ホンキー・トンク・ウィメン

ローリング・ストーンズの不朽の名曲「ホンキー・トンク・ウィメン」：その魅力と歴史

ローリング・ストーンズの「ホンキー・トンク・ウィメン」(Honky Tonk Women)は、1969年7月にリリースされたシングル曲であり、バンドの代表曲の一つとして名高い。ミック・ジャガーとキース・リチャーズによって作詞作曲されたこの曲は、イギリスとアメリカをはじめとする多くの国でチャート1位を記録、その人気を不動のものとした。

ミック・テイラー参加による新たな境地と楽曲のバリエーション

この曲は、ブライアン・ジョーンズの後任として加入したミック・テイラーが参加した最初の楽曲でもある。そのため、シングルのジャケットにはテイラーの姿も写っており、バンドにとって新たな時代の幕開けを象徴する作品と言えるだろう。楽曲の長さは約3分だが、収録されたレコードによってピッチが異なり、数秒程度の時間差が生じている点が興味深い。

さらに、「ホンキー・トンク・ウィメン」には、カントリーミュージック風にアレンジされたバージョンが存在する。こちらは「カントリー・ホンク」というタイトルで、アルバム『レット・イット・ブリード』に収録されている。歌詞も若干異なっており、「ホンキー・トンク・ウィメン」がメンフィスのバーでの出来事を描くのに対し、「カントリー・ホンク」では異なる物語が展開される。興味深いことに、作曲段階では「カントリー・ホンク」が先に制作され、そこから「ホンキー・トンク・ウィメン」が発展したという経緯を持つ。シングルがアレンジされ、改題された上でオリジナルアルバムに収録されるという、ストーンズ史上稀有な例と言えるだろう。

ブラジルでの制作とアメリカ南部音楽の影響

「ホンキー・トンク・ウィメン」は、1968年12月、ジャガーとリチャーズがブラジルを旅行中に作曲された。リチャーズがタイトルとギターリフ、サビを考案し、ジャガーがそれらを元に楽曲を完成させたという、彼ららしい共同作業によって生まれた作品である。当初はハンク・ウィリアムズやジミー・ロジャースといったカントリーミュージックの影響を強く受けていたが、バンド内でアレンジが加えられ、最終的にシングルバージョンのようなファンキーな楽曲へと進化した。

この曲では、リチャーズの代名詞ともなった5弦オープンGチューニングが初めて採用された。リチャーズはこのチューニングを、後に『レット・イット・ブリード』のレコーディングに参加したライ・クーダーから学んだとされている。しかし、クーダーは後にストーンズから楽曲を盗まれたと主張し、以降ストーンズとの関係を絶ったというエピソードも残っている。

レコーディングからリリース、そして世界的な成功

「ホンキー・トンク・ウィメン」のレコーディングは、1969年3月と5月～6月にロンドンのオリンピック・スタジオで行われた。ジョーンズはまだバンドに在籍していたものの、セッションにはほとんど参加しておらず、彼の関与の有無は不明である。ミック・テイラーは5月からのセッションに参加し、ほぼ完成していた楽曲に貢献したと語っている。「カントリー・ホンク」は、5月と10月にロンドンとロサンゼルスのスタジオで録音された。

シングルはジョーンズの死後、1969年7月4日にイギリスでリリースされ、アメリカでは翌日にリリースされた。イギリスでは9位でデビューし、その後1位にまで上昇、5週連続で首位を維持した。アメリカでも1位を獲得し、4週連続で首位をキープするなど、世界的なヒットとなった。現在に至るまで、ストーンズのシングルがイギリスで1位を獲得したのはこの曲が最後である。リチャーズ自身も、この曲の成功を予感していたという。

ライブパフォーマンスと多様なアレンジ

「ホンキー・トンク・ウィメン」は、1969年7月5日のハイドパーク・フリーコンサートで初披露され、それ以降、ストーンズのほぼ全てのツアーで演奏され続けている。数々の公式ライブアルバムにも収録されており、その演奏は時代に応じて変化を遂げてきた。1981年のツアーでは、ステージに多数の女性ダンサーが登場する演出が行われ、2002～2003年のツアーでは、バックスクリーンにトップレス女性が登場するアニメーションが使用された。

コンサートでの演奏では、スタジオバージョンとは異なり、イントロがギターリフから始まることが多い。これは、ドラムやカウベルの音よりもギターリフが先に始まる方がライブでは効果的であるためだろう。チャーリー・ワッツも、ライブとスタジオバージョンの違いについて言及している。一方「カントリー・ホンク」は、これまでライブで演奏されたことはない。

数多くのカバーとグラミー殿堂入り

「ホンキー・トンク・ウィメン」は、多くのアーティストにカバーされ続けている。ジョー・コッカー、ザ・タイガース、アルバート・キング、エルトン・ジョン、松田優作など、様々なアーティストがそれぞれの解釈でこの曲を演奏している。2014年には、グラミーの殿堂入りを果たし、その音楽的価値が認められた。

まとめ

「ホンキー・トンク・ウィメン」は、ローリング・ストーンズの音楽的進化、そして時代を反映する数々の要素が凝縮された、まさに不朽の名曲と言えるだろう。その魅力は、時代を超えて人々に愛され続ける理由を物語っている。楽曲の制作秘話から、レコーディング、リリース、ライブパフォーマンス、そして数多くのカバーまで、様々な角度からこの楽曲の魅力に迫ることができた。

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