ホロテンナンショウ

ホロテンナンショウ (幌天南星)

概要

ホロテンナンショウ（幌天南星、学名：Arisaema cucullatum）は、サトイモ科テンナンショウ属に属する多年草です。この植物は日本に特有で、紀伊半島の三重県、奈良県、和歌山県で確認されています。その特徴として、ユニークな仏炎苞（ぶつえんほう）があり、乳母車の幌のように内側に巻いています。

特徴

ホロテンナンショウの地下には直径2-3cmの球茎があり、地上部の高さは20-45cmに達します。葉は斜上する長い葉柄に1枚だけついており、その葉は鳥の足のように分裂し、広く水平に展開します。小葉は7から13枚存在し、狭い披針形または狭楕円形で、先端が尖っているのが特徴です。

花期は5月から6月で、特徴的な花序が葉とともに成長します。仏炎苞の構造は非常に興味深く、直立しており、玄関へと向かうように広がる形状をしています。仏炎苞は黄緑色で、淡紫から濃紫色の帯があり、先端には尾状の部分がありアーチ状に垂れ下がっています。これにより、ひと目でこの植物を認識できるようになっています。果実は秋に赤く熟し、10-15個の胚珠が子房内に存在します。

生育環境

ホロテンナンショウは山地の林下に自生し、湿度の高い環境を好みます。この条件が満たされる場所に存在することが多いです。

分布

日本固有種であるホロテンナンショウは、紀伊半島の三重県、奈良県、和歌山県に限られて分布しています。この限られた生息地が、種の希少性を一層高めています。

名前の由来

「ホロテンナンショウ」という和名は、独特の仏炎苞が乳母車の幌を思わせることから来ています。学名の「cucullatum」は「僧帽形の」という意味を持ち、植物学者の堀田満によって名付けられました。

保全状況

ホロテンナンショウは環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類（CR）に分類されています。各県でも絶滅危惧種としてリストされており、特に三重県、奈良県、和歌山県ではそれぞれ生存が脅かされています。2018年には国内希少野生動植物種に指定されており、採取や損傷が禁止されています。

分類と類似種

ホロテンナンショウに似た種として、兵庫県に分布するセッピコテンナンショウ（Arisaema seppikoense）や九州に分布するツクシマムシグサ（Arisaema maximowiczii）がありますが、これらの種とは仏炎苞の形状や染色体数が異なります。

まとめ

ホロテンナンショウはその独特な形状と美しい花で、観察する価値のある植物です。その生育環境や分布の限られた特性もあり、植物研究や自然保護の観点から非常に重要です。

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