ホムス県

ホムス県：シリア中央部の歴史と地理

シリアアラブ共和国の中央部に位置するホムス県は、同国最大の面積を誇る県です。その広大な領土は、およそ42,223平方キロメートルに及び、肥沃な西側地域と広大なシリア砂漠の東側地域という、対照的な二つの地勢から成り立っています。2007年の推計人口は約165万人、県都はシリア第三の都市であるホムスです。

地理的特徴

ホムス県の西側は、オロンテス川が流れ、豊かな穀倉地帯として知られています。この地域は、農業が盛んで、シリア経済において重要な役割を果たしています。一方、東側はシリア砂漠が広がり、荒涼とした山地が広がっています。この地域的な違いは、人口分布にも影響を与えており、人口密度は西側に集中しています。

ホムス県の国境は、東にデリゾール県、北にラッカ県とハマー県、西にタルトゥース県、ダマスカス郊外県、レバノンと接し、南はイラクとヨルダンと国境を接しています。この地理的位置は、古代から交易路として重要な役割を果たしてきただけでなく、歴史的に様々な勢力の争奪の場ともなってきました。

歴史

ホムス県の歴史は古く、紀元前からの長い歴史を有しています。古代には、パルミラ王国という独立国家が存在し、特にパルミラ帝国(260年-273年)時代には、交易拠点として繁栄しました。パルミラ遺跡は、砂漠の中のオアシスに位置し、古代都市の壮大な遺跡が現在も残っています。

モンゴル帝国のシリア侵攻においても、ホムスは重要な戦略拠点となり、1260年、1281年、1299年にはホムスを巡る戦闘が繰り広げられました。これらの戦いは、地域の支配権を巡る激しい争奪戦の象徴として、歴史に刻まれています。

2011年に始まったシリア内戦においては、ホムスは激戦地の一つとなり、長期間にわたる包囲戦や戦闘が繰り広げられました。特に、2011年5月からのホムス包囲戦、2012年のホムス攻勢、そして2014年5月の旧市街での戦闘は、内戦の激しさを象徴する出来事となりました。この内戦は、ホムス県の社会基盤や経済に大きな打撃を与え、現在もその影響が続いています。

行政区分

ホムス県は、2010年の行政区域再編により、現在では7つの郡から構成されています。これには、ホムス郡、アル＝ムハッラム郡、パルミラ郡、アッ＝ラスタン郡、アル＝クサイル郡、タルカラハ郡、そしてタルドゥ郡が含まれます。これらの郡は、それぞれ独自の行政組織を持ち、県全体の行政運営を支えています。ただし、一部の地図には6郡しか記載されていないなど、行政区分に関する情報は必ずしも統一されていません。

まとめ

ホムス県は、その広大な面積と多様な地理的特徴、そして複雑な歴史によって特徴付けられる地域です。豊かな穀倉地帯と広大な砂漠、そして古代都市パルミラ遺跡といった魅力的な要素を持つ一方で、シリア内戦の激戦地として大きな苦難を経験しました。現在も、その歴史と地理的特徴、そして内戦の影響を乗り越え、発展を続けている地域です。今後のホムス県の発展には、社会基盤の再建、経済の活性化、そして平和の定着が不可欠です。

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