ホンダ・CT110

ホンダCT110：世界を駆け巡ったレジャーバイク

ホンダがかつて製造販売していたCT110は、スーパーカブをベースに開発されたデュアルパーパスバイクです。愛称である「ハンターカブ」の名で親しまれ、世界各国で販売されました。本記事では、CT110の概要、特徴、輸出仕様の差異、そして後継モデルであるCT125ハンターカブについても解説します。

CT110：開発と販売

CT110は、1979年まで輸出専売モデルだったCT90の後継として1980年に登場しました。カナダ、パプアニューギニア、南アフリカ、ブラジル、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど、多くの国々へ輸出されました。日本国内では、ブロックタイヤ、スキッドプレート、大型リアキャリア、アップマフラー、テレスコピックサスペンションなどを装備したレジャーバイクとして、1981年10月に発売されました。

CT110は、シルクロードやTL125イーハトーブと共に「トレッキングバイク」という新しいカテゴリーを確立し、雄大な自然の中でのツーリングを楽しむためのバイクとして注目を集めました。日本国内仕様は1983年に、北米仕様は1986年に販売終了となりましたが、オセアニア地域などではその後も製造・販売が継続され、ニュージーランド向け2012年モデルをもって生産終了となりました。

実質的な後継モデルと言えるのが、2013年に発売されたクロスカブCC110です。CT110のコンセプトを受け継ぎつつ、現代的なデザインと機能を備えています。

CT110：車両解説

CT110に搭載されるJD01E型エンジンは、空冷4ストロークSOHC単気筒の105ccエンジンです。CT90や郵政用MD90のエンジンをベースとしており、クランクケースはMD90と共通です。最高出力は7.6ps/7,500rpm、最大トルクは0.85kg-m/6,000rpmです。

トランスミッションは、シーソーペダル式の4速リターン式マニュアルトランスミッションです。副変速機も装備されており、停車時にHiモードとLoモードを切り替えることが可能です。ただし、日本国内仕様やオセアニア向け郵政仕様には副変速機は搭載されていません。

サスペンションは、フロントにアウタースプリング式テレスコピックフォーク、リアにスイングアームを採用。ブレーキは前後ドラムブレーキです。パーキングブレーキ機構は、日本国内仕様を除き標準装備されています。

ボディカラーは、1981年モデルまではタヒチアンレッド、それ以降はモンツァレッドでした。その他、仕向地や用途によって専用色が存在しました。

輸出仕様の差異

CT110は、輸出先の地域や時期によって仕様が大きく異なりました。デカール、排ガス対策機器、キャリア、サブタンク、スタンド、チェーンカバー、メーター、ウインカー、電装品の電圧、シートなど、様々な部分で違いが見られます。

特に、キャブレター、点火装置、燃料、電装品電圧、変速機の操作方法などは、地域によって大きく異なっていました。例えば、日本仕様はマグネトー式点火で6V電装でしたが、北米仕様はCDI点火に切り替わり、オセアニア仕様はレクチファイアによる全波整流を採用していました。

オプションと改良

日本国内仕様には、北米仕様の標準装備である補助燃料タンクがオプションとして設定されました。一方、北米仕様にはアップフェンダーや折り畳み式ハンドルが標準装備され、オセアニア郵政仕様は、フロントキャリア非装着、セリアーニ式フロントフォーク、大型サイドカバーなど、独自の仕様が採用されていました。

また、製造過程においても、改良や仕様変更が複数回行われました。

前身モデル

CT110の前身モデルは、主に北米へ輸出されたC100H/T、C105H/T、CT200、CT90、CT50などです。これらもスーパーカブをベースとしたモデルで、排気量やエンジン、トランスミッションなどに違いがあります。特にCT50ハンターカブは、日本国内でも販売されました。

CT125・ハンターカブ

2019年には、CT125・ハンターカブが発売されました。スーパーカブC125をベースに、オフロード走行にも対応した仕様に変更されています。フロントサスペンションストロークの増加、アップマフラー、アンダーガード、前後ディスクブレーキ（フロントABS）、ステンレススポークホイールなど、オフロード走行に適した装備が多数採用されています。

エンジンは、C125用のものをベースに、吸排気システムを専用設計することで出力特性を最適化。最高出力は8.8ps/7,000rpm、最大トルクは1.1kgf・m/4,500rpmです。燃料タンク容量も5.3Lに拡大されています。

CT125・ハンターカブは、CTシリーズの伝統を受け継ぎつつ、現代的な技術とデザインを融合させた、新しいハンターカブです。2020年の発売以降、継続的に改良が加えられ、現在も販売されています。

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