ホテルイタリア軒

ホテルイタリア軒

新潟県新潟市中央区西堀通七番町に位置するシティホテルで、NSGグループに属する株式会社イタリア軒によって運営されています。

概要

ホテルイタリア軒の歴史は、1874年（明治7年）に来日したイタリア人、ピエトロ・ミリオーレ氏が創業した西洋料理店に始まります。この店は日本における初期のイタリア料理店の一つとして、長い間地元の人々に愛されてきました。作家の太宰治の著書『みみずく通信』にもその名が登場するなど、文化的な側面でも知られています。

1970年代に入り、事業をホテル業へと拡大。1976年（昭和51年）5月からは現在の「ホテルイタリア軒」として営業を続けています。2014年にはNSGグループの傘下に入り、創業以来の伝統である洋食を大切にしつつ、新潟の豊かな地場食材を取り入れた食文化の創造と発信に力を入れています。

沿革

創業期

創業者のピエトロ・ミリオーレ氏（新潟では「ミオラ」や「ミヨラ」とも呼ばれました）は、1874年にフランス人スリエ氏率いる曲馬団のコックとして日本へ渡りました。新潟での公演中に病に倒れ、一行から離れることになります。当時の新潟県令、楠本正隆氏はミリオーレ氏に援助を惜しまず、牛肉小売店の開業を支援しました。これは、楠本氏が進めた文明開化政策の一環でもありました。

ミリオーレ氏の牛肉店は順調に発展し、移転を重ねながら西洋料理や牛乳配達業も手がけるようになります。しかし、1880年（明治13年）の新潟大火により店舗を焼失してしまいます。再起を図ったミリオーレ氏は、西堀通の現在地に二階建ての洋館を建設し、翌年には「イタリヤ軒」（後に「イタリア軒」と改称）として本格的な西洋料理店を開業しました。この瀟洒な洋館のレストランは大変な評判となり、その華やかさから「新潟の鹿鳴館」と称されるほどでした。

晩年、ミリオーレ氏はイタリアへの帰国を望むようになり、1906年（明治39年）にイタリア軒を新たに設立された会社組織に売却して一時帰国。しかし、翌年には再び来日し新潟で暮らしました。最終的には1912年（明治45年）に再度イタリアへ渡り、1920年（大正9年）11月にイタリアのトリノでその生涯を終えました。

ホテル業への転換と経営主体の変化

1963年（昭和38年）7月には、新潟放送（BSN）が株式と経営権を取得し、BSNグループの一員となります。1973年（昭和48年）末からは事業拡大の方針に基づきホテルへの転換を進め、1976年（昭和51年）5月に現在の「ホテルイタリア軒」としての営業を開始しました。1979年（昭和54年）4月にはホテルニューオータニと業務提携を結び、グループホテル（後にアソシエイトホテルへ変更）となりました。

BSNは半世紀近くイタリア軒の運営を担いましたが、2013年（平成25年）3月期には経常損失を計上し、債務超過を抱えるなど経営状況が悪化しました。これによりBSNはホテル事業からの撤退を決定し、2014年（平成26年）1月14日、NSGグループの投資会社であるNSGホールディングスに全株式を売却することで合意に至りました。

NSGグループによるリニューアル

2014年3月にNSGグループの経営陣が加わると、大規模なリニューアルが実施されます。宴会場の改装を皮切りに、最上階のレストランバーを披露宴会場へ変更、ブライダルサロンを新設するなど、施設全体の刷新が進められました。2015年4月には中華レストランや会員制バー、同年7月には1階のメインレストラン「リストランテ・マルコポーロ」、9月には2階に「西洋料理ローザ」が改装・新規オープンしました。フロントやロビーも改修され、一連の施設リニューアルが完了しました。

2018年4月には井東昌樹氏が代表取締役社長に就任し、同年5月に新たなコンセプト「食と文化の発信基地」を発表しました。これは、創業以来の伝統的な洋食を継承しつつ、新潟県内の様々な地場食材を積極的に取り入れ、食を通じて地域の魅力を発信する拠点となることを目指すものです。具体的には、阿賀野市、佐渡市、村上市、魚沼市など県内各地の旬の食材とコラボレーションしたメニューを提供。また、スーベニアショップを併設し、これらの地域食材や特産品を購入できる機会を設けています。

ホテルの特徴

ホテルイタリア軒は、全82室の客室を備えています。宴会場は、大規模な宴会に対応可能な「サンマルコ」をはじめ、中宴会場7室、和室宴会場2室、神前結婚式場1室を含む計11室を有しています。飲食施設としては、和洋中のレストランやバー、カフェなど合計5店舗を展開しています。

主な宴会場

大宴会場 サンマルコ（3階）
中宴会場 ゴンドリーナ（12階）
中宴会場 トリノ（5階）
小宴会場 ジェノヴァ・フィレンツェ（5階）
プライベートルーム／和風宴会場 佐渡（12階）
ミーティングルーム プレシア（5階）
ミーティングルーム 朱鷺・雪・柳（4階）
予約制レストラン・宴会場 ROSA（2階）
会議室 ヴェネツィア・ローマ（11階）

レストラン

リストランテ マルコポーロ：ホテルの1階にあり、朝食はビュッフェ形式、ランチやディナーは洋食メニューを中心に提供しています。
割烹 蛍：ホテル正面玄関の向かいにある、塀に囲まれた枇杷茶色の数寄屋造りの別館で営業しており、和の空間で食事を楽しめます。
すし柳美：古町通8番町に位置する店舗で、落ち着いた雰囲気の中で寿司を味わえます。

ホテル外での展開

ホテルイタリア軒は、新潟市内のホテル施設だけでなく、外部でも積極的に事業を展開しています。新潟市北区にある新潟競馬場内には、常設のレストランと売店をそれぞれ1店舗出店。NiLSスタンド3階の「レストラン イタリア軒」では、和食・洋食を中心とした幅広いメニューを提供しています。また、アイビススタンド3階の売店は、新発田市の「和食堂 大松」と共同で出店しており、イタリア軒は主に洋食関連の商品を提供しています。

さらに、新潟県内で開催される様々なイベントにも臨時売店として出店しています。プロスポーツイベントでは、HARD OFF ECOスタジアム新潟で開催されるプロ野球公式戦のうち、新潟放送や新潟日報社が主催・共催する試合の際に2009年（平成21年）から出店しています。また、2012年（平成24年）からは、デンカビッグスワンスタジアムで行われるサッカーJリーグ、アルビレックス新潟のホームゲーム会場にも出店し、多くの来場者にホテルメイドの味を提供しています。

その他事業

創業130周年を記念し、2004年（平成16年）8月1日には、レトルト食品シリーズ「柳都にいがた イタリア軒物語」を発売しました。カレー、ハヤシ、ミートソースの3種類のラインナップで、新潟県内のスーパーマーケットや土産品店などで販売されています。パッケージデザインは、新潟市出身のイラストレーター、玉井一利氏が手掛けています。

長きにわたり新潟の食文化を支え、時代に合わせて変化を遂げてきたホテルイタリア軒は、現在も地域に根差した「食と文化の発信基地」として、その歴史と伝統を守りながら新たな挑戦を続けています。

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