルほどで、カケスに比べてわずかに体や嘴が大きい傾向があります。頭頂部に冠羽はありません。最大の特徴は、体の大部分を占めるチョコレートのような黒褐色に、白い斑点が帯状に並んでいることです。この模様がまるで夜空の星のように見えることから、「ホシガラス」という和名が付けられました。翼と上尾は、光沢のある青みを帯びた黒色をしています。

生態

ホシガラスにとって最も重要な食料源は、特定の種類のマツの種子です。特に、寒冷地に生育し、大きく栄養価の高い種子をつけるストローブス亜属やデュカンポピヌス亜属のマツ（スイスマツ、チョウセンゴヨウ、ハイマツなど）を好んで利用します。これらのマツが少ない地域では、トウヒの種子やハシバミの実なども食べます。ハシバミを主食とする個体群は、その硬い殻を割るのに適した大きなくちばしを持っており、くちばしの基部近くには特殊な隆起が見られます。あまりに殻が硬い場合は、実を足で押さえつけ、くちばしをノミのように使って割る器用な一面も見せます。

彼らは食物を余らせた際、後のために貯蔵する習性があります。この貯食行動は、彼らが好むマツ類の種子を広範囲に散布することになり、結果としてこれらのマツの分布拡大に大きく貢献しています。例えば、中部ヨーロッパのアルプス山脈では、人為的な伐採によって減少したスイスマツの森が、ホシガラスの貯食活動によって再生されたという事例があります。

マツの種子以外にも、多様なものを食べます。昆虫類、他の鳥の卵や巣の中のヒナを捕らえることもあります。また、死んだ動物の肉や、餌として与えられた魚の肉なども食べることが知られています。特に、マルハナバチやスズメバチの巣を執拗に掘り、中にいる幼虫を食べる姿も観察されています。

繁殖期は、生息地の中でも比較的早い時期に始まります。これは、前年の秋に貯蔵しておいたマツの種子を食料として利用できるためです。巣は主に針葉樹の枝の上に作られますが、まれに広葉樹が使われることもあり、日当たりの良い場所が選ばれる傾向があります。一度に産む卵の数は通常2個から4個で、抱卵期間は17日から19日です。抱卵は、日本では雌雄が協力して行いますが、ヨーロッパの個体群では雌のみが行うとされています。孵化後、ヒナへの給餌は雌雄共同で行われ、巣立ちまでにはおよそ23日かかります。巣立った後も、ヒナはさらに2～3ヶ月の間、親鳥とともに過ごし、厳しい環境で生き抜くために不可欠な貯食の方法を学びます。

鳴き声は、同じカラス科のカケスによく似ており、大きくて濁った声を出します。

ホシガラスは基本的に渡り鳥ではありませんが、マツの実が不作で食料が極端に不足した年には、広範囲に移動することがあります。これは、特にくちばしが比較的細い東部の個体群に多く見られる行動です。

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